第11期

01

「あのね…お兄ちゃん、昼間の事で聞きたい事があるんだけど…」


「聞きたい事?」



もぐもぐ晩飯を食べてると愛梨はなぜか俺の隣に密着するように座った。



「昼間のあの人達…誰だったの?」


「ん~、忍者…だな」


「忍者…?忍者って夜に悪さする妖怪を倒す人達の事だよね?」



夜に悪さするって…可愛い表現だな、おい。



「そだな、多分その認識であってる」


「じゃあなんで私達を襲ったの?」


「そんなの決まってんじゃん、俺が妖怪だからだよ」



俺は晩飯をもぐもぐ食べ進めながら事も無さげに言う。



「え?お兄ちゃんは悪い妖怪じゃないんでしょ?」


「ん~ソレは情報不足って所かな?愛梨、この国での妖怪っつーのは存在自体が悪なんだ」



食べるのを一旦止めて、口に入ってる物を飲み込み愛梨に向き直る。



「でも、お兄ちゃんは悪さしてないじゃん!」


「行動云々の話じゃなくて…存在の話だ、言わばゴキブリと一緒さ」



行動的に何をしたワケじゃないのにその存在を滅ぼそうとするだろ?



「う…だけど…!」


「お前の言いたい事は分かるよ?ソレにゴキブリの例えは分かり易く説明するために使っただけで…実際はちょっと違う」



愛梨が言葉に詰まって涙目になったので顔を逸らして食事を再開した。



「…?どういう事?」


「お前もおばあちゃんから聞いてただろ?妖怪ってのは基本的には生前に悪さを積み重ねた人間が死んだ後の姿だって」



厳密には怨念だの執念だの…悪魔と同じ負の色々なアレの集合体なんだが。



「あ、ソレなら耳タコぐらい聞いた」



…耳にタコができるぐらい聞いた、の略か?



うん、多分そうだろう。



「じゃあ話は早い…基本的に妖怪ってのは生きてる人への怨み妬み憎しみ、ソレに殺意とかの集合体でな」


「うん、だから妖怪は人に危害を加える行動を取るんだっておばあちゃんが言ってた」


「そう、だからみんなの認識は妖怪=人に危害を加える、だ…そんな妖怪は問答無用で退治しなければいけないだろ?」



まあ流石に妖怪を退治するために人質を取る…ってのは外法で外道だけど。



あいつらは…いや、あのハゲは気づくべきだった。



妖怪を退治する方法としての案に、なぜ一般人を人質として使えたのか…つー疑問に。



本来なら妖怪=人間に危害を加えるという認識。



じゃあ妖怪相手に一般人を人質に取るという行為が意味を成すハズが無い。



なのに今回は妖怪相手に一般人を人質に使えた。



…その矛盾点に気付いていればあのハゲや強そうな奴も死なずに…組織を潰されずにすんだかもな。



つーかその前にちゃんと忠告してたのにねぇ。



「お兄ちゃん聞いてる?」


「ごめん、聞いてなかった」



どうやらムダな考えに耽っていて愛梨が喋ってるのを聞き逃してたようだ。



「もう…!お兄ちゃんの事を心配してあげてたのに!」


「ごめんって、そうむくれるなよ…それにもう心配は要らないと思うぞ?」



顔を逸らした愛梨を可愛いな~…と思いつつ空になった皿を片付けるために立ち上がる。



「?どういう事?」


「組織はもう壊滅状態だから俺に構ってる暇が無くなったって事」



俺が警告した後にこの状態だし、どんな馬鹿な奴でも理解できたんじゃね?



敵に回す相手を間違えた、って事に。



多分…藪蛇ってのはこういうのを指す言葉なんだろう。



藪をつついて蛇を出す。



余計な事をしたばっかりに大変な目にあっちゃった、的な。



「??壊滅状態?」


「愛梨が気にする事じゃないよ、とにかくしばらくの間は危険な事にはならないと思う」



政府の上層部がどんな行動を取るかにもよるけど。



…でもコレで家族ごと人質にするって考えになったらヤバい。



流石に周りからの反感を買いまくるから出来ないハズだけど…



つーても上の方の考えは分からないからどうなることか。



そんな事態になったら最悪リザリー達にお願いしてユニオンを動かす事になるかも。



あ、天界への貸しを使って上層部のみ抹殺する…という手もあるじゃん。

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