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面倒事は勘弁だからな…特別に俺の裏技の一つを披露してやろう。



スライム状の物体を投げてから30秒後。



妖怪vs人間の戦場は濃い霧に包まれていた。



そろそろ頃合いかな…ん?まだ?もう少しか?



…あと一分ぐらいはかかる?まあいいか。



俺は直勘を働かしながら戦場を見てタイミングを図る。



…………よし、今だ。



パチン、と俺が指を鳴らすと戦場が大爆発を起こした。



コレでもか!というぐらいの大爆発。



さながらテロのような大爆発を起こしたのに現場は全くなんともない。



建物や地面には傷一つ付いていない…が、元戦場だった場所には人間の焼死体が大量に転がっている。



妖怪の姿は見る影も無く一体残らず消えていた。



その中で無事だった人間は二人。



一人は藍架だが…



まさか先に戦ってた忍者の中に女が一人混ざってたとは。



俺がやった技は単純明快なただの水素爆発だ。



まあただの…とは言っても水素は核爆弾にも使われるほどだからな。



威力の様は見て分かる通り、凄まじい。



コレでも一応は抑えた方なんだけどね。



おっと、地面や建物…藍架達には周りに水の膜のようなモノを張ってガードさせたよ?



きっと本人達には何が起こったか分からないと思うから方法を説明しない限りはバレる心配もない。



最強のスライムを使った技こそが俺の裏技の一つ。



ただ…バレると対策とか立てられそうだからねぇ…誰にも知られて無い内は最強の技だな。



最強のスライムはプルンプルンとスライム状の物体になって俺の下に戻って来た。



俺はソレを小瓶に入れ蓋をしてポーチにしまう。



そして藍架の所に向かって歩き出す。



「いやぁ…凄まじかったな~」


「な、何が起きたの…?」


「ん?手品だけど」



地面にへたり込んでいる藍架に手を差し出して立たせる。



「手品…?」


「タネも仕掛けもございません…ってな、もちろんなんの手品かも秘密だ」



ははっ、今日だけで70人近くの忍者(男)が殉職した事になるな。



残り何名いるのか分からんが…少なくとも全体の1/3は削ったとみていい。



「ソコのお嬢さんも大丈夫かい?」


「え、あ…うん」



藍架同様地面にへたり込んでる女の子に手を差し出して立たせた。



「とりあえず妖怪はいなくなったワケだけど…コレからどうする?」


「…もしかして…あんたがやったの?」


「ん~、そうとも言えるし違うとも言える…それに言っただろ?手品だって」



俺は顎に手を当てて考える振りをした後に手を広げて言う。



臆病者は戦場に赴かずに遠くからただ見てるだけ。



そして卑怯者は自ら手を下さずに他のナニカを利用する。



勇者とは真逆の戦い方。



まあぶっちゃけ臆病者でも情報は収集できるし?



卑怯者でも成果を上げればいいんだから。



戦い方の違いってだけで非難される謂れはなくね?



ただ何も考えずガムシャラに敵を倒すだけが戦いってワケじゃないんだよ。



世の中には…情報を集めて弱点を突く、っつー戦い方もあるんだなー。



「連絡が取れた…一旦本部に戻る」



俺が考えに耽ってると、藍架に襟首を引っ張られた。



「なんで?」


「ちょっと早いけど…後半部隊とチェンジする」


「ほう…じゃあ俺は先に帰るとするか」


「…まあ行ったら行ったでややこしくなりそうだからいいけど」



じゃあね~…と手を振って俺はその場で藍架達と別れる。

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