13

その後。



嫌がる俺と、服を無理やり引っ張る藍架の争い?の果てに…



服がビリビリと破れ、俺はパンキッシュな格好になってしまった。



そんで結局帰る事に。



藍架の必殺『それ以上ダダこねるなら泣くよ?』は卑怯だと思う。



ダダこねてんのはどっちだよ…泣くよ、とかその歳でありえねえだろ。



…いや、その歳で泣くから効果があるのか。



「なあ、まさか歩いて帰るのか?」


「当たり前じゃん」


「当たり前じゃねえよ!ココから家まで何十kmあると思ってんだ…電車乗ろうぜ」


「お金が勿体無いでしょ…最近は不景気なんだから節約しないと」



いやいやいや…バカなのか?それともアホなのか?



ココから家まで推定5、60kmほどの距離だぞ?



あ、因みに俺が産まれたのはココの隣の県で結構な田舎だったりする。



市でも町でも無く村、だ。



育ったのはまだ町だったが…それでも村に寄っていたため、町の端っこで少し田舎。



「ほら、ぐちぐち言って無いで走るよ」



一直線に走れば1時間で着くから…と藍架はジャンプして屋根に乗る。



…はぁ…あの数珠の力、使い過ぎだろ。



いざという時に力を使えなくなるぞ?



ほぼ全力疾走のような速さで街を駆けていく藍架の後ろをため息を吐きながらついて行く。














ずーっとその速さで走る事1時間。



家に到着。



「ふう…もしかしていつも走ってんのか?」


「当たり前じゃん、電車乗るより走った方が早く着くし」



普通の人なら数珠の力があってこそ、の芸当だけどな。



流石に距離と速さで今回は俺も少し息が切れた。



「ただいま~…ってみんな寝てる時間だけどね」



藍架はバッグから鍵を取り出し玄関を開けて入って行った。



…この家は6年経っても変わらねえなぁ。



「何してんの?早く入らないと鍵締めるよ?」



家を見てシミジミと感慨に浸ってると、藍架が玄関のドアから上半身を出してジト目で俺を見ていた。



ジト目いいなぁ…ジト目。



何だろう、この美人にジトーって見られる感じが可愛い!と思う。



「?私の顔になにか付いてる?」



ボケーっと藍架の顔を見てると不思議そうに聞いてきた。



「いんや、ただ…より美人になったなぁ…って思っただけ」


「…ココは感謝すべき?それともキモイと思うべき?」



…明らかに反応に困っている。



まあ稀にしか会わないとはいえ、リアルな姉弟だとこんな感じだよな。



「ほら、早く入る」


「へいへい…」



ゆっくり動くと手首を掴まれて家の中に引き込まれた。



「おかえり」



家の中に入ると同時に藍架が急に振り向いて満面の笑みで出迎えの挨拶を言う。



「…ただいま」



はぁ…また変なフラグが立ちそうダナー。



いやいや、俺の勘違いか?



さて、ここで皆さんにクエスチョン。



俺は人の敵意や負の感情には敏感だが、好意的な気持ちには疎い。



なぜなら、勘違いヤローにはなりたくないから。



それで、異性の『好意を持たれてる行為』をソレと直ぐに気づくにはどうしたらいいと思う?



俺は今までに人を本気で好きになった事が一度もない。



だからソレがどういう感情なのか…小説や漫画、ドラマの中とかで表現されるのを見て知っただけだ。



つまりは実際の、好き!が分からんのだよ。



好きにも色々な種類があるだろう?



だから複雑怪奇で分かりづらい。



例えば、思わせぶりな行動って分かる?



本人にその気は無いのに、他の人が勘違いする…ってやつ。



結局さ、その気が有るか無いかなんて人の心を読まない限り分からないわけじゃん?



漫画とか小説とかドラマは結局、女の心境が書かれてるから分かるんであって…



実際に完璧に男視点からしたら分からなくね?



今のこの状況もそうだ。



藍架が急に振り向いて満面の笑みで『おかえり』と言った。



コレは俺の事を好きだから…でいいのか?



家族愛?それとも愛とかじゃなく、ただ純粋に好きだから?



男女愛が絡む的な事では無い系?

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