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「…泣いてるの?」
「ああ、感動で泣くってのは初めての体験だ…笑いたきゃ笑え」
「笑って欲しかったら面白いギャグの一つでも言えば?」
…俺はいつ死んでもいい。と思ってたがばあちゃんがせっかく生き返らせてくれたんだ。
ソレがもし、俺のように興味本位の人体実験だったとしても…
これからは安易に死んでもいい。なんて考えねえ!
だが、美人な幼馴染達や美人な姉と妹に殺されるんなら本望だけどな。
残念ながら…この考えだけは天変地異が起ころうとも揺るがない。
「…よく考えたら藍架にも仕込まれてんじゃね?」
「分からない…けどその可能性も無くは無い、あんたを見てそう思う」
もし、妖怪になったと想像したらゾッとする。と藍架は自分の身体を抱く。
「そうか?妖怪ってのも悪くねぇぞ?俺は人間とそう変わらないし」
「あんたは…怖くないの?人間達から追われるのよ?」
「怖い?人間が?…あはははは!!」
俺は藍架の質問に笑いが堪えきれず大声で笑った。
「なにがそんなにおかしいの?」
「悪い悪い…魔界、天界、冥界と色々経験してるからさ…人間なんて直ぐに死ぬ脆弱な生き物にしか思えなくてな…ははっ」
頭や心臓を刺したり、少し殴っただけで直ぐに死ぬじゃん?
食べ物でも、変わった物を少し食べただけで死ぬし。
例えば…牛や豚の内臓器官に少しナニカあっただけで危ないと捨てるだろ?
今の俺や魔物なら食べても全然問題ないぜ。
人間はなにかしらの病気になって死ぬかもだけど。
「そんな脆弱な生き物に本能的な恐怖なんて感じねえよ」
さっきとは違う、笑い過ぎて出た涙を拭いながら話しかける。
「脆弱な生き物…」
「力が強いだけで耐久力は皆無じゃねえか」
どんなに力が強い人間だろうと濃硫酸で溶けるし、青酸カリでも飲ませれば死ぬだろう?
「それが普通なの」
「まあ濃硫酸で溶けない生物はいないか」
魔界の強い奴でも濃硫酸かけたらほんのちょっぴりだけでも溶けるし。
「…あんたの言う事を聞いてたら恐怖も薄れるかも」
「まあ例え藍架が妖怪になったとしても、俺が味方するよ」
もし人間が藍架を迫害するなら…知り合い以外滅ぼしてやるから安心しろ。と笑いかける。
「…弟にそんな事を言われても気持ち悪いだけなんだけど」
「だろうな」
普通はあんな事を言われてもこんな反応しか返せないよな。
「それに…どうやって滅ぼすのよ」
「あ?そんなん簡単だろ…放射能を照射すりゃ楽勝」
女なら不妊症、男なら不感症orEDにすれば子孫繁栄も出来ないから…
あとは100年ぐらい経てば勝手に滅ぶんじゃね?
「でもそれじゃあ他の動物も滅ぶんじゃない?」
「放射能の周波数を変えりゃ大丈夫、人間のメカニズムに合わせた放射能は的確に子宮と精巣だけに影響を与える事が可能なんだよ」
「知り合い以外、と言ったけど…可能なの?」
「メカニズムを崩す放射能だからな、元に戻すための放射能も当然あるに決まってんじゃん」
リザリーやエルー、俺の知り合い達にはその放射能を浴びせればプラマイゼロで影響無し。
副作用も無いと言う超良心的なプログラムだ。
「想像力も昔と変わらない」
「そうだな、だが本当に出来るぞ?」
「そう、そろそろ無駄話はおしまい」
藍架は刀を抜いて屋根から飛び降りた。
…どうやら着いたらしい。
が、妖怪がたった5体しかいないとはどういう事?
いくらなんでも少なすぎるだろ。
「おい藍架、少なすぎないか?」
「数が少ないとその分強いの」
あんたも戦え!と怒られたので仕方なく屋根から飛び降りる。
「面倒だなぁ…藍架、下がれ」
「何故だ?」
「お前を巻き込みたくないからだよ」
「…分かった」
藍架は舞うように後ろ宙返りをして建物の上に移動した。
…いいなぁ、あの数珠から体内に魔力が流れ込んでるから身体能力も強化されてるのか…
とりあえず…目の前の邪魔な奴らを消すために抑圧と言うスイッチを入れますか。
俺は妖怪達が迫って来てるのに目もくれず目を閉じて剣に手をかける。
「抜刀二閃、虎牙竜斬」
そしてスッと目を開け剣を抜く。
闇夜に月の光で煌めく剣が…まるで宙を舞う糸のような動きを見せる。
すると5分もしない内に5体の妖怪は消えた。
「…程人、お前…」
「近づくな、殺すぞ」
「っ…!」
俺の言葉に圧倒されたのか小走りで近づいて来た藍架はピタッと止まる。
剣を鞘に納めてまた目を閉じた。
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