7
「藍架!大丈夫か!?」
「遅くなって済まない!」
藍架の刀を避け続ける事10分。
おそらく仲間であろう増援部隊が来た。
「おっ…仲間か?」
「そうだ」
それを見てお互いに距離を取る。
「妖怪はどこだ…?」
「…!揺葉、大丈夫か?」
キョロキョロと妖怪を探す仲間たちの内の一人が倒れてる女の子に気がついて駆け寄った。
「…妖怪は…私の目の前にいる」
「は…?」
「大変だ!本部から緊急連絡が!」
藍架が俺に刀を向けると仲間の一人が叫ぶ。
不思議そうに藍架を見てた奴も叫んだ男を見た。
…チッ、ここにいる男共は本部からの連絡に救われたな。
「同時に三ヵ所から妖怪の反応が現れたらしい!」
「場所が分かった!品川区の北側、国立市西側、日の出町の北側!!」
「…私たちは品川区を担当する、いくわよ」
「はあ!?なんで俺まで?」
藍架は刀を鞘に納めると早足で歩いて来て俺の襟首を掴んだ。
「たった二人でか?無茶だ、俺も行く」
「大丈夫、こいつがいるから」
「待て待て…藍架、俺はようか…むぐっ!」
「?」
「なんでもない、他の妖怪を殲滅をして来て」
俺が喋ろうとしたら口を手で塞がれてそのまま引きずられる。
そして少し歩いた所で手を離された。
「…どうした?」
「どうせなら他の妖怪を消してから最後にあんたを消す」
「殺す前に俺という戦力を利用するわけね…」
…エゲツない作戦だなぁ。
「手伝うのはいいが、殺されるのはゴメンだな」
「妖怪は生かしておけない」
「だからこの国には戻って来たくなかったんだよ…」
藍架が忍者になってるって知ってたら人目も気にせず即影移動でユニオンに帰ってたのに。
無知の後悔って言うのはこういう事か。
「…待てよ、まさか愛梨も忍者に?」
「愛梨は普通の一般人よ、今はただの高校生」
あれ?確か愛梨って俺と6歳違うんだっけ?
「愛梨って今何歳?」
「今年17よ」
「あ、やっぱり」
建物の上をジャンプして目的の場所に移動しながら雑談する。
「あんたは最後に見た時から寸分違わぬ姿ね…」
「あの後に死んだんだよ…死亡報告書ぐらい来てただろ?」
「…誰も中身を見てないけど」
そりゃそうだ、死亡報告書。と封筒に書かれてるのがそのまま送られてくるんだから中身は見るまでも無いわな。
「まあでも…俺がこうして生前と寸分違わぬ姿で生き返ったのは時々不思議に思う」
妖怪は人型と言えど完璧に人の姿をしてるわけじゃない。
最低限人の形をしてるだけだ。
それに…色々な悪霊やら霊の塊なんだから、個人の記憶や性格が元のままってのも普通の妖怪の概念ではありえない。
「…おそらくおばあちゃんの仕業ね」
「おばあちゃん?なんで?」
「おばあちゃんが昔よく話してたでしょ?おばあちゃんのおばあちゃんのそれまたおばあちゃん…祖先は陰陽師だったって」
「あー、そう言えば聞いた事あるような…」
あのおばあちゃん元気にしてるかなー?最後に会ったのは6年前だし…懐かしいなー。
「二年前、おばあちゃんの葬式の後に遺品整理をしていたら冥妖なんとか…の書類が出てきたの」
「え!?ばあちゃん死んだの!?二年前!?マジで…!?」
うそ…いや、どうせ知ってても面倒だから葬式は行かなかっただろうけど。
「どうせ知っててもメンドくさがりなあんたは葬式とか行かなかったでしょ」
「そうだけどさ…最後にもう一度だけ顔が見たかったな」
両親共に働いてる俺らはどっちかのおばあちゃん達によく預けられてたし。
「話を戻すと…その冥妖なんとかってのは、死んだ人を妖怪として生き返らせる術らしいの」
「…そういうこと」
全てが繋がった…そうか、俺はご都合主義で生き返って妖怪になったわけじゃないのか。
ばあちゃんのせめてものアレだったっつー事ね。
どうりで妖怪として生き返ったわけだ
どうりで姿形が生前と変わらなかったわけだ
どうりで性格や記憶が生前のままだったわけだ
俺は俺の意思の強さで生き返ったと思ってたのに…
結局は人の力でこんなんなってた、と。
俺の力じゃ絶対に死ぬと分かってて…禁忌を犯してまでも、もしものためと俺に仕込んでたのか。
…やるじゃねえかばあちゃん。
あんたの目論見は見事に成功したよ…くそ、礼の一つも言う前に死にやがって…
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