19
罠を仕掛けて女の子を狙いにきたエクスキューショナーや、漁夫の利を取りにきたヴァンパイアハンターを撃退して3日後。
ヴァンパイア共は故郷に帰り、女の子も無事?前のような学校生活を送る事ができたらしい。
俺の苦労が報われてなんとか穏便に済んだ。
…とは言え心配な事もある。
あの女の子がヴァンパイアハンターに襲われないか、という事なんだが。
ヴァンパイア共と一緒に生産大陸に帰ってくれてるんなら心配はいらないんだけどねぇ。
ハンターは基本的にヴァンパイアが居る所にしかいないし。
あの女の子は、これからは普通に生きます。とか言ってたけど人生なんてもんはどこでどうなるか分からない。
正直なところどうだろうか?
ヴァンパイアに襲われ眷属のような物になってしまった以上、もう真っ当な人生は送れないような…
…考えるだけ無駄か。
世の中なるようにしかならないんだ…どうにでもなるさ。
「くああ~…ふぅ…」
いつもの公園のいつものベンチで起きて背筋を伸ばす。
「「おはようございます!」」
「んあ?ああ…おはよう」
ヴァンパイアの女の子とその親友がわざわざ挨拶しにきた。
「いつもココで寝てるんですか?」
「雨の日以外はな」
「え…じゃあ雨の日はどうしてるの?」
「研究所で寝てる」
たまにリザリーの家とかで寝てる時もあるかな?
基本的にお呼ばれした時だけだけど。
「あの…失礼だと分かってるんですけど、住む所が無いんですか?」
「んー…住む所ねぇ、他の国にはあるよ?」
「え、じゃあユニオンには無いんですか?」
「一応はあの研究所だけど、研究員じゃねえからなー…なんで?」
俺の私生活とかどうでもよくね?と思いつつ聞く。
「あ、いえ、助けてもらったお礼をまだしてないなー…と思ったので」
「気にしなくていいよ、女の子が笑顔になればそれでいい」
「…正義の味方?」
「いやいや、あくまで正義の味方気取りだよ」
正義の基準が人それぞれで曖昧すぎるから正義の味方!なんて言い切れないし。
「気取り…?」
「正義なんて人それぞれで違うだろ?んで俺の正義は可愛い女の子だけ、ソレ以外はどうでもいい」
「「…?」」
女の子二人は俺の言ってる事が理解できないような感じで首を傾げた。
「つまりは…女たらしを超えた女狂いって事だな」
「ふざけんな、お前も変わらないだろ」
「俺はまだ女たらしレベルだ」
女の子の後ろからエルーが説明しながら現れる。
「つーか男なら誰でもそんなじゃねえか」
「あ!あの時のお兄さん!」
急に現れたエルーに女の子二人は驚いて固まってたが、ヴァンパイアな女の子が指差して声を上げた。
「なにしに来たんだよ」
「ああ、この子達がおそらくココに来るだろうと予測して今週分の薬を持ってきた」
「ありがとうございます」
はいこれ、とエルーはイケメンスマイルで袋を渡す。
「ココに来るって良く分かったな」
「この子がお前にお礼を言いたがってたんだよ」
さりげない仕草でポンと女の子の肩に手を置いた。
「…知り合いですか…?」
「ん?ああ、お前説明してなかったの?」
「そういえば対応したのはリザリー達だったな」
「一応幼馴染っつー友達」
「そうだったんだ…」
ヴァンパイアな女の子はベンチに座ってる俺と隣にいるエルーを交互に見てそう呟く。
「…話を戻すけどよ、誰が女狂いだ」
「お前以外にこの言葉がぴったり当てはまる奴がいるか?」
「上等じゃねぇか…!」
「あ、あの!喧嘩は…!」
ベンチから立ち上がりエルーに近づくと女の子が間に割って入る。
「…え?」
ガシッと女の子の両肩を掴みエルーの方に振り向かせた。
「この現役の女子学生が、性奴隷になるから助けて下さい。って言ったら助けるだろ?」
「当然だ!」
エルーは俺の質問に力強く即答する。
「その後の展開に期待するだろ?」
「愚問を!」
「…なあ」
「すまん、俺が悪かった…」
「え?え?」
ガクッと膝を着くエルーに困惑する女の子。
「そろそろ登校しないとマズイんじゃないか?」
蚊帳の外で全く状況を飲み込めず棒立ちになってるヴァンパイアな女の子に言う。
「え?あ、はい」
「ほらほら…行った行った」
俺は女の子の両肩を押すように離した。
「あ!急がないと…行くよ!」
「え?ちょっと待って…あ、あの…!ありがとうございました!」
女の子は最後にペコリと頭を深々と下げて親友を追いかけて行く。
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