20

勇者?が剣を振り切ると衝撃波の影響でマキナの右側の地面が大きく抉れる。



「チッ!」


「危なかった~…ありがとう!」



あのままガードしてたら衝撃波を食らって吹っ飛んでただろう。



大怪我…まではいかないが、結構なダメージを受けてたのは間違いない。



「えい」


「がっ!」



マキナは反らした上体を思いっきり戻して英雄?に頭突きを食らわせた。



剣を振り切った状態では避けきれなかったのか勇者?の額にモロに当たり血を流す。



「くそっ!」


「雑だよ、っと」


「ぐっ!?」



体を捻り遠心力を加えた足元への横薙ぎをマキナはジャンプして避け、英雄?の顎に飛び膝蹴りをカウンターで食らわせる。



全魔力を対価にしたからか明らかにマキナに押され気味だ。



「どんなに強い攻撃でも当たらないと意味無いよなー」


「んー、まあ当然の事でしょ」



二人が移動しながら戦ってるため座って観戦…ってわけにはいかないが、立ってても分かるぐらいにショコラは戦いたくてウズウズしてる。



『…溜まったか、リミッター解除』


「やっとか…よ!」


「うわ…危ない危ない」



マキナは魔剣の声に一瞬気を取られたもののギリギリで勇者?の攻撃を避けた。



…なんかあの男からヤバいオーラが出てるなー、一応念のためにっと。



「?何してるの?」


「念のために石を拾っておこうとな」


「…もしかして邪魔する気?」


「当たり前だろ、誰がタイマンって言ったよ?マキナに大怪我されるよりはマシだ」



そこらへんに落ちてるこぶし大の石を数個拾う。



「コレで最後だ!喰らえ!秘技・烈破衝!!」


「!?」


「はい、ビンゴっと」


「な!??」



勇者?が叫びながら振り下ろす剣をマキナが受け止めようとした…が予想外の威力だったのか押され気味だ。



俺は拾った石を全て全力投球し剣の側面に当てる。



その結果剣の軌道をズラす事に成功、マキナは直ぐさま右に飛び退く。



ズズン…!と地面が揺れてさっきまでマキナがいた場所にクレーターができていた。



「た、助かった~」


「なんでわざわざ受け止めようとしたんだよ…」



俺はクレーターができた場所を見て安堵の息を吐いてるマキナの所に移動する。



「だって~…一応死ぬ程度じゃないからガードできるかな?って…」



マキナはボロボロになった手甲を脱ぎ捨てながら拗ねたように言う。



「一撃でその手甲を破壊するぐらいの威力だぞ?確かに死なないかもしれんが大怪我は免れなかっただろ」


「う~…程人君がいじわるだよぉ…ちゃんと感謝はしてるのに…」


「雑魚のくせに…!一度ならず二度までも!!」



英雄?が激昂して俺らの所にダッシュで近づいて来た。



俺もマキナも丸腰なのに御構い無し、といった様子で剣を振りかぶる。



「今度は私の相手して」


「なに!?」



勇者?が怒りを込めて振り下ろした剣をショコラが軽々と無名で受け止めた。



「あ、ショコラズルい!」


「ズルくない!マキナは丸腰なんだから!」


「お前らってホントアマゾネスだよなぁ」


「ち、ちょっと…程人君伸びる…!」



ショコラに近づこうとしたマキナの服をガシッと掴みため息を吐きながら後ろに下げる。



「くそ…この俺がこんな…!」


「いえーい、しょーり!」



ショコラに代わる事ものの5分で決着がついた。



まあマキナと戦って満身創痍な状態でショコラに勝てるほど勇者?は強くなかったって事だよね。



この前魔王を倒しかけた時はきっと漁夫の利、的な運の良さだったんだろうな。



運も実力の内と言うし。



「…あんた達まだいたの?」



研究所から出てきたリザリーが俺たちを見て呆れたようにため息を吐く。



ショコラと英雄?の戦いは結局一周して研究所の近くまで戻って来ていた。



「うん、ちょっと遊んでた」


「なるほど、理解したわ」



キョロキョロと辺りを見渡して状況を察したのかそう呟く。



「んじゃあ帰ろうか」


「待て!」



俺がショコラ達に声かけすると倒れていた勇者?が立ち上がって叫んだ。



「なんだ?」


「なぜトドメを刺さん…情けのつもりか?」


「ん~?だってお前の相手は俺じゃねえし、こいつらに聞いてくれ」



マキナとショコラを指差すと、え?って不思議な顔をされた。



「えーと、めんどうだから?」


「そうそう、生きてればいずれ反撃の機会は訪れるって」


「くそっ…!完璧に俺の負けか…!」



なけなしの力を振り絞って立ってたのかドシャっと崩れるように倒れる。



「さて、埠頭にタクシーを呼んであるからいきましょう」


「そだな~…そういやショコラ、あいつ強かった?」


「んーん、全然」


「私と戦った後だからね…まさか相手を奪られるとは思わなかったよ」



そんなこんなわいわい雑談しながら埠頭に向かう。



「あい、そう言えば…あの旧時代の遺物ってどうなった?」


「ああ、研究は思いのほか簡単に終わったわ」


「香りと音波の二段構えで脳を操るなんて発想が凄いよね」


「へぇ、香炉のくせに音波まで発するんだ」


「え?なにそれ…旧時代の遺物?」



一人だけついていけてないショコラにリザリーとマキナがアレコレと説明する。



ショコラが説明を聞いた結果、魔王うんたらの流れでマキナ達と同じ反応だったわけで。



またしても…俺が怒られて責められた。

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