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あれから少し経った今現在、俺らがいるのは研究所から離れた場所にある公園だ。
そう、いつも俺が入り浸ってる公園である。
どうやらリザリーは俺とショコラを尾行させるために待ち合わせ場所を変更したらしい。
「よう待たせたな、今日こそはお前をモノにしてみせるぜ」
向こうからリザリーの元に歩いて来た男は着くや否や開口一番薄ら寒いキザなセリフを言い放った。
「…いいかげんその歯の浮くセリフは止めてもらいたいのだけど…」
リザリーはゲンナリした様子でそう返す。
「え?アレが彼氏?くっそ恥ずかしいセリフを臆面も無く言い切ったぞ、逆に凄ぇ」
「真顔であんなセリフ言うのは小説の登場人物ぐらいしかあり得ないと思ってたのに…現実に存在したんだ」
リザリー達の近くでコソコソと小声で話し合う。
因みに軽く変装済み。
俺はカチューシャで髪をオールバックのように留めて、黒縁メガネにマスク。
ショコラはニット帽にサングラス。
「しかもスーツみたいの着けてるぜ」
「夜ならまだしも昼にスーツは無いよね…」
リザリーの現彼氏を見てまだ3分しか経ってないのにすでにボロクソだ。
「目立つから夜以外にスーツは着けないで、と言ったハズだけど?」
「なに、もうじき夜になるさ…お前はなぜドレスじゃないんだ?」
「式典やパーティーと言った社交的な場以外では着ないわよ…水商売をやってるわけでもあるまいし」
「残念だな、お前の美しさをずっと見ていたかったのに」
うわぁ…もうなんか、関わりたくないんだけど。
と言うか近寄りたくもない。
「なあ、もう帰らねぇ?」
「うん、そだね…彼氏も見たしこれ以上は…」
「さて、行きましょうか」
「そうだな」
そそくさと去ろうとしたらリザリーに襟元を掴まれた。
彼氏は丁度先に歩いていたため、リザリーが俺の服を掴んでるのは見ていない。
え?俺たちにあんな残念な彼氏とのデートをまだ見とけと?
「お願い、最近アレと二人きりなのは耐えられなくなってきたの」
「…別れろよ」
「これが最後のデートなのよ…」
「良くあんな残念過ぎるイケメン坊ちゃんと付き合う気になったね」
私なら嫌だな…とショコラが呟いた。
「最初はもっとまともだったのよ、あんな風になったのは最近から…何かの小説やドラマに感化されたんじゃないかしら」
「ああ…そういえばいるな、彼女を喜ばそうと小説とかのキャラを真似る勘違いヤローとか」
「…明らかに裏目に出てるよね」
「まあ男は小説やドラマの登場人物で女が喜んでると世間一般の女もそうだと思い込むからな」
よくわからない落とし穴だ。
ただ、あの残念なイケメン坊ちゃんのキャラはリザリーには合わないって事。
他の一般的な女の子ならあの容姿とあいまってキャーキャー言うかもしれんが。
コソコソと三人で話し、彼氏が振り向く前にリザリーは小走りで近づいて行った。
「うわあ…合わない」
「そだな、スーツの男に私服の女は合わないな」
因みにリザリーの格好は一般的な服装だ。
ちょっとだけミニなスカートにニーハイ、上はシャツにパーカー的な上着。
パーカーよりも生地は薄いかも…フードは付いてるけど。
俺らはちょっと離れて後ろから尾行するように観察する。
彼氏の少し斜め後ろをリザリーが歩いていて、会話はあまり無い。
ないことはないが…全てリザリーが止めている。
『ええ』
『そうね』
『どうかしら』
『わからないわ』
ぐらいしか使っていない。
会話を続ける気ゼロ。
本当に付き合ってるのか?え、デート?と思うような雰囲気だ。
「うーん…そろそろお昼時だけど、どこまで歩くんだろう」
「さあ?」
おそらく研究区画とは反対側にあるデートスポットに向かってるんだろうけど…
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