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…そして魔王がこの世界に戻って来てから11日後。



昨日やっと魔界に還したが、怒涛のような10日間だった…



この怒涛の10日間は番外編に出来るんじゃないか?ってぐらい色々あったぜ。



まず……なんやかんやアレコレとあって俺、出世しました。



なんか第一侵略部隊隊長から侵略部隊総隊長にランクアップしたってば。



本当は侵略統括部長まで特進する予定だったらしいんだけど、俺が断ったんだよね。



出世自体を断りまくったんだけど…結局魔王様の命により相互の妥協点である総隊長で収まった。



なんで急に出世云々の話が出てきたのか分からんけど、成果と実力がうんたらかんたら言ってたな。



日比谷以外の魔王の六体は俺の出世に反対してたんだが…



日比谷とアルバトロス、魔王が強引に押し通したらしい。



俺にとっては中々迷惑な話なんだが。



総隊長にランクアップしたとは言っても俺の部隊はそのまま何も変わらないとの事。



元々魔王軍の中でもアクの強い奴らの集まりだからな…纏めきれるのが居ないんだと。



あいつら部下同士で争ったり、命令無視に命令違反、隊長の俺にさえ平気で襲いかかってくるからな。



今は昔に比べたら格段に纏まってきてる方だけど。



まあ俺の出世以外でも色々あったよ。



再度人間との戦争を仕掛けようとしたり。



コレは元人間の俺らと人間の日比谷達の全6人で必死に止めた。



俺はただ単に人間と争いたくないだけで、日比谷達はまた魔王に万が一の事が起きてほしくないから。



なんか、妾が人間共にやられるとでも?とか言ってたけど…



前の事例があるからねぇ。



結局冥界の魔王デストロイヤーも冥界に逃げたっぽいし。



襲ってこないのはまた封印されてるからなのか?



こっちの魔王が倒されてない以上、デストロイヤーを倒すわけにもいかんしな。



おそらく、ルシファーが捕らえられたから封印は解けないだろう。



頑張れば解けない事も無いと思うが…封印は出来ない。



アレは7体揃わないと無理だからな。



ルシファーが脱獄でもしない限りはデストロイヤーは復活しないと見ていい。



まあソレは魔王軍の面々に伝えなかったけど。



だって魔王についての心配が無くなったら戦争を止めないだろうし。



面倒な事態を回避出来ないとかマジ勘弁。




そんなこんなで色々あったが…魔王は魔界でまだやる事があると言ってたから当分は帰ってこないだろう。



また誰にも縛られる事の無いフリーダムな日常が戻ってきた。



…つーわけで俺は今ユニオン共和国のいつもの公園に居る。



いつもの全然人の来ない公園の端っこ、いい感じの木陰にあるベンチで今さっき起きた。



「くあー…平和っていいなー…」



あくびをしながら背すじを伸ばしてると向こうから誰かが走ってくる。



「てーいーとー!」



なぜか俺の名前を叫びながら。



「え?ちょっ…!」



俺が走って来た奴の顔を確認するや否やいきなりバッと飛んだ。



「ぬぐ…!」


「えへへー、久しぶり!」



驚いてベンチから立ち上がろうとした途端の衝撃。



ちゃんと身体を受け止めれたから良かったものの…



この勢いから察するに俺ごとベンチへダイブするつもりだったのか?



俺はそのまま後ろに倒されるような形でベンチに腰をかなり強打した。



つまり…飛び込んで来た彼女を受け止めたはいいが、走って飛んだ勢いはそのままで俺は彼女に押されてベンチに尻餅を着いた形になる。



普通の人なら…いや、鍛えてる軍人でも確実にボッキリ腰を折ってるぐらいの衝撃だぞ、コレ。



かなりの速さで走って来てたからな。



「痛てて…」


「ありゃりゃ、ごめんごめん」


「本当にそう思ってんのか?」


「んーん、全然」



っとに…相変わらずだなこいつ。



あはは!と快活そうに笑いながら抱きついた格好からモゾモゾと俺の膝の上に座り直す。



「にしても…久しぶりだなぁ」


「そだねぇ、6年振りぐらいかな?」


「そこまでいかんだろ、5年と半年ぐらいか」


「あはは、ていとは細かいなー」



彼女…ショコラは嬉しそうに笑いながら振り向いた。



「細かくねーよ」


「まあまあ、久しぶりの再会に乾杯といこうじゃないか」


「へ?お前酒飲むのか?」


「んーん、全然」



まあだろうな、俺らは何故か知らんが全く酒に酔わない体質らしいし。



昔…養成学校時代に試しにテキーラだかウォッカだかを飲んだ事がある。



結果は飲みにくく美味しくない。と言う事と飲んでも酔わない。と言う事が分かったぐらいか。



だって夜から明け方までかけてボトル?ビン?を6人で50本ほど開けて飲んでもみんな素面だったし。



あ、ウイスキーとかもあったな。



なんか色々な銘柄があって、それぞれアルコール度数が違ったんだろうけど…



薄めずに原液のまま飲んだんだから、酔わないのはやっぱり体質的なアレだろ。

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