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例えば、魔物側の役割として魔王が命令したら人間を襲わないといけない。
が、中立としては女子供やある程度の人間は殺さずに逃がすのが役割。
その両方の役割を上手く果たすために俺は自ら侵略部隊を志願した。
中立だけ、の役割では結局バランスが保てなくなる。
まあそこそこの自己犠牲の精神、ってやつだよね。
だって俺は大事な人達を守るために調停の使者になったんだし。
友達や家族が死なないように。
上手く戦争を起こさないようバランスをとる手伝いをする。
並大抵の技量ではできない事ではあるが。
だからと言ってやらない、出来ないと言う選択肢は無い。
男なら出来る、出来ない、やらないじゃなく…やるしかないんだよ。
少しでも平和な世の中にするために。
そのために調停者及び俺ら調停の使者は頑張ってんだから。
「そう、分かったわ」
適当に説明してからリザリーを口八丁で丸め込む。
「じゃ、時間が惜しいから今すぐにでも行ってくるわ」
「待って」
トイレに向かって歩こうとしたらリザリーに服の裾を掴まれた。
「ん?」
「もし、ナニカの所に行くなら私も連れて行って」
「…今からならジェット機を使えば間に合うだろ、現地集合な」
あと5時間切ったぐらいだから時間的には余裕がかなりあるし。
「ただーし、お前かマキナかエルーか…一人だけしか来んなよ」
「……ジャンケンで決めるわ」
「お、理由は聞かないのか?」
「だいたい察しはつくもの」
「そーか、じゃ…また後でなー」
俺はリザリーにヒラヒラ手を振ってトイレの個室に入る。
そしてポーチから折りたたみナイフを取り出して手首に軽く刺す。
ツーっと流れた血を舐めて折りたたみナイフをしまい、調停者の所に影移動した。
俺は調停者と色々と話をしてギリムの森に向かった。
調停者と話してる所は例によりカットで。
だって4時間も話してたんだぜ?
4時間だぜ、4時間。
朝だったのがもう昼だよ。
まあとにかく要約すると…前例は少ないが、幾つかあったそうだ。
昔の魔王を倒すために別次元から召喚したり
使い魔として間違って召喚したり
戦争を有利にするために召喚したり
空間移動の魔術を間違えてこの世界に来たり
前例は全部で12、今回のはどれと被るのやら…
最近流行りのチート系じゃないといいなー。
いや、まあ別にチート系でもいいけどさ…殺す分には問題無いし。
結局はチートだろうがなんだろうが人間だろ?
首を撥ねるか、心臓を貫くか、影移動で海の底に沈めるか…殺すだけの方法なら腐る程ある。
たとえ不死だろうが、超回復だろうが…宇宙にポイすればさすがに死ぬでしょ。
『生物』なんだから。
死なない物体は生物とは言えないぜ?
まあ最終的には天界の神々への貸しを使って処分するってのも手だけど。
でも本当に殺すだけなら、チートだろうが最強だろうが無敵だろうが…俺の前では関係ない。
ただ、ソレ以外となるとなぁ…
殺すってのは、なにより簡単なんだけど…
生かすってのがなにより難しいんだよね。
ソレはさすがに俺の手に余る。
だから調停者の知恵を借りに行ったんだけど。
どの前例に当てはまるか、で対処法が変わってくるし。
しかも…どの前例にも当てはまらない、全く新しい事案だったら対処法を一から練らないといけなくなる。
一応予想できる限りの対処法は教えてもらったし、一緒に考えたから心配はいらない…かな?
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