18
とりあえず時間を有効に使うために材料を広げて下準備にとりかかる。
俺が指定した時間は残り一時間ほど。
それまでに来なければアノ場所に影移動して剣を作らねばならん。
「ぐ…!なんとか、間に…合っ……か…」
俺が下準備をする事20分ぐらいで前ギルドマスターの男が姿を現した。
見た目はかなりボロボロで血だらけ。
おまけに右足を引きずっていて、左腕もダランと垂れている。
男は俺の10m手前で倒れ、後ろから魔物が数匹襲いかかってきた。
「良くもまあ…辿り着けたなぁ」
呟きながら無名を抜き素早く魔物との距離を詰め、先頭の一匹を横一閃で斬り裂く。
それを見た他の魔物は急ブレーキをかけて散り散りに逃げて行った。
「んー…虫の息だけどまだ息はあるな」
念には念を、で採ってきてよかったぜ。
「…はっ!?」
男が洞窟に辿り着いて三時間後、ようやく目を覚ました。
一応は魔界の植物を使って治療をしてあげたため、今はもう完治してるだろう。
…万が一の事を考えてあの葉を5枚採ったのは正解だったな。
男の怪我の程度は酷かった。
良く生きてたな…と思うぐらいに。
左腕と右脚は粉砕骨折で筋肉断裂。
両膝と両肘の皿にヒビ。
右腕と左脚は複雑骨折…つーか全身複雑骨折みたいなもんだよ。
手とか指も折れてたし。
んで内臓破裂十数箇所、右脚に至っては半分千切れかけてたっていうおまけ付き。
頭蓋骨の方にもヒビが入ってた。
切り傷や擦り傷は数えきれないぐらいだから…おそらく数十ヶ所はくだらないだろう。
ホント良く生きて辿り着けたよなー。
流石、元ではあるがギルドマスターの称号を持つだけはあるよ。
「な…!は?」
「あー、やっぱり枯れちまったか…」
今、男の体に巻いている葉っぱは普通の楕円形だが一枚の大きさが2mほどもある。
この葉っぱを素肌に巻けば傷の治りが半端なく早い。
原理的に言えば…おそらくではあるが葉っぱ内の栄養素が皮膚の毛穴から体内に入り込み、人体の治癒力を底上げしてると思われ。
だからなのか、あるていど傷が治れば葉っぱは枯れて砂みたいになって消える。
この男には切り分けた葉っぱを全身に巻いていた…当然真っ裸にして。
他に薬草やその他の植物の葉をすり潰して作った傷薬も使用。
んで、果実や穀物と言った食べ物も無理やり飲み込ませた。
そのおかげもあってか、瀕死の重体も三時間で完治。
因みに…普通の人がこれらを採取するのはかなり難易度が高い。
魔界熟練者の俺だからこそ、簡単に入手できるんだぜ?
そこんとこ勘違いしちゃあいけねえよ?
「俺は確か……そうだ!洞窟に辿り着いたはいいが、死にかけたんだ!」
男は驚きながら自分の体をペタペタと触る。
「傷が…治ってる…?」
「治ってるんじゃない、治したんだよ」
「治した…だと?まさか君は治癒魔術の使い手か!?」
「違う、髪の色を見て分かるだろ…魔力なんてねぇよ」
黒い髪で魔力持ちなんて今のあの世界には一人もいねえし。
でも調停者から聞く限り、今までの歴史上で何人かはいたらしいな。
確か…最後に黒髪の魔力持ちがいたのは300年前って言ってたっけ?
ってか何千年と結構長い歴史の中でも、現れたのがまだ10名以下とか…
そうとう稀な確率じゃないと出てこないぞ。
「確かに、じゃあどうやって?」
「草とか葉っぱとかで」
「…冗談なのか?」
「さあ?信じるも信じないもあんた次第さ」
俺は下準備が終わった材料を順番よくバッグに詰めていく。
「よーし、終わり…じゃああと30分だけ質問に答えてやろう」
俺はボロボロの服を男に投げた。
「なぜ君は…無傷でココまで辿り着けたんだ?」
男はボロボロの服を着ながら質問する。
「答えは簡単、戦わずに逃げてるから」
「戦わずに、逃げる?」
「そそ、あんな化物達と会う度に戦ってたら命が何千あっても足りないぜ」
この洞窟の魔物達は比較的大人しいタイプだったから、交渉した。
食べ物を与える代わりに俺に手を出さない。って内容で。
魔物の中にも交渉できるタイプとできないタイプの二通りいるからな。
知能が高くても交渉できない物や知能が低くても交渉できる物もいる。
魔物はマジで多種多様なんだよね。
「そうか…その選択肢もあったか」
「まあその点で言えばあんたは凄いよ」
真っ向勝負?でココまで辿り着いたんだから。
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