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「言っておくが…てめえの代わりなどユニオン共和国からいくらでも派遣できるって事を覚えておけ」


「ユニオン共和国…!まさか!その王族の…!?」



国王は俺の言葉に驚き目を見開く。



「なわけねぇだろ、俺の知り合いが上の方と物凄く太いパイプを持ってるだけだ」



俺は見た目通りただのモブキャラさ。



「…分かった、肝に銘じておく…いつ謝罪に行けばいい?」


「そっちの都合に合わせる、 なるべくなら夕方辺りだな…一週間以内に来なかったら殺すからな?」


「…了承した、一週間以内には必ず謝罪に行く」



国王は真剣な顔で頷き、頭を下げた。



「無礼者!ココがどこか分かっていないのか!?」



横の方から突然声がしたため、振り向くとクソ餓鬼が立っている。



「おい、甘やかし過ぎたのか?」


「どうやらそのようだ…これからは厳しくする」


「父上から離れろ!死にたいのか!」


「この…恥知らずが!」



国王は息子の所に駆け寄り頭をぶん殴った。



「う…ち、父上…何を…!?」


「お前のしでかした事はあの人から聞いた!なんて事を…!それでも誇り高き王族の息子か!」



頭をバシバシ叩き、最終的にワンワン泣いてる息子の髪を掴み俺の方に無理やり頭を下げさせる。



「すまなかった!ほら、お前も謝れ!」


「うわあああん!止めてよー!痛いよー!」


「喚くな!謝れ!」


「うわああん!ごめんよー!もう二度としないよー!!」



泣きながら謝るクソ餓鬼に少し胸がスカッとした。



「来い!お前には道徳と言うものをみっちり教えてやる!」


「うわああん!!」


「さて、俺は帰るか」



人が変わったように怒りまくる埃まみれの国王が官邸の中に入って行くのを見て、俺は別荘に戻る。



もうそろそろ夜が明ける時間だ…



別荘に着く頃には少し明るくなってるだろう。



「あ、お帰りなさいませ」



別荘に着くとメイド達と子供達が外に出ていた。



「おー、ただいま…こんな夜明けからご苦労さん」



どうやらメイド達が子供達の基礎トレを指導しているようだ。



今は大体4:30ぐらいか?



「そういや、丑三つ時の丑って何時?」


「色々な諸説にもよりますが…大体は2時から4時までの時刻を指す場合が多いそうです」



ふとした疑問をメイドに聞いてみると、スラスラと教えてくれた。



「へー…じゃあ今は寅三つ時っつーの?」


「そうなりますね」


「良く分かるなぁ…」


「異国の知識は元々は私達のモノではありませんよ?」



俺が感心したように呟くと微笑んでそう返される。



いつ見ても可愛いな~…終始笑顔のメイド達を見てると癒されるわ~。



「あれ?おとーさんだ!」


「…珍しい」


「雹が降ってきたらどうしよう…」



子供達が俺に気づいて何人かが駆け寄って来た。



「若い者は頑張れよ~」


「おとーさんだってまだまだ若いじゃん!」


「そう言えば!父さんキリに負けたんだって?今度は俺と勝負してよ!」



ライナが素振りを中断して俺の所に来る。



「イイぜ」


「キリは剣術だったから…俺は体術ありの剣術だ!」


「双剣は有りか?無しか?」


「ん~…無しで!じゃあ模擬剣取ってくる」



俺はダッシュで修練場に向かうライナを見送り、ストレッチを始めた。



「はい、みんな集まってー!」



メイドの一人が手を叩いて子供達を集める。



「これからお父さんとライナ君の模擬戦が観れるから、勉強するように」


「おとーさんとお兄ちゃんってどっちが強いの?」


「…おとーさん」


「お兄ちゃんじゃない?」


「…身体能力的にはおとーさんはキリ姉とライナ兄に負けてるみたいだぜ?」



俺がストレッチしてると子供達がワイワイ騒ぎながらどっちが強いかを議論していた。



「父さん、はい」


「おー、ありがと」



5分後に戻ってきたライナから模擬剣を受け取り、メイドに無名を渡す。



「じゃあ行くよ!」


「かかってこーい」



メイドが俺から離れたのを見て直ぐにライナが距離を詰めてくる。



「食らえ!抜刀一閃、竜牙斬!」



走ってきた勢いのまま右足で踏み込み、腰の回転と同時に抜刀して斬りかかる技。



おそらく両断されるまでに一秒もかからないぐらいの抜刀スピード。



「うわっ!」



俺は瞬間的にライナに足払いをして模擬剣を避けた。



「ぐふっ…!」



そのままうつ伏せになって地面に手を着き、跳ねるようにしてライナを蹴り飛ばす。



「ははっ、男相手だと遠慮無くやれるから楽しいぜ」



俺は跳ねた勢いのまま立ち上がり、振り向いてライナを追いかける。

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