04

「あのねっ!みんなに大事な話があるんだ…」



夕飯の片付けも掃除も終わり、子供達もメイド達も風呂から上がった後…



リビングでライナを除いた家族全員でテレビを楽しんでる最中に、真ん中の子が意を決したかのように声を上げる。



「ん?」


「「「なになに?」」」


「「…大事な?」」


「「「話…?」」」



テレビから顔を離して全員がその子に注目した。



「前々から言われてたアレなんだけど…」


「あー、アレ?どうなったの?」


「結局断ったんでしょ?」


「…?」


「なあ、アレってなんだ?」



俺以外のみんなは話が分かってるらしく、色々な反応を返している。



俺は雰囲気を壊さないようにコソッとメイド達に聞く。



「ああ、この前話した例のアレです」


「王族のご子息に一目惚れされてつきまとわれてる…と言う」



ああ、思い出した!ハイブリッド体の少女…アリスだっけ?を連れて来た時に聞いたな。



あの時はハリューが不良を一掃したいとか言ってたから、それしか記憶に残ってなかったわー。



どうやら今年11歳になる真ん中の子、ミィナが王族のご子息に一目惚れされたらしい。



ミィナは見た目も態度も清楚なお嬢様系だからな。



分からん事も無いが…なんでも会って直ぐに告白をされたそうで、ミィナは速攻断ったと。



それからと言うもの…学校で何かしら付きまといに近い行動をされてるとの事。



そこで疑問、なんで王族のご子息がそんな平凡な学校に通っているのか?



聞いた所によると



『王たる者は下々…庶民の声を聞き、同じ立場に立って庶民のために動かねばならぬ。』



って言うアレをこの国の現王様が主張してるんだと。



だからあえて普通の学校に通わせてるそうだ。



そしてその王族のご子息は断っても何回も告白してくるんだと。



流石に学校外ではストーカー紛いの事はしてないらしいが。



で、回想終了して今のミィナの話に至る。



「もう受けようかと…思うんだけど…」


「「「「「「「ええっ!?」」」」」」」



軽く俯いて発した言葉に俺とメイド達を含むみんなが仰天した。



「なんで!?苦手なタイプなんでしょ!?」


「もしかして…私達に対する嫌がらせとかが関係してるの!?」


「俺らはそんな事は全く気にしてないぜ?ミィナ、考え直せよ!」



…は?嫌がらせ?なんだそれ。



「どうやら、自分の物にするために親に頼んで学校側に色々手回ししているらしいですね」


「…それは小学校だけか?」


「いえ、キリちゃんやニコちゃんに聞く限りは中学と高校の方もです」



子供同士の問題ですし…キリちゃんやニコちゃん達は良い友達が多いので全く意味を成してなく、今の所私達が出来るのは見守るだけです。とメイド長が言う。



もっともな意見だぜ…



にしてもなんで貴族だか財閥だか王族だかのお坊ちゃん達はそんな手を使いたがるんだ?



自分の意中の女を手に入れるために、その姉弟や友達に嫌がらせして無理やり手に入れようだなんてよ…!



おそらく真ん中の子本人とその友達も、何かしらイジメだか嫌がらせを受けてる…受けていた?だろうな。



メイド達の言う通り、こいつらは全くと言っていいほど気にしてないようだけど。



「ゴメンね、みんなにこれ以上は…迷惑をかけたくないの」


「迷惑…?はっ!俺らは家族だろ?迷惑も何もあるかよ!」


「ハリューの言うとおりだよ、全然迷惑なんかじゃないよ?」



おお…!今はライナが居ないから子供達の中で唯一の男であるハリューがずいぶん頼もしいぞ!



なんて男前な性格に育ったんだ…!



お父さんは嬉しいぞ!



…あ、いや、歳的にはお兄さんか。



やべえ…俺も染まってきてやがる。



「俺も同じ意見だよ」


「僕も右に同じ」


「…インシもそう思う、一人で抱え込む必要は無いよね?」


「うん、みんなで分ければ軽くなるよ!私はみんなのお姉さんなんだから、なんでも背負っちゃる」


「…キリねぇ、むじゅんしてる」



キリが姐御肌を見せようとした所で下の子につっこまれた。



「いまお姉ちゃんが一人で背負うなって言ったばかりなのに…」


「キリお姉ちゃんらしいね」



下の子二人にため息を吐かれる長女…これいかに?



「…ありがとう、でも…」


「それに、アイツの告白を受けるって事はこの家から出て行くって意味だろ?」


「…そして屋敷に軟禁」


「なに!?そんなの国王が許そうが俺が許さんぞ!」


「きゃあ!!」



俺は勢い良く立ち上がって真ん中の子に飛びつき、抱きついた。



たいして抵抗もせずに俺の腕の中にスッポリとハマる。



「考えてみろ、お前はどうしたいんだ?」



真ん中の子は俺の腕の中で泣き出しそうな顔になった。

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