03

「夕飯が冷めるから先にいただきましょうか」


「「「はーい…」」」



子供達は音にビクッとしたもの、渋々さっきまで座ってた椅子に戻る。



笑顔の威圧感…無し。

言い方の威圧感…無し。

雰囲気の威圧感…無し。



俺の説明の仕方だとなにかしらの恐怖を感じるかもしれないが…



本当にただの思いやりしか籠ってない言葉だった。



テーブルを叩いたのは子供達を静かにするため。



…いつから思いやりの言葉が人に何かしらの恐怖を与える言葉に変わったんだろうな?



言葉って不思議ダナー。



同じセリフでも、言い方を変えるだけで相手に与える印象がかなり変わるし。



かと言って機械みたいに淡々と言われてもアレだろ?



人間ならではの感情を込めないといけないとか…言葉ってめんどくさ。



子供達が食べてるのを長テーブルに頬杖をつき、遠くを眺めるようにして見る。



はぁ…これ以上変な事を考えるのは止めよ。



「さっきの話の続きだけどさ!」


「なになに?」


「まだ続きがあるの?」



夕飯を食べ終わり、食器を片付けてから下の子がさっきの続きを話し始めた。



「あの森のぬしが現れたんだ」


「…手合わせは午前中」


「冒険は午後だよ」



みんな?マークを浮かべてるのを察して他の二名が補足する。



…三つ子か。



こいつら歳が近いからかめっちゃ仲良いよな…それこそ三つ子みたいに。



因みに…一人だけ歳が一つ違うけど、本人の希望で小学校は三人同時に入る事にしたらしい。



遅生まれ的なアレにしとけば出来るだろうって考えね。



「うそ…!で、どうしたの!?」


「当然逃げたんだよね!?」


「もうダメかと思ったんだけど…おとーさんがね、倒したんだよ!」


「…カッコ良かった」



メイド達とモグモグご飯食べてる俺に子供達が全員注目した。



「この漬物美味いな」


「自家製でございます」



俺は子供達の視線を無視してご飯を食べ進める。



「アレを…倒したの?」


「あ、でもキリ姉やライナ兄は倒せるって言ってたぜ?」


「…奥に居るのはぬしより強い」


「見た瞬間逃げたもんね」



どうやら子供達の話を聞く限り、ライナやキリはアレを倒せるぐらいには強くなってるのか。



まああの森の主が最強ってわけじゃないと思うけど。



他の魔物や動物達を纏めるのが上手かったんだろうな。



…あれ?なんであいつら、アレが森の主だって知ってんだ?



…本当にアレは森の主だったのか?



「なんでアレが森の主だって分かるんだ?」


「え?だって他の魔物は逃げるし」


「自分の食料を上げてる魔物もいたよ?」


「…風格や行動がぬし」



あ、もしかしてこいつらあの森の主?を観察してたのか?



自分たちの存在を気づかれずに?何時間も…?



その歳でそんな人間離れした事が出来たって…



すごい才能と素質だな!



「ただいま~」



噂をすればなんとやら。



あれから40分ぐらいしか経ってないのに、もう帰ってきた。



「もーお腹ペコペコだよー」



キリはお腹を摩りながら食堂に入ってくる。



「ん?みんなどうしたの?そんな一ヶ所に集まって」


「あ、今ナノ達の話を聞いてたんだ」


「え、なになに…?」



メイドがキリの夕飯をレンジで温めている間に、輪の中に入って行った。



「ありゃ、やっぱり負けちゃったか…ドンマイ!まだまだ次はいっぱいあるよ」


「…ドンマイ…?」


「ドントマインド、気にするな。って意味だよ」


「そんなに気にしてないよ?」



キリも輪の中に入り子供達はワイワイ盛り上がっている。



その中で一人だけ一瞬だけ浮かない顔を見せる娘がいた。



みんなで笑いあってる最中にふと浮かない顔をしては、一瞬で笑い顏に戻す。



昨日からそんな様子を何度か見てるが…何かあったのか?



…もしかしてイジメ!?

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