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「てめえの勘違いだろ、つーか誰だよ」
「ふっ、俺の名前だと?聞いて驚くなよ!」
「いやいいよ」
仮面の青少年が得意げに自己紹介しようとしたのを遮り、肩を掴んでる手を払ってドアに手をかけた。
「待て!」
「うるせぇな……殺すぞ?」
「…!?」
でかい声で俺を静止させようとした仮面の青少年に向かって威嚇する。
…まあ威嚇って言うより、ただ言っただけなんだけど。
「レミーさんどうしたの?」
急に剣に手をかけて険しい顔つきになったのを不思議に思ったのか、受付嬢が聞く。
「お前…誰だ、名を名乗れ」
「生憎と名乗れる名前が無いんでな」
「えーと…ノネムさんだって」
受付嬢が俺が記入した紙を見て仮面の青少年に教える。
…ノーネームを略しただけの簡単な偽名なんだけど…まあいいか。
「ノネム…俺の名前はレミニティ・F・マーグだ」
F?ミドルネームでFって言ったらFIRE…火属性の貴族だっけ?
「貴族のお坊ちゃんかよ」
「はっ、流石にソレは分かるんだな…俺はマーグ伯爵家の跡取り候補だ」
マーグ伯爵ねぇ……って事はサナンカ子爵の所縁の貴族だよな?多分。
「なんだサナンカ子爵の従兄弟的な感じか?」
「ぐ…!今はサナンカ侯爵だ!」
「どっちでもいいよ、ってか下克上的なアレだな」
「うるさい!あんな成り上がりなんて…!俺が追い越してやる!…そのためにこのギルドに入ったんだ!」
聞いてもいないのにベラベラと良くもまあ…
なんで身の上話を他人にそう簡単に話すの?
情報は大事だって教えてもらってないの?
まあどうでもいっか。
俺には関係の無い事だし。
あ、良い事思いついた。
多分だけど…このままこの流れが続けば、この仮面の青少年と闘う事になるだろ?
そしたら魔物だか魔獣だか実験動物だかが出てくるフラグが立つんじゃないか?
小説とかでは、ギルドで揉め事してる最中になんかが出てくるのがほとんどだし。
そんで…お前やるじゃねえか。みたいな感じで少し認められる的な?
よし!そうと決まればフラグを立てるぜ。
俺ってやっぱり超頭良いー。
「なんか言ったらどうだ!」
「無理無理、お前ごときでは追い越せねぇよ」
「なんだと…!」
「その見た目で学校も行ってねぇんだろ?だからオツムの方が足りてねえんじゃねえか?」
俺は挑発するようにやれやれ…と肩をすくめる。
仮面の青少年はワナワナ…!と怒りで体を震わせていた。
「表へ出ろ!こんな侮辱されたのは初めてだ!ぶち殺す!」
「ちょ…ちょっと、レミーさん!揉め事は…!」
受付嬢がカウンターから出てきて仮面の青少年を止めようとする。
「うるせえ!こいつだけは許さねえ!」
「あっはっは、学校も行ってないような落ちこぼれが何を言う」
「ノネムさん!挑発は止めて下さい!レミーさんは冒険者ギルドの中でも上位に入る実力者ですよ!?」
「…マジで?」
まあだろうな、中々強そうなオーラを醸してるし。
俺は一応驚いたようなトーンで返す。
「本当です!学校に行けてないのは必要無いのと、ギルドが忙しいからです!」
「へ、へぇー…じゃあ止めようかな?」
受付嬢の言葉を聞きとりあえず怖じ気ついたように引き下がる演技をした。
ぶっちゃけギルドで上位の実力者だろうが、このレベルならまだまだ勝てるっていう。
「誰が逃がすか!今更謝ろうがもう遅い!」
「えー、せっかく人が謝って穏便に済まそうと思ったのに…」
「黙れ!表へ出ろ!」
「しょうがねぇな…ただし街への被害を無くすために魔術は禁止な」
魔術を使ったこいつに勝ったら否が応でも目立つし。
今の段階でも多少目立ってはいるが、まだセーフな域だろ。
「いいだろう、てめえごときに魔術なんざ必要ねぇ!」
「…はぁ…子供の相手は疲れるな…」
最後に本音が出てしまった。
とりあえず外に出て住民に決闘?の意を伝えて、俺らからある程度離れてもらう。
「行くぞ!」
「はいはい…」
住民が俺らを囲むように離れると仮面の青少年が早速斬りかかってくる。
決闘の詳細は省くとして…15分ぐらいで決着が着いた。
もちろん俺の勝ち。
久しぶりに愛槍を使ったとは言え…まだ完全には機嫌が直ってないため、扱い難かった。
一応刃の所はカバーしてるから、棍棒的な感じ?
いつもと同じようにほとんど体術で倒したに近い。
なんとかギリギリの勝負を演出して仮面の青少年は気絶させた。
あいつ、剣に頼りすぎてるから楽勝すぎる。
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