8
冒険者ギルドの支部は研究区画から歩いて一時間半ほどの場所にある。
俺は面倒だったから馬車タクシーで行ったけど。
だいたい30分ぐらいで着いたよ?
冒険者ギルドは世界で一番大きいとされるギルドで、ユニオン共和国の至る所に支部がある。
なんでも本部は政府が管理してるらしく、結構厳重な場所にあるそうだ。
因みに…現ギルドマスターである元一位ランカーは本部には滅多に顔を出さずに、支部を転々としてるらしい。
そいつがココの支部にはいない事は前以て確認済みなので会う心配はなし。
「きゃー!誰か!」
女の人の叫び声がして振り向くとどうやら引ったくりにあったようだ。
俺は走ってる男の斜め前に出るように移動する。
「えい」
「うっ!?」
足を引っ掛ける…と言うよりスネを蹴飛ばす。
走ってる最中に足下を掬われた男は前宙するようにして背中を地面に強く打ち付けた。
倒した後にそこらへんの人達が協力して数人で引ったくりを押さえてバックを女性に返した。
「ありがとうございます!」
女性がそこらへんの人からバックを受け取るのを見て俺は冒険者ギルド支部の建物の中に入る。
「すいませーん、依頼受けたいんですけどー」
キョロキョロと辺りを見渡してカウンターの受付嬢に話しかけた。
「あら?見ない顔ですね、メンバーですか?」
「いえ、短期バイトの予定です」
「そうですか…では、こちらをご記入下さい」
受付嬢から紙とペンを渡される。
記入欄が色々あるなぁ、えーと…前受けた時は最低限だけだったから…
偽名
手持ちの武器の種類
魔力の有無
今までに依頼を受けた回数
今受けたい依頼の種類
上記の欄だけを記入して受付嬢に渡す。
「ああ、経験者の方でしたか…では説明は省きますね」
ゴソゴソと手持ちの書類を漁って三枚の紙を差し出した。
「この周辺での討伐依頼はこれだけですね…右からE.C.Aのランクです」
んー………実験動物の討伐でいいかな?
研究区画から近いし。
「Aでお願いします」
「…分かりました、お一人様でよろしいですか?」
「ん~と…はい」
俺は辺りを見渡してから返事をする。
そこらへんの知らん奴を誘うぐらいなら一人でやった方が気が楽だ。
「ではお一人様で…コレを」
「あ!てめえは!」
受付嬢からボタン式の無線を受け取ると、今建物に入ってきた誰かが俺の方に向かってきた。
「ん?」
振り向くとそこには仮面をつけて剣を二本差してる青少年が。
…どこかで見たような気がするけど…気のせいか。
にしても中々強そうな感じだな。
「あらレミーさん、どうかされましたか?」
「ああ、暴れていた実験動物を始末した」
「え!?」
受付嬢は仮面の青少年の言葉を聞いてびっくりしてる。
「……えーと、依頼を遂行する場合はギルドを通して、と何度も説明してると思いますが?」
「面倒だからな、それに誰かが依頼を受けるまで放置してると被害が広がるだろ?」
「それはそうですが…」
受付嬢はため息を吐いて俺の方に向き直った。
「すみません…この依頼はレミーさんが完遂なされたので、お受けできません」
「え」
マジかよ…タイミング悪ぃな。
俺は仕方なく変更してDの依頼を受ける事にする。
「そういえば…畑を荒らしてる魔物の件はカタが着いたと連絡があった」
「それはギルドには…」
「通してないらしい」
受付嬢は頭を押さえるとすぐに顔を上げた。
え?もしかしてこの依頼も受けられない系?
「いつもの事ですからもう慣れました」
そう言った受付嬢の目から光が消えている。
感情を押し殺したのか…中々仕事が出来る人だな。
「すみません、Dの方も完遂されてしまいました」
「ああ、もういいです」
俺は頭を下げた受付嬢に諦めたようにそう告げた。
「待てよ、なんでお前がこんな所に居るんだ」
冒険者ギルド支部の建物から出ようとしたら仮面の青少年に肩を掴まれる。
「離せ」
俺はイラついているため不機嫌オーラを出しながら言う。
「レミーさんの知り合いですか?」
「違う!が、こいつは俺の記憶が確かなら王族の護衛をしてたハズだ」
「!王族の!?」
受付嬢はさっき以上に驚いたように声を上げた。
周りの人達もなんだなんだ?とこっちを見る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます