24
「バニシュ……さん」
「もしくは村人Bな」
「むぐー、むぐー」
塞いだ手を剥がそうとするクレインに、本名はマズイ…と耳打ちして手を離した。
「て…バニさん!酷いですよ!」
「バニさんて…まあいいけどさ」
クレインってなかなか順応性がある子だな…
「ルメラちゃんはちゃんと良い子です!」
「お前の前では、な」
人は誰しも裏表の顔を持ってんだよ、と言うとクレインは黙って椅子に座った。
「とりあえず勉強をしろ、分からん所があったら聞け。答えられるかは知らんが」
俺の言葉に早速カバンの中から本を取り出す二人。
そして真面目に勉強をする事二時間。
俺はテーブルに突っ伏して寝ていた。
「バニさん、起きてください」
「ん?」
クレインに肩を揺すられて起こされる。
「この問題なんですけど…」
なになに…『魔術の詠唱方法の五つを答えなさい』?
なんだ簡単じゃねえか。
「何が分からないんだ?」
「詠唱、簡易詠唱、詠唱破棄、無詠唱の他にもあるんですか?」
「いっぱいあるぞ」
主に有名なのは複合詠唱、重複詠唱、大衆詠唱とかかな?
重複詠唱は前にリザリーとニーナがやってたやつね。
アレは二人だったから二重詠唱ってこと。
「大衆、重複、複合…」
「あまり知られてないのならまだあるぞ?」
「ホントですか!?教えて下さい!」
うーん…俺が知ってるだけで略式詠唱、増挿詠唱、複式詠唱、複製詠唱、減抜詠唱ぐらいだな。
念誦詠唱は……どうだろ、念誦(ねんじゅ)だけで良さそうだし。
「色々あるんですね…」
「まあ自分で新しい詠唱方を作る奴もいるけどな」
ナターシャは俺が言った詠唱方を全て紙に書き写してた。
こんなマイナーなもん覚えてどうする気なのかねー?
「ナターシャ、多分この問題は引っ掛けよ」
「?引っ掛け?」
「授業では簡易と破棄、無詠唱しか習ってないでしょ?おそらく他のは自分たちで調べろって意味かも」
うわー面倒くせー、コレだから学校は…
俺、養成学校で良かったー、あそこはひたすら鍛えるだけのカリキュラムしかないし。
なんやかんや盛り上がってる?二人を見て内心そう思う。
因みに俺やリザリー達の知識のほとんどは独学だ。
学校が休みの日に本などを読み漁って身につけた。
『戦いは力じゃなくて頭だ』と教官が良く言ってたな…
『考える事を放棄した時点で敗北したと思え、考えろ、そして感じろ、己の持てる力を全て戦いに活かせ』
教官が口酸っぱく言ってたなぁ…懐かしいぜ。
学生を見ると学生時代を振り返る不思議。
「どう?勉強は進んでる?」
リザリーが紅茶とケーキ、クッキーが置かれてるお盆を持ってきた。
「あ、ありがとうございます」
「お姉ちゃんありがとう」
えーと…女の子(名前忘れた)は未だにリザリーを見ると萎縮している。
「お姉ちゃん…?」
「いつまでもさん付けじゃアレでしょ?それともなに、文句?」
「いや、あり得ない事に似合ってるなー…と」
そういや、リザリーにはお姉さんしかいないらしい。
俺は勝手に三人姉妹だと思っていたんだが…どうやら違った。
「あり得ないとはなによ、またお仕置きするわよ」
「…両手両足を拘束か?SMプレイがマジに思われるぞ」
流石にあんな動き辛い状態は勘弁したい。
「お、お姉ちゃんとバニさんってそんな関係だったの?///」
俺たちの会話を聞きながら顔を赤らめる二人。
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