21

なかなか皮膚も強化されてんな~、刺し難かった。



「ユーマ!!」



倒れた青少年に女神が急いで近づく。



「この程度で死ぬとは思わねぇけど」


「ぐ…」


「俺の勝ちな、じゃ…バァイ」



ユリスから貰った石を青少年の近くに投げて呪文を唱える。



地面に魔法陣が浮かび上がり、あの世界へのゲートが開く。



場所はランダムらしい。



え?展開が早い?…天界なだけに?



ゴメン嘘、怒らないで。



まあ青少年がウザかったからね、仕方ないんじゃない?



女神が咄嗟に青少年から離れると青少年の姿が消えた。



そして少しして魔法陣も消える。



「「「ユーマ…」」」



神達は青少年の姿が消えた後もその場所を見ていた。



さーて、俺の目的は果たしたし…ユリスの所にでも戻ろうかな。



「あ、そうだ。お前らが本気であの青少年に惹かれてるんなら…これから何回かは会わせてやるよ」


「「本当か!?」」



神達はハモりながら勢い良く俺の方を振り向いた。



「但し、他の神や女神…天界に迷惑かけない程度になるんならな」



会わせてまた同じ事態になるとか…面倒くさくてしょうがねえ。



まあ青少年を天界に連れてくるんじゃなくて、神をあの世界に降ろす方法で会わせるんだけど。



「く…迷惑を、かけていたのか…」


「我々もまだ未熟と言う事…」


「だがユーマに会えるのなら、努力しよう」


「じゃあ会いたくなったら連絡しな」



神達は悔しそうに言うとそれぞれ自分の家に戻っていく。



俺もさっさと戻るか…にしても疲れたなぁ。



「お疲れ様でした」


「全くだよ…ま、これでしばらくは大丈夫だろ」


「それで、どう?」


「あー、短い間に色々とあったぜ」



俺は事の顛末を女神ユリスに話した。



「そう、会わせる約束をしたのね」


「約束はしてねぇ、けど、敵対するワケにはいかないからな」



最低限の心証は保っとかないといきなり襲われたらヤバイ。



神を相手に無事に済むとは思えないし。



ほら、良く最近の小説とかであんじゃん?



転生物って言うの?



アレさ、神があんな弱いとかありえなくね?



神だよ、神。



人間と神ってどれぐらいの差があると思ってんの?



バッタと戦車ぐらいの差はあるよ、確実に。



バッタごときが戦車に傷を負わせられると思うか?バカじゃねえの。



なんで神が人間ごときを恐れてんの?



そしてなんでたかが人間を一人殺した程度であんな贔屓してんの?



神からした人間って、人間からした虫とほぼ同じ存在だよ?



世界を統べる神としてあるまじき行為だよね。



神をバカにし過ぎ。



冒涜だよねー、実際の神を見てみ?ヤバいぜ?



人間じゃランク的にとても勝てない存在だって。



…俺?俺はほら…元人間だから…現魔物だし、そう簡単には死なないじゃん?



だから健闘ぐらいまでなら…今は、ね?



昔はボロクソだったけど、もう何千回と死にかけたけど。



…思い出すと泣けてくる。



俺の人生…と、魔生?はロクなもんじゃねぇ。



今までで何万回死にかけてんだよ、って話だし……うぅ…



「どうしたの?」


「生きてるってまるで地獄だなって…」



アレって六道って言うんだっけ?



俺、実は人間として死んだ時点で本当に死んでんのかな…



今が地獄の真っ最中、とか。



色々と辛いわ苦しいわ…まあ楽しい事もそれなりにあるけどさ。



「…考えや行動次第で運命は変えられるものよ」



女神ユリスは慈愛のような笑みで俺を包み込む。



…って言うか抱きしめられた。



え?俺ってそんな酷い顔をしてたの?



それより、真っ先に反論したいんだが。









運命はすでに決まっているもの、だと。




俺の持論ではあるんだが、ほぼ間違いないと思う。

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