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「そ、んな…」



王子の前で小説のごとく呆然とするお姫様。



ガクンと崩れ落ちるように地面に膝を着いた。



…何だろうこの展開、俺って実は小説とかゲームの登場人物って言うオチ?



こんなさー…いかにもゲームとか小説のシナリオみたいな展開ってさー、実際に直面すると明らかに現実味が無いよな。



本当に二次元の世界に存在してるような感覚。



先の展開が読めて実につまらん。



「時間かせぎは終わりだ!俺諸共死んでもらうぞ!妹よ!」


「想いの交わらない兄妹が無理心中なんてリアル過ぎて笑えねぇよ…」



俺は呆然としてるお姫様を肩に担ぐと剣で王子の頭を刺す。



「無駄だ!ムダムダムダぁ!!」


「そんなん分かってるよ」



剣を引き抜いて王子を前に倒し、ポーチから魔札を4枚取り出して周りに配置する。



「イケるかな…?結界魔術ラウ・サバタ・マグバリス…っと」



魔術の発動を見る間もなく建物の外まで全力で走った。



「危ねぇ」



出口の寸前での大爆発、超ギリギリで何とか逃げる事に成功。



結界魔術のおかげで爆発の威力が弱まり、建物を一つ粉々に全壊させる程度の被害で済んだ。



「ふぅ…久しぶりにヤバかったなぁ、アノ技術が無かったら結構な規模の被害が出てたカモ」



迷惑な事にあの王子は魔術の才能だけは凄い。



魔力の量と質だけは流石は王族、と言えた。



戦闘魔術の技術をもっと高めてたらかなり苦戦してたはず。



…あの程度の実力で良かったぜ、まあ人間で今の俺に勝てる奴って友達とかを除いたら片手で数えるぐらいだしな。



当然、魔王軍の人たちは数の中に入ってないよ?



「トオマ!今の爆発は何だ?」



元一位ランカーが爆発音を聞いたのか走って来た。



事情を説明しこの場は任せてお姫様を現王様の所へ連れて行く。



「今の音は一体なんだ…?」



不思議がってる現王様を無視してその隣にお姫様を座らせ、俺はボーイから車を受け取り一人でホテルへ戻った。



そろそろ説明が面倒くさくなってきたので、色々省くとしてそれから二日後。



俺は今、リザリーと共に港にいる。



両手両足を拘束された状態で。



「…村人B、この度は本当に世話になった」


「そうだな、じゃあお礼としてこの拘束を外してくれ」

「ダメよ」



申し訳なさそうに頭を下げるお姫様にお願いするも、リザリーに即却下された。



「…本名は何て言う?リネンの事や自国の事と色々と世話になったのだ、名前を覚えておきたい」


「俺?俺の名前は村人Bだけど?なあ?」


「そうね、とてもお似合いよ」



うふふ、とリザリーは楽しそうに笑う。



「そうか、では村人B…この恩はいずれ絶対に返す。…その前払いだ」



お姫様は俺に素早く近づくと顔を近づけてくる。



俺は拘束された両手を口の所まで上げてお姫様のキスを防いだ。



「な…!?」



リザリーもお姫様も現王様も現王女様も驚いている。



いや、お姫様だけ驚き方が違うけど。



お姫様は拒まれた事に驚き、他の人たちはお姫様が俺にキスしようとした事に驚いている。



「そういうのはあの少年にしてやりな。…好きなんだろ?」


「な…!///…なぜそれを…///」



最後の部分をお姫様の耳元でコッソリ呟くと、顔が真っ赤になり言葉がごにょごにょと小さくなった。




可愛い反応だなー、この二日間で少年を好いてるのは直ぐに分かったよ…だてに小説を読み漁ってるわけじゃねぇぜ。



スタイルも良いし、顔も可愛いし…本当に俺には勿体無い女の子だ。



だから涙を呑んでお前に譲ってやるよ、少年。



現王様の隣に立ってる感情を感じさせない瞳の少年をジッと見る。



「少年、今度は死んでもお姫様を守れよ」


「な、なにを…!///」



慌てるお姫様をよそに少年はコクっと頷く。



「少年が元に戻る日を楽しみにしてるぜ」


「うむ、私が必ず元のリネンに戻してみせる!」



現王様や現王妃との会話は省くとして、船が出航し見えなくなった所で約一時間に及んだ見送りが終わった。



「ねぇ、程人」


「ん?…んん!?」



呼ばれて振り返ると、リザリーにキスされた。



ホッペにでは無く唇に…しかももう少しでディープにいきそうなぐらいのやつ。








「ぷはっ……今回の報酬よ、それと私と結婚する気はある?」



リザリーは俺でさえ思わず見惚れそうなぐらい綺麗な笑顔で微笑んだ。

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