23

「準備は終わったぞ」


「ん?ああ…って…」



部屋の外で姫様が着替え終わるのを待ってたらドアが開く。



「なんだ?見惚れたのか?」


「いや全然、さっきの方が俺好み」



姫様がふふん、と得意げな顔をしてたけど俺は率直な感想を述べる。



「死ね!無礼者が!」


「危なあ!」



男の急所めがけての容赦無い蹴りを普通に受け止めた。



「ちっ!」


「急所は止めて、使い物にならなくなったら困る…ってかお堅い衣装はあんまり好きじゃないんだよ」



結婚式とかのウェディングドレスとか、袴的なアレとか…



普通のドレスの方が可愛いと思うんだけどなぁ?



「まあ確かに堅いではあるが正式な場だ、仕方あるまい」


「俺はどんな場でも気にせず私服だけどな」



フリーダム万歳、何にも縛られない自由な立場だからこそ出来る事だ。



世の中は力が無いと自由もへったくれもないし。



弱者は常に人間関係に縛られる。



そして強者さえも…



地位や権力を維持するために縛られる。



だが俺は縛られない。



魔王様以外には。



魔王様が魔界にバカンス?に行ってる今、俺は誰にも縛られる事のない自由を手にした。



自由とはすなわち選択権。



自分の意思でYES or NOを選べると言う事だ。



嫌な事はやらなくていいし、やりたい事はなんでもできる。



服装に態度、言葉使いなんか誰に対しても気遣う必要なんてない。



気に入らなければ殺せばいいだけ、だし。



どんな場だろうと俺は俺だ。



相手に合わす必要なんて無くなった。



リザリー達はソレを分かってる上で、俺を操ろうとしてるあたり…かなり恐ろしい。



「じゃあ下に車を待たせてるし…行きますか」


「その前に貴様の淹れた紅茶が飲みたい」


「へいへい…姫様の望むままに」



俺は部屋の中に入りキッチンで茶葉の袋を漁る。



昼はアッサム…夜はアールグレイだよな?



今は夕方だから…アールグレイでいいのか?



むむぅ…ここは俺のスペシャルティースキルを発揮させる時か。



アッサムとアールグレイの茶葉を半分よりちょい少なめに取って淹れた。



かなりの技術を要するWティー。



俺の技術では最高4種類の混合までしかできない。



「姫様、はいよ」


「うむ」



ソファに座ってる姫様の前のテーブルにティーカップを置く。



「…!コレは…なんだ…?初めての味だ…!」


「アッサムとアールグレイの混合…アッサムグレイかな?」



何度も言うようだが…二つとも淹れ方が違うから合わせて淹れるのはとても難しい。



なぜならほんの少し何かがズレただけで上手く合わさらずに風味や味が落ちるから。



「こんな…紅茶が存在したのか…?」


「いやいや、アッサムとアールグレイの茶葉の混合だよ」


「混合だと?茶葉を混ぜれば味や風味が落ちると言うが?」


「ソコは俺のスペシャルな技術ってやつ?」



リザリーやマキナにイジメられ罵られ…向上させてきた技術の結晶の味。



「もう夕方だからねぇ?アールグレイは夜じゃん?アッサムは昼で…悩んだ結果混ぜた」



まあ成功して姫様が喜んでるから良かった良かった。



「ほい、お茶請けのクッキー」



今日の朝にパンと一緒に焼いたクッキーを入れた皿をキッチンから持っていく。



「うむ、ありがたくいただこう」



姫様が紅茶を堪能した後に下に待たせてある車に乗って調印式をする場所まで移動した。



運転手には待たせてゴメン…と二枚の札をチップとして渡す。



調印式をやる場所って外交庁だっけ?



ま、運転手に行き先は前もって伝えられてるから大丈夫か。

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