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「お前がそこまでやるってのは珍しいな」
もちろん身を削る?的な意味で。
だってこいつ…自分で言って恥ずかしいのかちょっと顔が赤らんでるし。
…86%方は演技だとみた、だがそんな演技までするという事は…もしかして追い詰められてんのか?
「ほっぺにチューぐらいで他国の王族に恩を売れたらかなりの儲けもんでしょ?」
「いや…俺が言いたいのはそれじゃなくて…」
いつもは『命令』しかしないこいつが『頼る』ってのはなかなか珍しい。
なんせこいつは俺の事を奴隷か召使いかなんかだと思ってる女王様だからな。
他の人には普通に頼るのに、俺の場合は命令だし。
「ああ、そういう事」
俺の考えを察したのか手をポンと叩いた。
…古臭い動作の割に、こいつがやったら可愛く見えるのは容姿のせいか?
「言うまでも無いと思うけど…命令だけじゃ人は動かせないものよ?」
もちろんあんたは特殊で異端な部類だけど。と、ふんわり柔らかい笑みを浮かべた。
状況、言動と…表情が……合ってない……ギャップ……萌え…!!
くっ…!流石は魔女だ、人心掌握に長けてやがる。
まあ元々は人を誑かす…他人やクラスメイトを自分の良いように動かせる事が『魔女』って呼ばれる所以だったんだけど。
…いや、それ以外にも魔女に当てはまる部分はあるからってのもゆえんの一つか。
「あんた程私に適応できてる人間は他にいないわね」
「褒め言葉?てかエルーは?」
「エルーも親友だけど、ちょっとは遠慮してしまうわ」
「俺にも少しぐらい遠慮しても罰は当たらないぞ?」
気を休める関係も必要でしょ?と明らかに俺の言葉を聞き入れる気が無い。
「とりあえず、脱線しまくってるから本題に戻すぞ…えーと…お姫様の護衛だっけ?」
「そうよ、明後日からユニオンに滞在する二週間の間だけ」
「ってか狙われてんの?」
別に狙われてないんなら護衛の必要なくね?
ユニオンと親しい国だったら狙われる理由は無いと思うし。
「…テロ組織が王女の命を狙ってるわ」
「それはどれぐらいの信憑性の情報だ?」
「情報網の中だからほぼ間違いないわ」
こいつ何気に情報屋顔負けの広い情報網があるんだよな。
「どういった感じの?」
「後で詳しい資料を渡すから目を通してよ?そうね…ザックリ言うと」
少し間を明けて…五ヶ国共同テロ、とリザリーは言った。
「は?…まさか、第二継承者と他の国が取引を優位にするためのうんたらかんたら…的な?」
「相変わらず鋭いわね、話が早くて助かるけど」
マジでぇ!?そんなん本の中だけだと思ってたけど…実際あるんだ。
「資金援助、技術提携、物流制限、物資や労働の支援…と言う名目の搾取行為よ」
「それで国力を弱体化させて最終的には植民地化…うへぇ、ゲスい汚い事を考えついたものだ」
「…植民地と言う考えは無かったわ、その手も十分にあり得る事ね…」
「金や資源、技術に労働力、あまつさえ土地まで奪おうなんてやべぇぜ」
最上級の奪取にあたる考えだ。
とてもマトモとは思えんな。
俺みたいに異常で異端、特殊かつ捻じ曲がった部類での頭じゃないと考えつかなそう。
俺の呟きが聞こえたのか…リザリーがなんとも言えない、多分苦虫を噛み潰したような感じ?の表情をしてた。
まさかして否定できないのが辛いのか?
「五ヶ国共同だからテロリストはかなり手強いはずよ」
「まあそうだろうな」
「もし、可能ならそのテロ組織も潰しておいてね」
いやいや…ついでに、みたいに言うなや。
「どの組織も上の方を数名潰せば瓦解するわ」
「俺の逆鱗に触れるか、気に入らないか、かなりイラつかせない限りは無いと思うよ?」
「…逆鱗はともかく、気に入らない程度で潰されたらテロ組織もたまったもんじゃないわね」
そうか?気に入らなければ潰す、なんて世界の常識だと思うけどな。
「王女の国はユニオンと親しいのか?」
「いえ、これから親しくなるわ…正確にはこの二週間で」
またこいつは何を企んでるんだか…で…国名は?
「国名はオーストラリア、今や生産、商業、工業の発展がだんだん目覚しくなっているのは知ってるでしょ?」
「ははーん…だいたいわかったぞ」
多分だが…王女は現王様とは来ない、使者みたいのと一緒に来るからテロ組織はチャンスだと思った。
そこでテロ組織から王女様を守ればユニオンの評価は上がる。
うまくいけば…ユニオンの上の方も狙われるかもしれないから、テロ組織を追い払う事に成功すれば上の方からの評価も二重でうなぎ上りってわけね。
すげえ考え…俺に期待の比重乗せすぎだろ、失敗できねぇな。
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