31
「…つーわけだ」
約30分かけて今までの実験体と実験についての説明をした。
「ふっ…!ふざけないで!!」
「そうだよ!こんな…!こんなのあまりにも酷過ぎる!!」
説明を聞いたリザリーとマキナがテーブルを叩いて立ち上がる。
エルーはテーブルの前で手を組んで下を向いていた。
「コレが元人間だったって言うの!?」
三つのビンの内、液体が入ってる物を持ち上げて叫ぶ。
「そうだ、さっき話したように実験の失敗作な」
「あんた…!自分が何やったか分かってんの!?人を…子どもを殺したのよ!?」
リザリーがビンをテーブルの上に戻して俺の胸ぐらを激しく掴みかかった。
「はぁ…落ち着けよ、実験に失敗はつきものだろ?まあ俺が天才じゃなかった、って事だ」
「程人君!『実験に失敗はつきもの』?そんな理由でこの子達を殺したの!?」
今度はマキナも詰め寄ってくる。
おおぅ…物語の主人公達に理解されない科学者ってこんな感じなんだ。
「全く…本当に落ち着けよ。冷静に物事を見据えてみ?」
「落ち着け?これを見てどうやって落ち着けって言うの?」
「実験と評して子供を殺した事実を冷静に聞けって言うの!?」
俺が悪者みたいになってるけど…元々こんな研究をしてたのは誰か、って話だよな。
「リザリー、お前さ…なんでこんな所に来たの?マキナの要請を受けたんだろ?」
「ええ、そうよ」
「マキナ、お前はなんでリザリーに要請したの?住民を助けるためか?」
「そうだよ!私たちだけじゃ手が回らなかったもん」
ここで始めてエルーが立ち上がった。
「『住民は助けられた、怨むべきは俺じゃなくてあの子達に魔物の遺伝子を無理やり入れた科学者だ』とか言いたいのか?」
「ビンゴ、流石だな」
言いながら近づいてきたエルーを見てリザリーとマキナが俺から離れて少しだけ距離を取る。
「頭では分かってはいるが、お前なら助けられたんじゃないのか!?」
「痛い」
いきなり殴られた……まあ受け止めたから痛いってのは嘘だけど。
「助ける義理のない奴を助ける程お人好しでは無いんだよ」
お前らも分かってるだろ?とエルーの手を離すと三人とも下を向く。
「それにな、どうせ捕まえた所で研究所送りで実験の続きだろ?ならまだココで殺した方が情けってもんじゃないか?」
三人とも下を向いたまま何も言わない。
「知らない方が良かったか?人間が魔物との遺伝子融合の実験に使われていた、と言う事実を。そのまま研究所に送ってたら知らなかった事実だぜ?…国の超最重要機密を知れたんだガキの二、三人の犠牲じゃ安いもんだろ」
「あんたね!」
「おっと、犠牲にしたのは俺じゃないぜ?どっかの科学者だ」
俺は棚から牡丹餅、的なラッキーをそのまま受け取っただけだ。と言うとマキナの方から蹴りが飛んできた。
「おっと」
ガシッと掴むとポイッと投げる。
マキナは態勢を崩してそのまま倒れた。
なんだこの雰囲気は?面倒な事になってきたな…
俺は一旦会議室から出ると最後の実験体の元へと歩いた。
理由はもちろん俺の実験を完成させるために。
「こいつで最後か…」
両手両足を何重にも拘束され転がっている実験体を見る。
まだ気を失ってるらしくピクリとも動かない。
さて…最後の実験だ、成功する事を祈るか。
…ギリ失敗した。
もう少しだったのに…本当にあと半歩の所で成功したと思う。
成功した!と喜んだのも束の間、急に身体が変化して激しく暴れるもんだからつい殺してしまった。
身体が崩れたわけじゃない、と言う事は細胞の受け入れには成功したわけだ。
だがオリジナルにはならない…魔物の遺伝子に主導権を握られたか。
惜しかった…ってかあと二体いれば確実に完成するのに。
やっぱり主導権を握るには強い意思が必要になるのか。
「程人」
「ん?」
「どうしたの?ソレ」
リザリーが研究所から出てきて俺の足下に転がってる異形の物を指差す。
「最後の実験体の成れの果て」
「………そう」
あれ?反応が予想と違うぞ?また怒って何かアクションを起こすと思ったのに。
「で?」
「は?」
「実験結果は?」
こいつたまに主語が抜けてる時があるよな…で?で分かるけぇ。
「成功するには本人の意思が必要だな…そうじゃないとこうなる」
俺はしゃがんで異形の物となった死骸を転がす。
「一応こうなった時点で実験は成功…研究は完成になるな」
「成功?コレで?その終わり方で今まで犠牲にされた子供が納得するの?」
「お前らさぁ…マジでもっと落ち着けよ。たかが子供だろ?なんでそこまでムキになるんだ?いや、なれるんだ?お前ららしくもない」
こいつらはそんなキャラじゃなかったハズだけど…もしかしてクレインやデロッサと重ねて見てるのか?
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