17
「よし、行くか」
ウイッグは付けたし、薄化粧もした、忘れ物は多分無し。
「今日で終わるんですか?」
クレインは眠そうに目を擦りながらベッドから出た。
「ん?ああ、一週間…いや八日で終わりらしいし」
「お母さんにまた会えますよね?」
「ん~…」
あっちが素直に渡してくれるんなら会えると思うけど、どーかなー?
俺が考えてるとクレインが不安そうな顔で服の裾を引っ張る。
「大丈夫だって、いざとなったら一人残らず皆殺しにしてから奪い返せばいいんだから」
不安を払拭しようと笑顔で言ったが俯いただけだった。
正直な話こんな茶番に付き合ってるとストレスが溜まってしょうがないワケで。
しかも午前の部が始まるごとに俺の愛槍が入ったケースを見せつけるし…危うくキレて目に映る人々を皆殺しにするとこだったぜ。
「程人さんを、信じてます」
「おう、任せとけ」
どっちの意味の信じてます。だったのか…或いは両方の意味を込めて言ったのか、とりあえず俺は決め台詞のごとく言った。
会場に入りクレインを個室まで送ってからあらかじめ聞いていた場所の控え室へと入る。
中に入ると既に2人の代表者が座っていた。
確か…一日目と五日目の代表者だったかな?
纏う雰囲気が一般人とは異なり如何にも、な感じだ。
あと一つの控え室には二日、三日、六日、七日目の代表者がいる。
最終戦はバトルロワイヤル。
自分以外の6人を倒せば勝ち、と言う単純なものだ。
それ以外の一つだけ。
ギブアップして負けを認めた者や意識を失ってる者、戦闘続行が明らかに不可能になってる者への追撃の禁止。
まあ要は負けた者を殺すな、って意味。
とは言えそれ以外は何でもアリだ。
だから最終戦の時だけ闘技場を覆うようにドーム状の透明な壁が設置される。
激しいバトルに客席が巻き込まれないように、と言う処置らしい。
『あと20分後に最終戦が行われます』
アナウンスが流れ、控え室の中の空気がさらにピリピリとした。
「…めんどくせぇな…」
「あぁ?テメェ、今なんて言った?」
俺の呟きを聞いて代表者の一人が突っかかってくる。
「結果が分かる試合をするのはめんどくせぇな」
「はっ!そうだよな!テメェみてぇな弱そうな奴は速攻で死ぬからなぁ!」
俺はごく自然な流れでゆらりと立ち上がり素早く男の首を掴む。
「お前雑魚だろ?油断し過ぎ、普通なら折られて死んでるぜ?」
「な…!へっ、ちったあやるじゃねえか、前言撤回だ。少しは楽しめそうだな!」
「…道化師のピエロ、素手で魔物を殴り飛ばした男…侮るなかれ」
今まで一言も発しなかった男がボソボソと呟く。
武器は刀だが、俺と同じ出身ではなさそうだ。
顔や体型、服装や喋り方で直ぐ分かる。
「よいしょっと」
椅子にドカッと座るとある事を思いついた。
今の内にストレッチとかして身体を解しておいた方が動き易いのでは?ということに。
座った意味も無くまた立ち上がりストレッチをしてると、それを見た他の2人も真似をしてストレッチを始めた。
『大変長らくお待たせしました。これより最終戦の幕開けです』
アナウンスと同時に鉄門が開く。
…事前になんの説明も無くアナウンスだけでいきなりってキツくね?
他の2人が先に出て行ったのでそれに続くような形で控え室を出る。
『レディースアーンドジェントルメン!!これより最終戦をー!開始するぜぇ!!この試合でコロシアムの全てが決まるぅ!!先ぁず最初はぁ!代表者のー…紹・介!だぁ!!』
そんなん要らんからさっさと戦わせろや。
もうこんな茶番に付き合う精神力が無いんだよ。
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