24
「次に魔石だけど…コレはすぐに終わる」
「え?魔石が一番難しいのよ?」
「とりあえず場所移動だ」
俺とリザリーはリビング的な所の隅にある机の所に移動した。
「ここ?」
「おう…まずインクで薄めた血で術式をカードに書き込む」
机の上にあるカードの束から六枚取って術式を書き込む。
「んでただの白紙に魔法陣を書いて…」
「あ!分かった!」
「分かった?簡単だろ?」
「トレース、投影魔術ね!なんでこんな簡単な事を思いつかなかったんだろ…」
石の中に術式を刻み込む方法は本当に簡単。
まず術式を書いた紙の真ん中にカードを置く、そしてその上に石を置いてまた上にカードを乗せる。
石の周りを4枚のカードで囲ったら準備は完了。
あとは魔術名を唱えるだけ。
「トレース」
コレで魔石は完成。
魔札さえ完成させればついでにのレベルで完成させられるものだ。
「なんの魔術を入れたの?」
「かなり上位の強化系、多分…身につけてるだけで身体能力が普段の二倍ぐらいになるはず」
その昔…今でいう所の黒歴史ってやつか?
人間なら…男なら誰しも『最強』という名の称号を欲しがる。
今考えたらあの頃の俺は完全に厨二病だったな…
だが俺には才能が無かった。
頭が良いわけでもないし、力があるわけでもない、特殊な能力も無ければ魔力も無い。
THE凡人。
それが嫌でしょうがなく必死になって強くなる方法を探して、探して…強化系の魔術に行き着く。
更に調べて治癒系も強化系も雷系や炎系の延長線上の異種である事に気がついた。
炎系、雷系、治癒系、強化系の魔術を徹底的に調べ上げ、組み合わせ、ついに大魔術やオリジナルの術式に辿り着く。
辿り着いたまでは良かった、が!
肝心の魔術が使えなかった。
当然だ、俺には魔力が無かったんだから。
それに気づいた瞬間に俺は悟る。
『凡人はどんな方法を調べようとも強くはなれない…世の中は才能が全てだ』
それが12、3の頃か。
それから一年後にただの興味本位…或いは知識欲を満たすためか、人体実験に手を出した。
俺が思い出せたのは魔札と魔石の実験だけだが…
多分リザリーが言ってたみたいに色々と手を出してたんだろうな。
裏で大量の犠牲者を出しながら。
まあだからと言って罪の意識に苛まれるか、と言えば…そんな事は全然全くと言っていいほど無い。
所詮人間を殺そうが虫を殺そうが同じ事のようにしか思えん。
人間も虫も同じ『命』だ。
虫を殺しても罪悪感は無いのに人間を殺したら罪悪感が有る、なんておかしな話だろ?
どうせ死刑が宣告された犯罪者だ、死ぬ前に俺の役に立てたんだからありがたく思え、っての。
「どうしたの?」
「ちょっと最強を目指していた黒歴史を思い出してブルーな気分だ」
少し俯いた俺をリザリーは覗き込むようにして見る。
恥ずかしい…穴があったら入りたい気分やわー。
とにかく!なにが言いたいかと言うと…
俺の黒歴史が予期せぬ形で役に立った、という事だ。
魔札と魔石の研究をしていた頃にこんな考えは全くなかった。
あの頃の俺は…ただ出来るか否か、思いついてみたから試してみたい。としか考えてなかったんだよ。
時を経てこんな素晴らしい結果に結びつくとは…!
拉致られてみるもんだなー。
「…あんた今良からぬ事を考えているでしょう」
「え?」
「顔、その表情隠しなさいよ…」
顔が大変になってる事を指摘された。
何はともあれこの研究で俺のレベルは格段に上がる。
いや、もう上がったのかもしれない。
うなぎ上りのごとく。
「リザリー」
「なによ」
「ありがとう」
「…なによ///」
表情を戻していつもの感じでお礼を言ったらそっぽ向かれてしまった。
こういう時の反応は本当に可愛い奴だな。
ピキューン!!
テイト・トオマのレベルが上がった!
新しく魔札のスキルを覚えた!
魔札【攻撃系魔術】
魔札【強化系魔術】
魔札【治癒系魔術】
ピキューン!!
テイト・トオマは魔札【オリジナル】が使えるようになった!
ピピーン!!
遠間程人は秘奥儀(笑)魔札【大魔術】が使えるようになった!
…なんつって(笑)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます