37

「っ…!」



俺は背中から来る強烈な威圧感を察して王子を弾き飛ばし、とっさに振り向き剣を構える。



「うおっと!」



構えた瞬間の衝撃の強さに剣が弾かれ俺は態勢を崩した。



地面に倒れる前に体をひねり手を着いて横側に思いっきり転がる。



「ぎゃははは!」



顔を確認するまでも無く分かる声。



「良い反応だ!そうでなくちゃ面白くない!」


「後ろからまた真っ二つにしようとしたのか…」



俺は素早く態勢を整え剣を構える。



あっぶねー!あと一秒構えるのが遅かったらまた真っ二つになってたよ。



「あなたは…確かメルガさんでしたっけ?助太刀感謝します!」


「あぁ!?青二才は引っ込んでろ!邪魔するならてめえもぶった斬るぞ!」



奴は王子に向かって斬りかかった。



「な…!」



王子は剣で防御しようとするが間に合いそうにない。



「待て待て」



俺がダッシュで王子の前まで行って目の前で剣を受け止める。



正確には受け止める、と言うより受け流した、と言った方がいいかもしれない。



奴の攻撃は重すぎてとても今の俺じゃあ片手では受け止めきれないからな。



「な…!」



目の前に現れ庇った俺に驚愕の表情を浮かべる王子。



え?こいつ、な…!ってしか言わないの?語彙力低いな。



「邪魔を…!するな!」


「うぬ…いやいや、っとぉ!おかしい…うひゃ!だろ」



俺は奴の猛攻撃をなんとか紙一重で凌ぐ。



「お前の相手は誰だよ」



俺は王子の襟を引っ張って一旦奴から距離を取った。



「目に映る気に入らない奴全部だ」



範囲広いなー…もうちょっと絞った方がいいんじゃないか?



「斧」



俺は小箱から斧を取り出して左手で構える。



右手には剣、左手には大斧、二刀流である。



「ぎゃは!良いエモノを手に入れたみたいじゃないか」


「まあな、羨ましいだろ」


「俺の大鎌にはかなわんがな!」


「…!何がなんだか…どうなってるんだ」



俺の後ろで王子が混乱していた。



まあそれも当然か、仲間に攻撃され最初に戦ってた奴に守られたんだから。



いや、やはり奴には仲間意識と言うのは無かったか。



「今回は…最初から全開だ!」


「え?ちょっ…!」


「がっ…!」



奴の姿が消えたと思ったら俺のすぐ目の前で鎌を振り下ろしてた。



俺は瞬時に王子を後ろに蹴り飛ばして斧と剣をクロスして受け止める。



「ぐ…!」



なんて重さだ…!床にヒビが…!



「ぎゃは!」



奴はもう一度大鎌を振り下ろす。



足元の床がビキビキ!と音を立てて亀裂が入った。



王子を蹴り飛ばしたのは我ながら冴えた考えだぜ…



こんな…受けきれる…わけが…!



更に床がビキビキ!と音を立て周りまで割れ始める。



「ぎゃはははは!!」



奴は更に力を込めて大鎌を振り下ろす。



「ぐ…!ぅ…!」



ドゴ!!と大きな音を立て床が衝撃に耐えきれずに陥没した。



俺は階下へと叩きつけられるもその勢いは衰えず、階下の床も突き破って更に下へと落ちて行く。



結局全ての床に叩きつけられ、そしてぶち破りながら地面へと叩きつけられる。



床の瓦礫が上からガラガラ!と俺の上に降ってきてあっという間に瓦礫のピラミッドができた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る