36

「なぜこんなものを…?」



王子が不思議そうに俺を見た。



「侵略に行った村に盗賊団がいて、それを殲滅させた時の戦利品」


「あの盗賊団を一人で壊滅させたのか!?」



王子は驚いたように俺の全身を上から下までじっくりと見る。



「ありえない…」


「いや、部下共と一緒になんで」


「部下?」


「王子!大変です!」



やっぱり噂をすればなんとやら…鎧を着た兵士が慌てた様子でドアを開けた。



「何事だ?」


「城下町にて多数の魔物が暴れているとの報告が!」


「魔物だと!なぜ…はっ!」



王子が俺を見てさっきの言葉を思い出してるようだ。



「まさか…お前…」


「ピンポーン、さて交渉を続けようか」



城下町が壊滅する前に。



「交渉だと…?」


「この国とその宝を交換しないか?ってさっき言ったさ」


「バカな!確かにこの宝はとても大切な物だがこの国には変えられん!」



交渉決裂…か、仕方ないな。



「なんの真似だ?」



俺が宝を小箱に入れようとすると王子が前に立ち塞がる。



「この宝は返さん、元々は我らの物だ」


「『元々は』?調子に乗るなよ、今は俺のだ」


「魔物ふぜいが…!」



王子が紙の束が重なっている机へと走った。



俺はその隙に宝を全部小箱に入れる。



「今ここで退治してくれる!」



どうやら王子は剣を取りに行ったっぽかった。



城下町はどうすんの?兵士はまだドアの所に立ってるよ?



俺が兵士の所を見てるとそれに気づいた王子が兵士の所へ走った。



「住民の避難を最優先にして魔物共を退治しろ、急いで英雄にも連絡をいれるんだ」



兵士はわかりました!と敬礼をして走り去って行った。



「英雄が戻って来るまでは俺が…俺たちがしのぐ!」


「くぁ~…」



ねむ……ん?話は終わった?



「ふざけやがって…!」


「英雄ねぇ…ユニオンに行ってんの?」


「貴様に言う筋合いはない!」



王子が俺に斬りかかってくる。



剣術も修めてたのか?良い太刀筋だ。



俺は王子の剣をひょいひょい避ける。



「く…!」


「もっと敵を良く見ろ、動きを予測しないと」


「うるさい!」



俺は王子にアドバイスしながら避ける。



うーん…素材は良いんだけど…もったいないな…



「ならば!」



王子が一旦動きを止めた。



そしてゆっくりと動き始める。



そんなノロいの目を瞑っても避けられるぜ。



俺はギリギリまで待ってから避ける。



「ふーむ…緩急をつけたいのは分かるが露骨過ぎないか?」



しばらくの間王子はゆっくりと斬りかかってきたが、急に動きが止まった。



「覚悟しろ!」


「おう?」



王子のスピードが上がってるのか?掠ってしまった。



王子の動きがだんだんと変速的な動きになり避けるのが難しくなってくる。



「おっと」



ついに剣を抜いてしまった。



うーむ…王子なかなかやるなあ。



「やるね」


「バカにするな!」



バカにしてますけど何か?

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