16

街が焦土と化して5分後。



「…う…なにが…?」



街から少し離れた茂みでエルーが目を覚ました。



「よう、気がついたか」


「テイト!なにがあったんだ?皆は…?」



俺は茂みから上半身を出す形で寝っころがっている。



「補佐官と三人組は確実に無事だけど…」


「なにがあったんだ?」


「奴…メルガだっけ?そいつは分からん」


「なにがあった!?」



そんな大声で叫ぶなよ、奴等にバレるぞ?



まあその心配は無いだろうけど。



なにがあった…ね。俺もよく分からんが…予想が当たってるのなら、多分アレだろ。



「俺も詳しくは知らん。が、おそらく国軍が新兵器を使ったんだろ」


「新兵器…だと?新兵器を使用するなど聞いてないぞ!?」


「俺に言われてもな…」


「「「「隊長!無事でしたか !」」」」



エルーが叫んだからか他の4人が集まって来た。



声揃えるとか気持ち悪っ!



「!お前は…!」


「お前まで生きてたのか…」


「隊長!こいつはここで抹殺しておきましょう!」



なんて奴らだ。



命の恩人であるこの俺を殺そうとするなんて…



やっぱり命を救われても魔物は殺すべき対象なのか?



…なんちゃって。



こいつらは自分が何で助かったか、とか知らないだろうな。



「待て、お前ら落ち着け」


「ですが…!」


「こいつはここで始末しないと危険」


「こいつは殺すな、命令だ!」



エルーは低く威圧感のある声で三人組を黙らせた。



「先ずは状況把握が先だ」


「「「了解」」」



三人組が悔しそうに俺を睨む。



やんのか?あんまり舐めてるとそろそろ殺すぞ?



「テイト頼む、なにが起こったのか教えてくれ」



仰向けに転がってる俺に対してエルーが頭を下げる。



友達に頭を下げられては仕方がない…俺もイマイチよく分かってないんだけどな。



「多分、魔物を殲滅するために国軍が新兵器を使ったんだろ?」


「違う、俺が聞きたいのはそれじゃない。『なぜ俺たちが無事なのか?』だ」


「?隊長…言ってる意味が…」


「アレを見ろ」



補佐官が街があった方向を指さした。



という事は…こいつもエルーと同じ考えなのか。



「なんだこれ…?」


「街が…」


「跡形も無い…!?」



どうやらこいつらも状況を少しは理解したらしいな。



「俺の魔物としての『能力』で移動させたんだよ。お前らは余裕で間に合ったが奴はギリギリだったからな…無事かは知らん」


「あいつも移動させられたのか?」


「おう、俺を誰だと思ってる」


「ははっ、そのセリフ昔はよく言ってたな」



こんな状況なのにエルーは笑っていた。



「奴は俺たちと反対側にいるハズだ…間に合っていれば、だけど」


「そうか…よし!ではこれから反対側へ向かうぞ」



エルーは三人組と補佐官に命令をして作戦を練る。



ある程度の作戦はたてられたのかエルーは俺の方を向いた。



「テイト、行くぞ」



何で当たり前のように俺も入ってんの?おかしくない?おかしいよね?



まあそれがエルーシャか。



「無理、俺は動けん。つーか面倒だからパス」


「大丈夫、俺が担くよ……な!?」



あ、笑いながら俺の手を引っ張ったエルーが硬直した。



遅れてその他の四人も俺を見て驚愕の表情をする。



「て…いと…お前…」



流石に上半身だけ…みぞおちぐらいから下が無いとビビるよね、普通。



どんなショッキング映像だよ!って感じで。



今までは草の茂みに隠して分からないようにしてたのに。



あーあ、ばれちゃった。



「バレた?言ったっしょ?奴はギリギリだった、って。俺はまだ生きてる分…ギリギリセーフ?」


「いや、アウトだろ!と言うか、大丈夫なのか!?」



ナイスツッコミ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る