10
「おい部下共、今すぐ建物の影に隠れ防御態勢だ!」
あのスピードだと早くて一分ではこちらに来るはず…
その前に部下共を隠さねば奴に何体か狩られてしまう。
「早くしろ、上司命令だ!隠れろ!」
上司命令、と言った瞬間聞く耳持たなかった部下達は俊敏な動きで建物の影へ隠れた。
「よし、そのまま防御態勢だ!気を抜くとヤられるかもしれんぞ」
「テイト!」
エルーシャの声に振り向くと…いや、振り向こうとしたら胴体を真っ二つにされた。
また後ろからでまた真っ二つかよ。
鋭い斬れ味なだけに真っ二つにされても上半身と下半身が分かれる事はなかった。
「テイト…?」
俺を追い越した奴がエルーシャの声に反応して振り向く。
「お前…テイト・トオマか…?」
「人違いだ、と言いたい所だが…そうだ」
今の奴の無表情が俺には少し驚いたように見えた。
「…生きてたのか…?」
「気になるか?」
「…少し」
「俺から説明するのは面倒だ。エルーから聞け」
こいつ…変わったな。
気に入らない奴は片っ端から狩ってたあの頃とはどこか違う。
何かが抜け落ちたような…
エルーシャから俺の事を聞いている奴を観察する。
なんだ?なにが足りない?ナニが奴から抜けたんだ…?
ふと俺を見た奴と目が合った。
わかった!『狂気』だ!
奴から狂気の雰囲気が消えてる!
何をしでかすか分からない危なさ…狂ってるとしか言えないような雰囲気、行動。
それを感じない…
今の奴はまるで木刀だ。
昔の妖刀の様な感じがしない。
「…そうか」
どうやら俺が考え事をしてる間に説明は終わったらしい。
「…俺と引き分けたお前が…裏切りで死ぬとは…」
「まあ生き返ったけどな」
「…魔物…」
いきなり、本当にいきなりどこから出したかも分からない鎌で俺は縦に真っ二つにされた。
やはり鋭い斬れ味だからか鎌が通過する頃にはくっついているんだが…
いくら魔物になって痛みに鈍くなったとしても、切断は痛いんだよね。
ちょっとカチンと来たわ。
「なに?」
「…確かに魔物」
は?確かめたかったの?つーかさっきも真っ二つにしたじゃん!
それで分かるだろ。
さすがの俺もイライラして来た。
が、今の俺と今の奴では戦力差が歴然としている。
だからとりあえず息を吐いて心を落ち着かせた。
昔の俺と昔の奴でも戦力差は歴然としてた。
だからみっともなく逃げ回ってたわけだが。
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