透明な打ち上げ花火

作者 石井腕

114

44人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

まず、書き出しが素晴らしい。
静かな島の、静かな一日が、今日もするりと腕からこぼれ落ちてゆく。

それから、想い人たちの気持ちの交錯が始まって、三人のこれからの行方を暗示するように、月日はとっぷりと暮れてゆく。

あぁ、そうか。君たちは、これから、離れ離れになってゆくんだね。さざなみのように小さな想いは、やがてふわりと空へ放たれて、打ち上げ花火のようにぱっと花咲いて、それから、


消えた。

透明な想いをそれぞれが胸に抱え、これから君たちはどこへゆくのだろう。
短い文章の中に、筆者の腕がきらりと光る短編である。

★★★ Excellent!!!

人口の少ない島で暮らす若い3人の青春。
彼らの行動や距離感は、まるで作者の実体験をなぞっているような、そんな気がした。
(「まるで」ではない可能性も無きにしもあらず……)

彼ら3人は互いのことを「ただの幼馴染」とは思っていない。
伝えずにいた思いは、「別れ」をきっかけにして、溢れ出す。

時間は巻き戻しできず、3人はそれぞれが考え出した最適解を実行する。
これでいいのだと。

ラストの「さようなら」に切なさを覚えた。
これで良かったのか、考えることなんて意味がない。
ただ、悲しくなるだけだから、と。
打ち明けられた思いは、ただ目尻から滴り落ちるのみ。
遠く、とても遠くにいる人には届くことはないだろう。

読了後、胸がモヤモヤと見えない何かに締め付けられる、そんな物語でした。

★★★ Excellent!!!

短い文章の中、芯の通ったストーリーを構築されていて素直に羨望の念を覚えた。

別れというのは生きていれば誰にしも平等に訪れるものだ、然し幾ら割り切ったところで、想い人との別れとはこうも切ないものとなってしまう。別れを憂いた人間の内に現れる、負の感情とも取れない鎮痛の感情をこの作品は露骨なまでに浮き彫りにし、繊細かつ簡潔に表現しきっている。

全く、作者の力量が恐ろしい。

身近に起こり得る事象のため、自己を投影する事に障害の無い物語で、読了後の寂寥感は心を髄から揺さぶる。

前述したことと少々被るが、こんな短文で鳥肌を感じたのは私史上初だ。この素晴らしい作品を多くの人の目へと止まることを祈ることとする。

★★★ Excellent!!!

素敵な話。文章一つ一つに登場人物の感情が伝わってくるような気がしました。
重要な登場人物は三人。主人公の少年、そして二人の女子高生だ。
その中の一人の女の子が島を出ると言って、主人公が告白するという話なんですが……
切ないです。もう、青春してます。

カキ氷のシロップだけが、カップに残ったような気持ちになります。

ところで、なぜ彼女はいつもと違った味を選んだのでしょうかね。
色々と妄想して、余韻を楽しみたいと思います。