作者 和泉真弓

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★★★ Excellent!!!

 時間をかけて読ませていただきました。
 周りの人達との感性のズレ、それに伴う違和感の芽生え……幼少期、誰もがアイデンティティーを確立していく際に多かれ少なかれ、大なり小なり経験してきたことでしょう。
 しかし、主人公の理子のそれは『ん?』と首を傾げることはあっても明確に違和が違和とはなり切れず、その傾いだ目線のまま紡がれていく言葉の数々が物語全体に漂う雰囲気を独特なものに仕上げています。
 文章の流麗さや模写の美しさもさることながら、僕はそんな少女を見守る周囲の人達の強さや弱さ、迷いや葛藤がより印象的でした。
 第三章の前後からまるで転調するように物語の流れが変わっていきます。 けれど引き目で眺めた全体像は微塵もブレることなく、あくまで理子と理子が繋がる世界というその構成力が秀逸の、素敵な作品です。

 虹の彼方に理子が何を見るのかとても楽しみですが、ゆっくり、じっくりと、作者様が納得のいく完結を迎えてくれればと思います。

★★★ Excellent!!!

生きることのそして人間関係の美と醜とが、「ことば」に幸いにして恵まれたアスペルガーの少女を通して、繊細な描写で丁寧に綴られてゆく物語です。
その格別な描写力は、まるで活字たちが作者様に綴られることで歓び踊るさまを、目のまえに感じられるほど。

物語を小説のかたちで読む幸せをかみしめることができる、とても貴重な作品です。




★★★ Excellent!!!

本文中に理子がグレーゾーンだとかそういう言葉は一切出てこないのですが、ここまでマイノリティーの生きる世界を言語化してくださったことに感謝を覚えました。
健常の方にこの感覚を共有や理解してもらうことは出来ないのかと、正直諦めていました。

当事者が明確に表せない感覚が、とても美しい筆致で綴られています。

辛い思いをすることが多い小学生時代ですが、理子の家族や、大和が、理子の個性を認めてくれていることが救いです。
この後、物語はどうなるのか、理子が辛い思いをしないか、ドキドキはらはら、時に感覚の共感をしながら完結まで追い続けたいと思います。

(第32話 はじめてのデートまで読了)

★★★ Excellent!!!

自然と人間に対する鋭い洞察力と、最適な言葉を選び出し吟味できるだけの語彙力と、それらを紡いで丁寧に表現していく描写力と。それらが混然一体となって、場面が、人物が、みずみずしく立ち上がっていく。ストーリーを追いながらも、文章を味わう愉しみに心が満たされていく。出逢えてよかったなあと思える、そんな作品です。

★★★ Excellent!!!

某SNSで和泉真弓さんの文章を知っていた。短いながらも、深夜に置かれる詩性の高い言葉は、ある種の人に強い印象を残すものだった。
物語の中で、理子の眼差しを通して語られる世界は透徹した美しさを持っている。しかしその美しさは、ある秩序のうえでしか成立しない。そしてその秩序は誰とでも共有できるものではない。もどかしくて、胸の奥がチリチリする、このリアリティ。
まずはじめに物語を選ぶのは、もちろん読者だ。しかしその先で物語に試され、選ばれるのもまた読者なのだ。これからどう展開するのか、全く読めない。けれどそれが楽しみでならない。