第三十四幕:夜華に舞う虹

幼い頃は花火大会や夜店に心躍ったりしたけど、ここ数年はご無沙汰だった。その気になれば花火を見にゆく事だって出来たはずだけど、人が多い所で写真を撮影するのを拒もうとする自分が居た。写真を撮影する事を考えなければ良いのかも知れないけど・・・。でも、今日は今までと違ってとても楽しみにしている。七夏ちゃんたちに感謝しなければならないな。


七夏ちゃん、天美さん、高月さんの三人は浴衣に着替えている。その間に俺は写真機の準備と確認を行っておく。自分の部屋に荷物を取りに2階へ上がった時、楽しそうな三人の声が聞こえてきた。会話の内容が気にはなったが、盗み聞くのは良くないので、そのまま居間へ戻って七夏ちゃん達を待つ。


心桜「あ! お兄さん!」

時崎「え!? あっ!」

心桜「あはは! 絶句してる!」

時崎「なっ!」

心桜「慣れないと、ちょっと恥ずかしいね」


初めて見る天美さんの浴衣姿。いや、浴衣姿なら民宿風水の浴衣姿は見てはいたけど、今の天美さんの華やかな浴衣は、普段のイメージと大きく異なった。赤と橙を基調とした少し派手な浴衣だけど、膝くらいまでしかない短い丈に目を奪われる。


時崎「天美さん、その浴衣、膝丈が結構短いね」

心桜「そだね。今はこういう動きやすい浴衣もあるみたいだね!」

時崎「なるほど、動きやすさか・・・天美さんに良く似合ってると思うよ」

心桜「そうでしょ! ありがと!」


天美さんは手に持った下駄をその場で履いて見せてくれた。


心桜「見よ! これで、完全体だっ!」

時崎「え!?」


天美さんは、その場でポーズを取った。これは・・・そういう事か!


時崎「んじゃ、天美さん、そのままで!」

心桜「~♪」


俺は、華やかな天美さんの浴衣姿を一枚撮影した。


時崎「ありがとう! 天美さん!」

心桜「いやいや、こちらこそ!」

時崎「でも、ここは土足禁止だよ!」

心桜「下駄は初回限定で土禁免除だよ!」

時崎「まあ、確かにそうだけど」

心桜「この下駄はまだ、外の世界を知らない箱入り娘!」

笹夜「心桜さん! その言い方、なんとかならないかしら?」

心桜「あはは!」


天美さんに次いで、高月さんも姿を見せた。


笹夜「時崎さん♪ お待たせしました♪」

時崎「た、高月さん!」

心桜「あっ! お兄さんどもった!」

時崎「うっ!」


高月さんの浴衣姿は、優しい緑色基調で、天美さんの浴衣とは違う上品さが漂ってくる。裾丈も足首まで届く一般的な浴衣だ。控えめな髪飾りと相まって高月さんのイメージに良く似合っていると思う。


笹夜「おかしくないかしら?」

時崎「とても上品で、高月さんのイメージとよく合っていると思うよ!」

笹夜「まあ♪ ありがとうございます♪」

心桜「笹夜先輩も一枚撮ってもらうといいよ! お兄さん!」


天美さんが写真を撮るポーズをする。


時崎「あ、ああ。高月さん!」

笹夜「はい♪」


高月さんは、特にポーズを決める訳ではなかったけど、それが高月さんらしい所でもある。自然で上品な高月さんを一枚撮影した。


時崎「ありがとう! 高月さん!」

笹夜「はい♪」

心桜「つっちゃーは?」

笹夜「もうすぐだと思います♪」

心桜「お兄さん!」

時崎「え!?」

心桜「つっちゃーが、どんな浴衣か予想できる?」

時崎「七夏ちゃんの浴衣姿か・・・そうだな・・・」


七夏ちゃんがどんな浴衣姿なのか・・・それはつまり、七夏ちゃんの好みを理解できているかどうかという事になる。これまでの七夏ちゃんの行動や好みを振り返る。セブンリーフが好きだから若葉色基調かと思ったけど、高月さんが緑色基調の浴衣姿だから今回はそれはないだろう。他に思い付くのは・・・七夏ちゃんは何色が好きかという事が大きく影響するはずだ。


<<七夏「えっと・・・私は、この優しい緑色がいいかなって、思ったんですけど、こっちの青色も可愛いなって・・・でも、青色のは持ってるから・・・」>>


目を閉じて考えていると、何故か七夏ちゃんが水着を選んでいた時の記憶が蘇った。他にも白地に青いラインのワンピース姿、お部屋でうたた寝していた時の姿・・・これらを統合すると---


笹夜「時崎さん!?」

心桜「お兄さん、結構悩んでるねー」

時崎「七夏ちゃんは、青色の浴衣だと思う!」

七夏「え!?」


目を開けると、浴衣姿の七夏ちゃんが居た。浴衣の色は青色を基調とした涼しそうな印象で可愛い。


笹夜「まあ♪」

心桜「おお! お兄さん! すご!」

七夏「えっと・・・」

時崎「七夏ちゃん! 思ったとおり、とってもよく似合ってるよ!」


本当は「よく似合ってて可愛い」と言いたかったけど、言えなかった。


七夏「ありがとです☆」


七夏ちゃんの浴衣姿も裾丈は長く、一般的な浴衣姿と言える。普段の民宿風水の浴衣姿との共通する所もあるような、安心感を与えてくれる素敵な浴衣だと思う。


心桜「はい! つっちゃー! こっち!」

七夏「え!?」

心桜「お兄さんっ!」

時崎「了解! 七夏ちゃん!」

七夏「は、はい☆」


俺は、七夏ちゃんの浴衣姿を撮影した。


心桜「んで、笹夜先輩!」

笹夜「え!?」

七夏「ひゃっ☆ こ、ここちゃー☆」

心桜「お兄さん! もう一枚!」

時崎「ああ!」


天美さんが、七夏ちゃんと、高月さんを引き寄せて三人一緒になったところを撮影した。


心桜「ありがと! お兄さん!」

七夏「くすっ☆」

凪咲「あら! 三人とも、とっても素敵ね♪」

笹夜「ありがとうございます♪」

凪咲「心桜さんの浴衣は、裾丈が短くて珍しいわね」

心桜「はい! 動きやすさ重視です!」

七夏「今は、ここちゃーみたいな浴衣も人気みたいです☆」

心桜「これで、犬に裾を噛まれる事もないっ!」

笹夜「まあ! 心桜さん・・・それで丈の短い浴衣を?」

七夏「ここちゃー、気にしなくてもいいよ☆」

心桜「あはは! 今のは、そんな事もあったなーってだけで、どっちにしても動きやすい方がいいから!」

凪咲「柚樹君」

時崎「はい」

凪咲「七夏達のこと、よろしくお願いしますね」

時崎「はい! 任せてください!」

心桜「お兄さん! 頼りにしてるよ!」

笹夜「時崎さん、よろしくお願いします♪」

七夏「柚樹さん、よろしくです☆」

時崎「ああ! それじゃ!」

心桜「待ってろよ! 花火~!」

七夏「くすっ☆」


写真機を持って歩くのと、華やかな三人の様子を見ながらだと、自然と三人の後を付いてゆく形となる。七夏ちゃんが時々、俺の事を気遣ってくれる。この構図、以前、海に出掛けた時の事を思い出す・・・ん?

なんか、天美さんが蛇行というのだろうか? ジグザグと斜めに歩いているようだけど、これは?


時崎「天美さん、どうしたの?」

心桜「ん? 暑いから日影をなぞってただけ」

七夏「くすっ☆」

時崎「日影!?」

心桜「っそ!」

そう言うと天美さんは、長くなった電柱の影をなぞるように歩いては、次の電柱の影へ身を重ねる・・・それが結果的にジグザク歩きになっていたようだ。

時崎「なるほど」

笹夜「心桜さん、危ないですよ」


天美さんの事をを心配して高月さんが軽く注意をする。


心桜「あはは! 大丈夫ですって!」

七夏「昔みたいに家の近くの商店街でも、夜店があればなぁ☆」

笹夜「七夏ちゃんのお家の近くで夜店があったのかしら?」

七夏「はい☆」

心桜「そう言えば、昔はあったよね? いつから無くなったんだっけ?」

七夏「私たちが中学1年生の頃だったかなぁ?」

心桜「そんなに前の事でも無いんだよね?」

七夏「今は、駅前の商店街で夜店を行うようになりました」

笹夜「そうなの・・・」


七夏ちゃんは昔の事を想ってなのか、少し寂しそうな表情に思えた。


心桜「でもさ、駅前だってそんなに遠い訳じゃないし、夜店の規模も大きくなって花火も見れるようになったからね!」

七夏「はい☆」


七夏ちゃんたちの幼い頃の事を俺は知らないけど、以前に凪咲さんが見せてくれたアルバムの幼い七夏ちゃんの姿と、今のお話を重ねて考える。だけど、幼い頃の七夏ちゃんの笑顔を俺は知らないから、今の七夏ちゃんの笑顔をさらに重ねるしかない。何度も記憶を重ねると、もうそれは本当の思い出ではなく、都合良く合成された思い込みとなってしまう。凪咲さんが俺の撮影した笑顔の七夏ちゃんを見るまで、もしかすると凪咲さんは幼い頃の笑顔の無い七夏ちゃんの写真と、凪咲さんの記憶の中の七夏ちゃんの笑顔とを差し替えて見ていたという事になるのか・・・凪咲さんの涙の意味を少しだけ理解できたような気がする。


七夏「柚樹さん?」

時崎「え?」

七夏「どしたの?」

時崎「ああ、なんでもない」


七夏ちゃんが気にかけてくれる。三人の後ろを歩くのは、俺にとっては華やかで良いのだけど、一般的視点では問題なのかな? その事を読まれたかのように、俺の隣を七夏ちゃんが寄り添うように合わせてくれた。七夏ちゃんに心配をかけるような事にならないよう、気を付けなければならないな。


七夏「くすっ☆ 」

心桜「よっ! ご両人!」

笹夜「まあ♪」

時崎「え!?」

七夏「・・・・・」


・・・この場合、からかってきた天美さんを、高月さんが注意してくれそうな気がしたけど、高月さんも天美さん寄りの状況だ。


時崎「なんて返せばいいのだろうか?」

七夏「え!?」

心桜「お兄さん! 声に出てるよ!」

時崎「声に出してるんだよ!」

心桜「あはは!」


三人は、お互いにそれぞれの相手が孤立しないよう、気を遣っている。その中に俺も加わっていいのだろうか?


心桜「駅前はさすがに、人が多いね!」

笹夜「お昼頃は、まだそんなに人も多くは無かったのですけど」

時崎「はぐれないように気をつけないと・・・七夏ちゃん!」

七夏「はい☆」

時崎「何か見てみたいお店とかある?」

七夏「えっと、どんなお店があるか分からないから順番に見るのがいいかな?」

時崎「了解!」


夜店の会場に付くと、多くの人がいて混みあっている。三人の浴衣姿はとても目立っていたと思っていたけど、周りに浴衣姿の人が多い為、夜店の舞台と上手く馴染んでいる。逆に私服の俺の方が浮いているような気がした。


心桜「お兄さんも、浴衣で来れば良かったかもね!」

時崎「今、そう思ったりしたよ」

笹夜「時崎さんの浴衣。似合うと思います♪」

時崎「ありがとう、高月さん! 次に来る事があれば、浴衣を考えてみるよ」

七夏「え!?」

笹夜「はい♪」

時崎「それにしても、何から見て回るか・・・だけど」

心桜「まずは食べ物からかな!?」

時崎「天美さん、お腹すいたの?」

心桜「あはは! まあ、それもあるけど、食べ物系を後に回すと手が塞がるからね!」

時崎「手が塞がる?」

心桜「っそ! 例えば風船ヨーヨーとか先に遊ぶと---」

時崎「なるほど!」

心桜「昔、つっちゃーが先に風船ヨーヨー始めて、後でたこ焼きを食べにくそうにしてたよね!」

笹夜「まあ!」

七夏「もう・・・ここちゃー!」


天美さんから、昔の七夏ちゃんの事が聞けて嬉しく思う。やはり、七夏ちゃんの事を引き出すには天美さんの力が必要だと思った。


時崎「あ、そうそう! 凪咲さんから、今夜のお夕食代とおこずかいを預かってるから、会計は全て俺に任せて!」

七夏「え!? お母さんが?」

時崎「ああ! 俺も驚いたくらい、充分頂いてるから! みんなで、楽しんでほしいって!」

心桜「うわぁ~い!!」

笹夜「いいのかしら?」

時崎「高月さんもご遠慮なく!」

笹夜「ありがとうございます♪」

心桜「でも、お兄さん、凪咲さんからって言わない方が株上がったかもね!?」

時崎「黙ってても、いずれ分かる事だよ」

笹夜「話された事で、時崎さんの株は上がったと思います♪」

時崎「そ、そうかな?」

笹夜「ええ♪」

七夏「・・・・・」

時崎「七夏ちゃん? どうしたの?」

七夏「え!? いえ、何でもないです」

笹夜「?」

心桜「たこ焼き、焼きそば、いか焼き、お好み焼き・・・色々あるね~。笹夜先輩! どれにします?」

笹夜「少し喉が渇いたかしら?」

心桜「あ、かき氷があるよ! みんなでかき氷にしようよ!」

時崎「了解!」

心桜「あたし、イチゴ!」

笹夜「では、メロン味をお願いします♪」

七夏「えっと、この青いラムネ味をひとつ、柚樹さんは?」

時崎「俺? そうだな・・・みぞれ味で」

七夏「くすっ☆」


三人、それぞれの「かき氷」を頼んで、会計を済ませる。偶然なのか、三人の浴衣の色とかき氷の色とが一致しているのが印象的だったので、そのまま三人を撮影した。


心桜「お! お兄さん!?」

時崎「綺麗に揃ったなーと思ってね!」

心桜「揃うって何が?」

時崎「浴衣の色と、かき氷の色!」

七夏「くすっ☆」

笹夜「まあ♪」

心桜「ホントだ! お兄さんもだね!」

時崎「あ! 確かに、みぞれと白系のシャツか・・・」

七夏「みんな一緒です☆」


七夏ちゃんも普段どおりの笑顔で楽しんでくれているみたいで少し安心する。というのは、先ほど七夏ちゃんが少しだけ見せた影の表情・・・以前に高月さんが話してた事---


<<笹夜「上手く言えないのですけど、幸せと、少し不安を合わせたような感じ・・・かしら?」>>

<<時崎「不安!?」>>

<<笹夜「・・・はい」>>


もし、七夏ちゃんが不安に思う事があるなら、取り除いてあげたい。だけど、その事に気付いても、なかなかどうすれば良いのか分からないままだ。


心桜「お兄さん!」

時崎「え!?」

心桜「かき氷、早く食べないと、溶けちゃってるよ!」

時崎「あ、ああ」


確かに後半は、氷ではなく、甘く冷たい砂糖水となっていた。


その後、三人は、たこ焼き、焼きそば、お好み焼きをそれぞれ注文して、お互いに分け合って楽しんでいた。


七夏「あっ☆」

時崎「七夏ちゃん!? りんご飴か!」

七夏「はい☆」

時崎「ひとつ買ってみよう!」

七夏「え!? あっ! 柚樹さん!」

時崎「はい! 七夏ちゃん!」


七夏ちゃんに、りんご飴を手渡す。


七夏「えっと、ありがとです☆」

時崎「りんご飴と浴衣姿は絵になるよね! 一枚いいかな?」

七夏「くすっ☆ はい☆」

心桜「お! りんご飴か!」

七夏「はい☆ ここちゃーもどうぞです☆」

心桜「え!?」


七夏ちゃんが、りんご飴を天美さんに手渡す。


時崎「天美さん!」

心桜「なるほど、そういう事ね!」


そう話した天美さんは、りんご飴を持ってポーズを決めた。その様子を切り取る。


心桜「次は、笹夜先輩!」

笹夜「まあ♪ では♪」


天美さんから、りんご飴を受け取った高月さんは、とても上品に見えた。その様子をしっかりと納めた。


笹夜「はい♪ 七夏ちゃん♪」

七夏「くすっ☆」

心桜「りんご飴は夜店の定番だね~」

時崎「だけど、夜店でしか見ないよね?」

笹夜「そう言われると、見かけないかしら?」

七夏「綺麗な飴なのに」

心桜「でも、殆どりんごで飴ちょっとだよね?」

七夏「え!? えっと・・・」

心桜「つっちゃー、それ全部食べきれる?」

七夏「・・・が、頑張ってみます☆」


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


七夏「うぅ・・・」

時崎「七夏ちゃん、無理しなくていいよ」


七夏ちゃんは、りんご飴を頑張って半分くらいは食べたみたいだけど、やっぱり一人では大変だろう。


七夏「でも・・・」

時崎「残りは俺が貰ってもいいかな?」

七夏「え? いいの?」

時崎「ああ。俺が勢いで買ったみたいな所もあるから、まかせて!」

七夏「ありがとう・・・です☆」


七夏ちゃんは、半分になったりんご飴を手渡してくれた。これって間接・・・と思ったりしたが、以前にも「あさりのおすまし」であった事なので、何を今さらと自分に言い聞かせる。俺がりんご飴を頂いている間、七夏ちゃんは少し申し訳なさそうな、恥ずかしそうな、ほのかに嬉しそうな・・・なんとも言えない表情を浮かべていた。


心桜「金魚すくいっ! ・・・は、やめとこう」

笹夜「まあ! 心桜さん好きそうな気がしましたけど」

心桜「あはは! 昔さ、つっちゃーと一緒に金魚すくって、あたしの家で金魚を飼ってたから、つっちゃーの分も一緒に持って帰ったんだけど、他の金魚が全て駆逐されたんだよ・・・食い意地が凄くてさ」

時崎「そんな事があったの?」

心桜「っそ。だから、フナ型の金魚は要注意なんだよね!」

時崎「なるほど」

心桜「って事で、こっちのスーパーボールすくいなら良いかもね!」

時崎「天美さん、チャレンジしてみる?」

心桜「そだね! んじゃ!」


スーパーボールすくい中の天美さんを撮影した。


心桜「大量だね~♪」

時崎「さすが天美さん!」

心桜「すくうのではなくて、流れてくるのを受け止めるのがポイントかな?」

時崎「そうなんだ」


天美さんは、獲得したスーパーボールと、景品のスーパーボールとを交換するようだ。


心桜「すみません。4個貰うとしたら、どの大きさになりますか?」


そう話して、スーパーボール4個を七夏ちゃんと高月さん、そして俺にも分けてくれた。


時崎「ありがとう。天美さん!」

心桜「いえいえ! そう言えば、これも昔、つっちゃーと一緒に遊んで、つっちゃーの景品のスーパーボールは、なんとラグビーボール型だったんだよね!」

七夏「あっ・・・」

心桜「んで、それを、あたしが地面にバイーンってしたら、見失っちゃってさ・・・ゴメン」

七夏「くすっ☆ 私は大丈夫です☆」

心桜「あの時は、必死で探してるあたしに対して、つっちゃーは放心状態だったよね」

笹夜「なんとなく、分かります♪」

七夏「あの時、ここちゃーが代わりにくれたのは、大切に持ってます♪」

心桜「そっか。フナ型、ラグビー型には警戒せよ!」

七夏「くすっ☆」

心桜「ゲームソフトかぁ・・・これは当たんないだろうなぁ~」

時崎「天美さん、挑戦してみる?」

心桜「いや、いい。やめとくよ」

時崎「お! 堅実だね!」

心桜「ゆう・・・あ、あたしの弟が結構はまってさ。その後、夜店で何も買えなくなったんだよ」

時崎「そ、そう」

心桜「結局、あたしが弟の分まで面倒見る事になってさっ!」

時崎「なかなか大変なんだね」

笹夜「あら?」

時崎「高月さん、何か気になるのあった?」

笹夜「このペンダント、綺麗です♪」


ペンダントはムーンストーンと記されていた。


時崎「ムーンストーン。月の石って、こんなに綺麗なの?」

笹夜「え!? あ、これは月の光のような石ですので、ムーンストーンって呼ばれてます♪」

時崎「・・・ごめん」

笹夜「いえ・・・」

時崎「ちょっとボケてみただけで・・・」

笹夜「まあ!」


ボケてみたのは俺の作戦であり、普通に買ってあげると話しても、高月さんは遠慮をしてくるだろう。


時崎「お詫びに、これ買ってあげるよ!」

笹夜「え!? でも・・・」

時崎「よく似合うと思うから、俺からのお願いで!」

笹夜「・・・ありがとうございます♪」

七夏「あ、笹夜先輩、素敵です♪」

笹夜「ありがとう、七夏ちゃん♪」

心桜「大判おせんべいがあるっ!」

時崎「お、懐かしいな! よし! 2枚ください」


大判おせんべいは、自分の名前を伝えると、ソースで名前を書いてくれ、その上に青海苔を振りかけてくれるのだが---


店主「お名前は?」

時崎「ベタでお願いします!」

心桜「お!? お兄さん!?」

時崎「なに?」

心桜「お兄さんの名前って『ユタ』だよね?」

時崎「そうだけど?」

心桜「今さ『ベタ』って言わなかった?」

時崎「ああ」

店主「あいよ! お待たせ!」

時崎「どうも!」

心桜「こ、これは!?」


「ベタ」と言うと、名前ではなく、おせんべいの表面全てにソースを塗って青海苔を振りかけてくれる「ベタ塗り仕様」となる。


時崎「この『ベタ』が一番、お得な気がする!」

心桜「し、知らなかった!」

時崎「はい! 天美さん! 一枚どうぞ!」

心桜「わぁー! ありがとー! ベタお兄さんっ!」

時崎「んなっ!」

心桜「あははっ!」


やっぱり、天美さんの方が一枚上のような気がする。


心桜「笹夜先輩! 大判おせんべいどうぞ!」

笹夜「まあ♪ ありがとう♪」


天美さんは、高月さんに半分大判おせんべいを手渡す。俺も七夏ちゃんにおせんべいを半分に割って渡す。


七夏「ありがとです☆ これって」

心桜「ベタお兄さんからだよ!」

笹夜「え!?」

七夏「ベタお兄さん?」

時崎「天美さんっ!」

心桜「あはは! 言い間違い・・・ユタお兄さんでした!」

七夏「ユタお兄さん☆ ありがとです☆」

時崎「え!?」

七夏「くすっ☆」

心桜「お! 飴細工があるっ! つっちゃー!」

七夏「はいっ☆」


天美さんに手を引かれ、七夏ちゃんたちは飴細工店へ駆けてゆく。


笹夜「二人ともっ!」

時崎「まあ、楽しそうだから、多少はいいんじゃないかな?」

笹夜「走るとあぶないですから」


確かに、天美さんは走りやすそうな浴衣だけど、七夏ちゃんは気を付けなければ転んでしまうかも知れないな。


時崎「人も多いから、あまり離れないように気を付けないと」

笹夜「ええ♪」


俺がそう話したからかどうか分からないけど、高月さんは少し俺の傍に寄ってきた。その時---


ドンッ!


笹夜「きゃっ!」


突然、大きな音に驚いた高月さんは、俺の腕に掴まってきた。高月さんの表情を大きな華が照らし出す。


笹夜「すっ、すみません!」

時崎「高月さん!」


恥ずかしさと申し訳なさの混じった表情で見つめてくる高月さんに対して、俺は夜空を指差し見上げた。


時崎「俺じゃなくて花火!」

笹夜「え!? ・・・はい♪」


天美さんと七夏ちゃんがこちらに戻ってきた。


心桜「花火! 始まったね!」

七夏「はい☆ とっても綺麗です☆」


色とりどりの花火の光は、三人を様々な色に変えてくれた。瞳の色が変わる「ふたつの虹」を持つ七夏ちゃんを不思議に思っていたけど、色が変わる現象そのものは世の中に沢山ある。珍しがる事は、見方によっては差別に繋がってしまう。他人と異なる特徴を気にしてしまうのは、誰にだってあるはずだ。三人と俺は、言葉無く花火の色に染まっていた。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


心桜「ふー、花火終わりかな?」

七夏「とっても綺麗でした☆」

笹夜「ええ♪ 音がとっても大きくて驚きました♪」

心桜「笹夜先輩! 飴細工店で凄く綺麗な飴があったよ!」

笹夜「そうなの?」

心桜「最後にみんなで『運試し』やってみない!? もちろん、お兄さんもっ!」

時崎「おっ! いいね!」


皆で飴細工店に向かう。そこに並ぶ飴は、とても細かい造形の動物や乗り物の飴・・・まるでガラス細工で出来たように綺麗だった。


時崎「これは、凄いな!」

心桜「でしょ! このくじ引いて、当たったら貰えるんだって!」

時崎「よし! すみません! 四人分お願いします!」

店主「ありがとう! では、こちらから引いてください」

時崎「七夏ちゃん! 高月さん!」

心桜「いっせーのーでっ!」


筒に入った棒状のくじを、四人一斉に引いた。


心桜「あら~」

七夏「えっと・・・」

時崎「これは・・・」

笹夜「まあ!」

心桜「さ、笹夜先輩のだけ、棒の先の形が違う!」

店主「お、お譲ちゃん! 当たりだよ! おめでとう! この中から好きなの選んで!」

笹夜「ええっと・・・」

七夏「笹夜先輩☆ 凄いです☆」

店主「他の三人は、残念! こっちからどうぞ」

心桜「あははーはぁ・・・」


こうして、高月さんは、見事にガラス細工のような飴を手にした。高月さんが選んだ飴は孔雀だろうか、長い羽はたたまれているが、その姿は優美で高月さんのイメージと重なった。高月さんが翼を広げて羽ばたく姿・・・百貨店でのピアノ演奏を思い浮かべる。

高月さん以外は、はずれの飴・・・これは、どう表現すればいいのだろうか? 割り箸の先に水飴を付けて、薄く丸い麩菓子で挟んだような物だ。


時崎「この『はずれ飴』も、りんご飴と同じく夜店でしか見かけないな」

心桜「そだねー」

七夏「ふわふわしてて可愛いです☆」

笹夜「すみません、私だけ・・・」

心桜「いえいえ、絵的には今の状態がいいんじゃない?」

時崎「絵的か・・・よし! 一枚撮るよ!」

七夏「はい☆」


俺は、飴を持つ三人を撮影した。


時崎「高月さん! 笑って!」

笹夜「は、はい!」


飴を持つ三人をもう一枚撮影した。


心桜「ありがとね。お兄さん!」

七夏「他に見ておきたいお店、ありますか?」

笹夜「私は十分に楽しめました♪」

心桜「あたしも! つっちゃーは?」

七夏「私も、たくさん楽しめました」

時崎「じゃ、風水に戻りますか」

七夏「はい☆」


夜店を見ながら駅前へと向かう。帰る途中、俺はある夜店に目が留まる。


七夏「柚樹さん? どしたの?」

心桜「ん? お兄さん?」

時崎「ちょっと、すまない。あれを買ってきていいかな?」

笹夜「はい♪ では、ここで待ってます♪」

時崎「ありがとう!」


俺は夜店で「プチカステラ」を買った。


心桜「お兄さん、プチカステラ?」

時崎「そう」

笹夜「まあ♪ 時崎さん、お好きなのかしら?」

七夏「・・・・・」

時崎「まあ、好きだけど、これは凪咲さんへのおみやげにと思ってね」

心桜「お兄さん、なかなかできてますなぁ!」

時崎「まあ、凪咲さんからご支援を頂いてるからね。勿論みんなの分もあるよ!」

心桜「わぁーい!」

七夏「柚樹さん!」

時崎「え!?」

七夏「色々、ありがとうです☆」

笹夜「~♪」


風水へ戻る帰り道、辺りはすっかり暗くなっていた。花火大会が終わった後の少し寂しい感覚・・・三人の浴衣を照らす光も少なくなって、華やかさが控えめになった事も寂しい感覚へと繋がってゆく。その代わり、静かな夜道を歩く三人の足音と、虫の音が心地良く、今度は耳を楽しませてくれる。


心桜「浴衣で夜店は久々だったけど、楽しかった!」

七夏「はい☆」

笹夜「私も楽しかったです♪」

心桜「そう言えば、笹夜先輩と一緒に夜店は初めてですよね!」

笹夜「ええ♪ 昔の七夏ちゃんと心桜さんのお話も聞けました♪」


その頃の七夏ちゃん達と高月さんは、まだ出会ってなかったんだな。


七夏「ここちゃー、あんまり昔の事は・・・」

心桜「え!? いつもとそんなに変わんないでしょ?」

七夏「そうじゃなくて、柚樹さんも一緒だから・・・」

時崎「俺!?」

七夏「えっと、昔の事は恥ずかしいから・・・」

時崎「じゃ、俺も昔の事を七夏ちゃんに話すよ!」

七夏「え!?」

時崎「それじゃ、ダメかな?」

七夏「くすっ☆ また、機会があれば♪」

心桜「つっちゃー、今訊かないの? チャンスだよ!」

笹夜「心桜さん!」

心桜「え!? あ、そういう事ね!」

時崎「?」

七夏「・・・・・」


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


七夏「ただいまぁ☆」

凪咲「お帰りなさいませ」

笹夜「ただいま・・・でいいのかしら?」

心桜「いいと思います! ただいま!」

七夏「くすっ☆ 」

時崎「ただいま。凪咲さん! これ!」

凪咲「あら? カステラかしら?」

時崎「はい、よかったらどうぞ」

凪咲「ありがとうございます♪」

七夏「花火、とっても綺麗でした☆」

笹夜「ええ♪」

心桜「夜店も楽しかったよー!」

凪咲「よかったわ。お風呂の準備、できてますから、みんなで流してくださいませ」

七夏「はーい☆」

凪咲「柚樹君は後でいいかしら?」

時崎「はい」

心桜「んでは、早速お風呂と参りますか?」

七夏「くすっ☆  柚樹さん、また後で☆」

時崎「ああ!」

笹夜「失礼いたします♪」

心桜「お着替え、お着替えっと!」


三人は、2階の部屋へと移動する。


時崎「凪咲さん!」

凪咲「はい?」

時崎「今日は、ありがとうございました。これ!」


俺は、凪咲さんから預かっていたお小遣いの残りを返す。


凪咲「あら? 残りは柚樹君のお小遣いにって話さなかったかしら?」

時崎「え!? でも結構な金額ですので」

凪咲「いいのよ! これからも七夏の事、よろしくお願いします」

時崎「・・・ありがとうございます。では、七夏ちゃんたちの為に、大切に使わせて頂きます!」

凪咲「ええ♪ 是非♪」

直弥「ただいま」

凪咲「お帰りなさい、あなた」

時崎「お帰りなさい!」

直弥「おお! 時崎君! 信号機の件、ありがとう! 直接お礼が言えてなくてすまない。凪咲から聞いてるよ」

時崎「いえ。俺自身も楽しめましたので!」

直弥「そうか!」

時崎「あと、無線ネットワークの設置と設定も済ませてますので」

直弥「時崎君は仕事が早いな!」

時崎「いえいえ。あ、無線ネットワークのアクセス用IDとパスワードは、直弥さんのお部屋の机の引き出しにメモを入れてます。凪咲さんにも同じメモを渡しています」

直弥「何から何まですまないね」

時崎「それは俺も同じです。凪咲さんや七夏ちゃんには、いつもお世話になってますので」

凪咲「ありがとうございます。柚樹君。あら? ナオ、その紙袋は?」

直弥「これかね? 駅前近くで売ってたんだ。今日は花火大会だったからね。プチカステラのおみやげだ」

凪咲「まあ!」

時崎「・・・・・」

直弥「!? 時崎君? プチカステラは苦手だったかい?」

時崎「いえ、好きですけど・・・」

凪咲「これ・・・柚樹君も同じおみやげを・・・」

直弥「そ、そうか!」

凪咲「ありがとう。二人からおみやげをもらえて嬉しいわ♪」

直弥「七夏は?」

凪咲「今はお風呂よ。今日は七夏のお友達も一緒。花火大会とお泊まりの日よ」

直弥「そうだったな。七夏の外浴衣は見れたのかい?」

凪咲「ええ♪ お友達も一緒でとっても可愛いかったわ♪」

直弥「そうか・・・僕も七夏の外浴衣姿を見たかったな」

時崎「写真を、撮ってますのでそれでよければ」

直弥「写真! そうか! 今年は時崎君が居て写真があるんだったな! 是非! お願いするよ!」

時崎「はい! 後ほど、アルバムにまとめてお渡しします!」

直弥「そうか! 楽しみにしてるよ!」

凪咲「私も楽しみだわ♪」

時崎「では、今日の撮影分もまとめますので、部屋に戻ります」

凪咲「はい♪」


部屋に戻って今日撮影した七夏ちゃん達の画像を、写真機からMyPadへと転送する。MyPadの大きな画面に映し出された七夏ちゃん達の浴衣姿は、記憶の中にあるのだが、華やかで嬉しくなってしまう。凪咲さんや直弥さんもきっと喜んでくれると思う。お部屋で三人別々に撮影していた浴衣姿の写真の輪郭を大まかに切り取って、三人一緒に並べてみると、より一層華やかさが増した。後で撮影した三人一緒の浴衣姿とはまた違う華やかさだ。


時崎「これは華やかでいいな! そう言えば!」


更に、ひとつのりんご飴を順番に持って撮影した三人も同じように合わせて見る。三人がみんな一緒にりんご飴を買ったような構図となった。ざっくりと切り抜くのはお手軽だけど、切り取った縁が気になるので輪郭の線を少し太くしてみた。


時崎「そんなにおかしくないから、これはこれで保存しておこう!」


「七夏ちゃんへのアルバム」の輪郭の切り取りは、もっと時間を駆けて自然な状態に調整する必要がある。その作業も少しずつ進めてゆく。


コンコン! と扉が素早く鳴った。この音は、七夏ちゃんではないな。


心桜「お兄さん!」

時崎「天美さん。どうぞ!」


扉が開いて、天美さんが姿を見せる。


七夏「柚樹さん☆ お風呂どうぞです☆」


天美さんの後から七夏ちゃんも顔を見せてくれた。二人とも見慣れた風水の浴衣姿だ。


時崎「ありがとう。高月さんは?」

心桜「笹夜先輩?」

七夏「えっと、お部屋で髪を整えていると思います☆」

心桜「お兄さん、笹夜先輩の事が気になるの?」

七夏「え!?」

時崎「え!? あ、いや。いつも三人一緒だから」

七夏「くすっ☆」

時崎「じゃ、お風呂で流してくるよ!」

七夏「はい☆」


このままだと、天美さんの追撃が予想されたので、俺はさっと部屋を片付けて風呂場へと向かう。


七夏「柚樹さん☆」

時崎「え!?」

七夏「えっと、このままお布団、準備しておきますね☆」

時崎「ありがとう。七夏ちゃん!」

心桜「あたし、このままお部屋、ガサ入れしておくね!」

時崎「しなくていいっ!」

心桜「あはは!」

七夏「もう! ここちゃー」

心桜「あたしも手伝うよ!」

七夏「はい☆」


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


お風呂に浸かりながら、今日一日を振り返る。七夏ちゃんと同じ香りに包まれていると、とても心地よい。夜華に舞う「ふたつの虹」は本当に可愛かった。心残りなのは、七夏ちゃんへ「可愛い」と言葉に出来なかった事。七夏ちゃんの「可愛い」に対する反応がよく分からない。このままだと息が詰まりそうになる。何が原因があるはずだ。


手早くお風呂を済ませて居間へ戻る。七夏ちゃんたち三人も、居間でのんびりと過ごしているみたいだ。


七夏「あ、柚樹さん☆」

時崎「七夏ちゃん! お疲れさま」

七夏「くすっ☆ 冷たいお飲み物を用意しますね☆」

時崎「ありがとう!」

心桜「お兄さん、お疲れー!」

時崎「どうも!」

心桜「ほらほら! 探してた笹夜先輩もここに居るよー」

主 &笹夜「え!?」

心桜「さっき、お兄さん『高月さんは?』って話してたよ?」

笹夜「まあ♪ 時崎さん、何かしら?」

時崎「え!? あ、いや。特に深い意味は無かったんだけど」


天美さんのタスクが残っていた。しっかりと強制終了させておくべきだった。


心桜「意味もなく、無意識に笹夜先輩の事が出てくるなんて!」

時崎「意味はある! 三人一緒じゃないのっていう意味が!」

笹夜「心桜さん!」

心桜「あはは!」

七夏「柚樹さん☆ 冷茶、どうぞです☆」

時崎「ありがとう」

笹夜「そう言えば、少し気になる事があります」

心桜「ん? 笹夜先輩? どうされました?」

時崎「高月さん?」


高月さんは携帯端末(スリムフォン)を手に取り、話を続ける。


笹夜「スリムフォンに『KAZAMI』っていうネットワーク名が表示されてて」

時崎「それは今日、七夏ちゃんの家に無線ネットワーク機器を設置したから、ゲストIDでアクセスできると思うよ」

笹夜「まあ♪ いいのかしら?」

七夏「えっと・・・」


七夏ちゃんがこっちを見てきた。


時崎「丁度、テストにもなるから、アクセスしてもらえると助かるよ。パスワードは同じKAZAMIで大丈夫だから!」

笹夜「はい♪」

時崎「どうかな?」

笹夜「あ、無事接続できました♪」

時崎「良かった」

心桜「風水も進化してますなぁー」

七夏「柚樹さんのおかげです☆」

時崎「明日、三人にアルバム作りの事で協力してもらいたいんだけど、いいかな?」

心桜「もちろん!」

笹夜「ええ♪」

七夏「ありがとうです☆」

時崎「じゃ、ちょっとその準備もあるから、これで!」

七夏「はい☆」

心桜「お兄さん、もう部屋に戻っちゃうの?」

笹夜「時崎さん、お忙しいみたいです」

時崎「とても、充実してるよ!」

笹夜「まあ! 良かったです♪」


部屋に戻って、早速アルバム制作作業を行う。元気な天美さん、お淑やかで上品な高月さん、そして、可愛い七夏ちゃんの写真を見て。なんとか七夏ちゃんへ「可愛い」と伝えて心から喜んでもらえる方法はないかを考える。天美さんや、高月さんの協力があれば、その理由もきっと、分かると思う。気にはなるけど、今は集中して「可愛い七夏ちゃん」のアルバム作りを進めるのだった。


第三十四幕 完


----------


次回予告


虹は、太陽があって生まれる光だと思っていた。


次回、翠碧色の虹、第三十五幕


「太陽よりも輝く虹」


ふたつの虹は、そうではなかったと改めて気付かされる事になる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る