綿あめの糸

 彼は綿あめの糸で巻いて彼女を閉じ込めたいと思ったのですが、それは無理な話でした。彼女はすり抜けてしまうでしょう。わかっていたので彼は彼女を閉じ込めようとはしませんでした。

 彼女は彼に要求します。

「足を三本、腕を三本、ちょうだい」

「僕の?」

「他に誰がいるっていうの?」

 一オクターブ高くなる彼女の声に、彼はため息をつきました。

 閉じ込めてしまえないなら出て行ってくれたらいいのにと思うのですが、本当にそうなってしまったら嘆き悲しむに違いありません。それもわかっていたので、彼は彼女の求めに応じて足と腕を差し出すのでした。




終わり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る