竜の骸布

作者 阿部屠龍/ウル

竜の骸を巡る物語は、坂を下るように加速する

  • ★★★ Excellent!!!

あらすじにも悪夢という単語が使われているように、物語をたどっていくと、決して幸福ではない結末の気配が死臭のように漂ってきます。
はじめはうっすらしていたそれは、ある事実が明らかになった瞬間にむせかえるような濃度になり、同時に、事態が恐れていた方向へと転がり落ちていくのです。

それでも一気に読んでしまったのは、きっと、重厚な描写の力に惹きつけられたからでしょう。
閉じた村の中で、人々にはそれぞれの背景があり、目的があり、感情がある。血が通う肉を持つがゆえに分かり合えないのではないかとさえ思わせるやるせなさは圧巻でした。
しかし、竜でもなく、確執そのものでもなく──本当はわかっていたことを口に出せなかったそれぞれの”おそれ”が、悲劇の本質であるようにも感じられました。

理性的な主人公には明確な目的があり、絶望的な状況の中でも、それが小さな希望となって物語を駆動します。
その結末を、どうか見届けてください。
物語の最後の一行まで。

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