ぬるま湯に。

オユ

ぬるま湯に。

鎮痛剤は身体に残りたがる。

現時点で昨日の夕方に偏頭痛のせいで飲んでしまった鎮痛剤がまだここにいる。

これまた厄介なもので、じわじわと違う痛みを運んでくる。

それでも飲み続けるのだ。


無意識下のスーパーは良くないと思う。

むしろ悪いとまで思う。

気がついたら飴ちゃんばかりのカゴを持っていたのだ。

この前は缶詰ばかり、その前は栄養補給食品ばかりだった。

非常食かって突っ込みたくなる。

そんなに災害対策の意識が強いわけでもない。

自分でも理解し得ない領域って存在するんだなぁと 無意識下のスーパーに来ると思ってしまう。

喉を一突き二突きしたいのかと思わんばかりの大量の棒付きの飴ちゃんがカゴには入っていた。

そんなことがしたいわけではないと意識が戻ってきたので、静かに棚に戻す。

こうやってスーパーに来ては入れて戻してを繰り返す。

毎回結局何も買えずじまいだ。

せっかく彼が買うものリストを書いてくれたっていうのに。


家に帰ると彼がいる。

本に夢中だからか、いつも上手くいかない買い物に ついて来てくれることはない。

読むことも書くことも上手なひとに、口出しなんかできるわけなくて それでも止まらない嫉妬だったりしてうんざりしてしまう。

それと同時に酷く悲しくなってしまい遣る瀬無い気持ちにやられる。


一度はただいまと言おうとしたが、またドアを押して出る。

抜けきらない鎮痛剤が鬱陶しい。

部屋から徒歩で行ける距離にあるコンビニにも公園にも満足している。

けれど、それは満ち足りていると言っていいものなのか。

ブランコを漕ぎながら考える。


もしかしたら、満足しているけれど それは物理的なもので満ち足りてはいないのかもしれない。

彼との関係も満足しているけれど、満ち足りてはいない。

決して それは満ち足りることがないかのように思えてならない。


 どうせ満ち足りないのだ

 死ぬまでずっと満ち足りないのだ

 なんなら死んでも満ち足りないのだ

 永遠性のある空間なのだ


あぁ、満ち足りたり足りなかったりくどいもんだ。

ただ一つ確信を抱けるとしたら、それは可しかないということだろう。

彼との関係は可なのだ。

可も不可もないみたいな言葉があるけれど、

そんな気持ちに一度たりともさせられたことがない。

させてしまったことはあるかもしれないけれど、そんなの知ったこっちゃない。

わたしは可だとしか思えない。


よし、ここまでたどり着けたらもう勝ちだ。

今日の記録はまずまずといったところだろう。

ぐるぐるしてしまったときのゴールは「可である」だといつの間にか自分の中で決まっていた。

あとは彼が迎えに来てくれるのをほんの少し待つだけだ。

ゴールにたどり着くまでの時間が短ろうと長かろうと いつもちょうどいいタイミングで現れる。

たまに何処からか見られているのではないか

と思ってしまうくらいにはぴったりなのだ。

しかし、見ていたところでゴールしたことはわからないだろう。

いや、でも彼ならばわかってしまうしまうのではないだろうか。


「なに、そんなにまにましてるの」

「してませんー」

「ふぅん」


そうやって さっきから居たかのように

隣のブランコに乗ってゆっくり漕ぎ始める。

このぬるま湯のようでぬるま湯ではないところに わたしはいつも甘えてしまう。

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