第61話

「にしても……

 かなりの被害じゃないのか?」


 そういったのは勇者コース最強候補のひとり馬神 焔。


「そうね……」


 その相方、シエラ・シエルがうなずく。


「まぁ、死人は少ないほうがいいから癒やすけど……」


 十三の顔には疲れが見える。


「お前、美神だっけ?大丈夫か?」


 焔が十三に尋ねる。


「大丈夫じゃないのはこの子たちだよ」


「でも――」


 シエラがそういいかけたとき。

 綺麗な歌声が聞こえる。


「♪きっと輝いてる―♪

 ♪ずっと輝いている――♪」


「なんだ?このロリボイスは……」


 セロが驚く。


「あいうさんの歌声」


 シエラが安堵する。


「あー。いつ聴いても癒やされるなぁ」


 焔が和む。

 十三の疲れが少しずつ取れていく。


「すごい。

 なんだろう。

 癒やされる」


 十三は、そういって気力と体力を取り戻すと。

 すぐに次の生徒たちを回復していった。


 助かった命はほんの僅か。

 助からなかった命が数多い。


 回復術を備えているものは十三とその他数名。

 助けれる命には限度があった。

 しかし、この事件のあと力を増した生徒たちが多かった。

 人々はこの事件のことを「灰色の授与式」と呼んだ。


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