第649話 因縁の相手.3
「ぐぅっ…!」
「てめぇ…っ!』
全力攻撃によって双方の体から血が吹き出した。だが、オレもシンゴも回復力が高い。即座に傷が塞がった。
「!」
振り下ろされる大剣。それを横に跳んで回避すれば、全力で振るったのであろうシンゴの大剣が深々と地面に突き刺さる。あまりの衝撃で地面をひび割れさせ、破片が飛び散った。
飛んでくる破片を氷を飛ばして相殺し、更におまけとばかりに回転を加えた巨大な氷をシンゴに向かって発射した。
「ナメんじゃねぇっ!!』
突然氷が解けて蒸発。辺りに水蒸気が立ち込め、視界を遮った。火ではない。なんだ!?
即座に粒子と風の帯の目に切り替えると、こちらに飛んでくる何かを感知した。
「大剣!?」
ゴウと避けた頬のすぐ横を通過した。
当たってはいない。だが、通過した側の頬と耳に細かい傷が付いた。すぐに傷は治るが…。刃に巻き付いている風は気を付けないと。
刃に当たってもいけないし、付近にいてもダメとか、難しいっ!
大剣が後ろの上半分が無くなった柱に突き刺さり、次の瞬間柱が爆発するように砕け散った。
「げっ」
なんだあれ、圧縮した風の塊でも内蔵してたのか。
飛んできた大量の欠片を反転の盾で防ぎながらシンゴの姿を探す。先程の爆発で水蒸気が流れて薄まったが、シンゴの姿がない。
どこにいった。
「!」
水蒸気の流れが変わり、全力で後ろに跳んだ、すぐ目の前に柱が突き刺さる。地面がめくり上がって、その衝撃の凄まじさを物語っていた。
自然な落下でこうなったのではない。
意図的にオレの真上に落としてきたような。シンゴか!
「アァアアアアア!!!!!」
「うぉお!!??」
雄叫びが聞こえて上を向くと、凄い勢いで柱がいくつもオレ目掛けて降ってきていた。
次々に柱が地面に突き刺さり土埃を上げる。
それをジャンプと反転の盾にて回避と防御で凌いでいれば、突如耳鳴りが降ってきた。
格子状の風の刃が、柱をいとも簡単にざく切りにして地面にめり込んだ。
モウモウと土埃が舞い上がる。
シンゴは呼吸を荒く、全力で攻撃した地面を睨み付けていた。
逃げ切る隙も与えないような連続的な攻撃を広範囲でやった。
想定よりもアイツが強くなっていた。
想像ではもう倒している頃だったというのに、一体いつテレポートなんて厄介な能力を手に入れたのか。
でも、テレポートしたとしても、あんな能力が連続で使えるわけがない。
きっと今頃そこら辺に転がっているはず。
動く気配はない。
よし。と、少し気を抜いた。
「やったか」
期待を込めて言った。
奥の手を使うこともなかった。これで、やっと──
シンゴの腹を雷の矢が貫いた。
「なっ!!?」
視界一杯に無数の雷が満たし、シンゴの体を貫いた。
盾に出来る大剣を引き戻すのが遅かった。
シンゴの命令で瓦礫の中から大剣が飛んできたが、それよりも早くライハの攻撃がシンゴへと襲い掛かっていた。
「こんなもので、オレが殺られるわけないだろう」
土埃が晴れると、全くの無傷のライハがこちらを睨み付けていた。
格子状の風の刃が降ってきた。
速度は早い。柱さえも豆腐のように簡単に切断していく。
確かに驚異だろう。
見えない風が、恐ろしい速度で物体を鱠斬りにしていくのだ。どこに逃げれば良いのかもわからず、あっという間に真っ二つ。
だけど、そんなものオレには無意味だ。
不可視が長所である風が、オレの目にはしっかりと見えている。
たとえどんなに格子の間隔が狭くても、風の格子の通過した場所にジャンプしてしまえば関係がない。
放った全ての雷がシンゴを貫いている、大剣を囮に使っていたのが仇だったな。
口から煙を吐きながら、信じられないという目でシンゴがこちらを見ていた。
纏威を発動し、一気に飛び上がってシンゴのいる上部が切断された以外は無事な柱の上へと辿り着いた。
回復が始まっても、神経を焼かれた痺れが残っているのか動きが鈍い。シンゴの目に恐怖の色が浮かぶ。
「今まで戦ってきた敵の攻撃に比べれば、お前の攻撃は生ぬるいんだよ!!!」
「ッ!!」
防御させる隙もなく斎主を振り切った。
胴体を袈裟斬りにされたシンゴの体から血が吹き出し、そこへ回転して威力を上げた踵蹴りを叩き込んだ。
一気に地面へと叩き付けられたシンゴ。そこへ向かって全力で跳び、更にシンゴを地面へとめり込ませた。
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