第573話 第二の門番.1

聳えた門。歪な六角形が色を変えながら重なりあい、細い鎖が蔦のように垂れ下がってる。


それを見て、何故だが鳥肌が止まらなかった。

なんだこれ。


え、なんだこれ。と、頭が混乱している。

強敵がいるとかそういうのではない。

オレがもっとも嫌悪するものがこの先にいる、と、頭が大音量で警告している。


「おい、大丈夫さ?顔色悪くね?」


アウソがオレの異変に気が付いたが、何でこうなってるのか分からないので小さく首を振るしかない。


「ほんとだ顔青い」


と、ラビ。


「ライハさん。貴方もですか?実は私も何故か嫌な予感がします…」


シラギクが小さく言った。同士がいた、と、シラギクを見ればオレよりも真っ青だった。その青さは流石にヤバくないか?

杖を思い切り抱き締め、なんとか落ち着こうと浅く呼吸をしている。


「し、シラギク?大丈夫か?回復魔法掛けようか?」


そんなシラギクを見てニックがワタワタとしている。

見てて面白い。アレックスもこっそり笑ってる。


「いえ、多分そんなんじゃ効かないものです。ですよね!ライハさん!?」


「え、は、はい!」


突然振られて吃驚したが、勢いに呑まれて返事をしてしまった。

でも多分そんなんじゃ効かないもので当たってる。





門に恐る恐る近づくと、軽く振動して扉が開いた。


どうぞ入ってくださいって感じか。


中に入ると真っ暗だった。ひんやりとしながらも何処か湿っぽく、不快な音が辺り一面を満たしている。

カサカサ、カサカサ。


枯れ葉が風で動くような微かな音。だが、その音だけでシラギクは完全に固まっていた。なのでニックがシラギクの手を引いて歩いてる。


そんな中、とりあえずまだオレは動けていた。

気のせいだったか?


ばたん。


扉が閉まった。

それによって一切の光が入らなくなってしまった。

夜目が利いてるのに暗い。そして泥臭い。


「目ェこえーわ」


『そう?』


そんな中で煌々と輝く双子に抱き抱えられたネコの目。

光源どうなってるんだよ。


「暗いわね」

「痛っ、誰だよ足踏んだの」

「さーせん」

「明かり点けるぞ」


ニックが魔法で明かりを着けた。直後後悔した。











「  !!!!!!!????  」















明かりを着けたのに地面が真っ黒だなと思ったんだ。それがな、一斉に動いた。


ガサガサガサっと、それはもう、蠢きながら。




一斉に上がる阿鼻叫喚(主にシラギク)。





ゴキブリ大丈夫だったけどこの数は流石に無理!!!!!!




「焼き払ってやるんだぞ!!」


パニック起こしたアレックスがジャスティスを装填。


「止めんか馬鹿者フリムン!!!」


それをアウソが気付き止めようとした。

もう、遅かったが。


燃え上がる炎によって焼かれていく大きめなゴキブリ。


皆さんは知っているだろうか?


ゴキブリ、焼いた個体がメスだった場合、フェロモンが放出されて、雄ゴキブリが大量に集まってくる事を。





地鳴りがやってくる。



見なくたって分かる。

ゴキブリの津波がやってくるのだ。



「おぎゃあああああああーーッッ!!!!!」



誰の悲鳴だろう?

誰のだって良い。


結界の中に引きこもりになっていたシラギクを担ぎ上げ、オレ達は無我夢中で逃げ出した。




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