第559話 進撃.4
シラギクが皆に周りの魔力の変化に合わせて防護結界を調整してた。
どうやら壁を抜けた瞬間に魔力の攻撃に遭ったらしく、既にダメージがあるらしい。
「…これ、結界無かったらヤバかったな。混沌の魔力の沼かよ…」
「というと?」
デアがニックに訊ねた。
「魔力耐性ないと数秒で召される」
「んんーーん!しばらくシラギクに足向けて寝られないわね!」
腕を擦りつつ苦笑している。
正直、全然笑えないが、笑うしかないだろう。
「これでよし!」
「オレも一応重ね掛けしておいた。でも気を付けろ、お前らの体内魔力とも連動しているから、枯渇しそうになれば解ける。無理をするな、ダメだと思ったらとにかく逃げて体制を整えろよ」
「シラギクがいうならともかく、ニックに言われるとはなー」
「なんだ?要らないのなら今すぐ解くぞ」
「ごめんごめん」
そして当然オレはスルー。
「オレもなんかしてほしい」
「どうした急に」
「いや、なんか、何でも良いからオレもくれ」
こういうとき結構寂しいのだ。
「………うーん、要らないとは思うが、分かった。腕出せ」
腕にチクチクと何かをされ、白い模様が浮き出ている。
「なにこれ」
「『予備』とだけ言っておく。本当は使う機会なんかないほうが良いんだがな、万が一だ」
「おお、ホントにくれるとは…、ありがとう」
初めてじゃないか?魔法の施しなんて。
『良いなぁー』
「ネコとも連動しているから安心しろ」
『マジで!?やった!!プレゼント!!』
見せろ見せろとネコがよじ登ってくる。
「そらそら、遊んでる余裕なんかないぞ。君には大事なお仕事があるんだから」
のを、ユイがひょいとネコを持ち上げて阻止した。
「あの梯子を君の尻尾で下ろしくれないか?」
『はい!よろこんでー!!』
「まて、何処で覚えたその返事」
火の玉の光を便りに突起に尻尾を掛ける。
そしてゆっくりと引くと、カチンカチンと音を立てて梯子が引き出されて下りてきた。
そして、完全に地面に降りること無く、少し浮いた状態で停止した。
「重さを関知しなくなると自然に巻き上げられる仕組みになってる。俺が先に上るから、気を付けて上がってきてくれ」
そう言うや、するすると音もなく梯子を上っていった。
忍者のようだ。もしくは
「じゃ、補佐要員で次行きます」
梯子を上る。感触的には鉄。チェーンみたいな作りだ。
ユイが天井の扉に耳を付けている。
「……いけるか」
ユイが扉の窪みに手を掛け、横にずらす。そこに音もなく飛び乗ると、手招く。
同じくそちらへ行くと、結構狭い。
なんだこの空間。押し入れか?
「君は粒子で物を透かして見ることが出来るだろう?どうだ?隠れているのはいるか?」
「いや、隠れているのを見付けるのは出来ますけど、透かしはちょっと…。やってみますけどね」
ユイが壁の突起を取り外すと、指先ほどの穴。
そこから粒子の目で見るが、今んところ暗いが隠れているものはなし。
それを伝えると、ユイは威勢良く壁をスライドさせた。
「威勢良すぎませんか?いくらオレがいないっていっても」
「信頼してる証と思ってくれ」
「責任重大すぎる」
失敗できないじゃないか。するつもりはないけど。
倉庫だ。もう使われていないのかあちこちに蜘蛛の巣が張られている。最も、それに掛かっている獲物も蜘蛛の姿も無いが。
皆を手招きして梯子がちゃんと戻ることを確認すると、ユイから現在地の情報と、おそらく中心点であろう王座の場所を教えられた。
正直、ここに居たとき活動範囲が限られていたので、こんなにも大きな城だったんだなぁと思った。活動範囲、多分五分の一程だったな。
「だが、恐らく俺の知ってる道と異なっているものになってる可能性も否めない。はぐれてしまった場合、連絡を取る手段はない。全力で生き延びる事を考えてくれ」
それぞれ返事をする。
さぁ、進撃の始まりだ。
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