第516話 総力戦、開始.2

襲い掛かってくる魔物を切り伏せる。ネコビームにより、巨⚫兵よろしく地面が大爆発して魔物を飛び、アレックスのジャスティスの砲撃で道が開かれ、ニックの結界で飛んでくる攻撃を意図も容易く防いでいた。


チートだよこいつら。


変異体であろうと無かろうと容赦のない攻撃。雑では無いから本能のままに向かってくるので迎撃しやすいというのもあるが、何より個人の戦闘能力が突飛しているので、一度の攻撃によって敵の数をゴリゴリ減らしている。


にしても、ネコはオレのフードから立ち上がって、頭に足掛けてビーム撃ってるので端から見たらオレの頭からビームが炸裂しているみたいに見えるだろうから大変愉快だろうなとは思っているのだが。ノルベルトが全力でこちらを見ないようにしながらも肩を震わせているのを視界の端で確認している。


シリアスなのに。


「楽ねぇー。ルキオの時もこんなだったら良かったのに」


カリアが言う。と、師匠とキリコが返す。


「そもそも敵の種類が違ったじゃない。あのムカデ、このビームたぶん効かないわよ。ザラキのも弾いてたからわざわざ装甲の隙間から潜り込んで攻撃してたじゃない」


「……、そうだったよ」


一体ルキオの敵はどんなだったのか。てかザラキの魔法弾くなんてとんでもない装甲だったのだろう。


「そろそろぶつかるぞ!!ライハ準備しとけ!!」


「はいよ!!」


敵の本隊が近付く。

蠢く変異体の群れへと向けて、剣、斎主に魔力を溜めて一気に奮った。















それぞれが作戦通りに出来るだけ派手な攻撃を駆使して敵を呼び寄せる。

カリアとキリコの場所は音は静かだが、時折飛んでくる敵の状態をみてエグいとの感想がつい漏れる。


一撃である。

怖い。


基本的に急所が抉られるか穴が開いてるかで、再生能力が高いものは四肢がもがれてたりする。


(ますます一撃必殺に磨きがかかってるな。よっと!!)


降ってくる爪に剣を滑らせるだけで腕が胴から離れる。

悲鳴が上がる前に心臓と首を突いて次の敵へ。


塊で襲ってくる相手には電撃を駆使し、飛んでくる魔法は跳ね返し(リバース)の結界で全て無効化した。


敵はどんどん集まってくる。


「!」


ブゥンと変な音がしたかと思えば、アンノーンがいるであろう場所から黒いドームが一気に広がり、通り過ぎていった。


「なんだ?」


『がふっ』


「お?」


相手にしていた一つ目のゴブリンが血を噴いて倒れた。

周りの魔物もふらついていたり、倒れたりしている。


具合が悪そうな魔物の体から黒い魔力の靄が少量だが離れていってアンノーンの元に集まっていっていた。


何の魔法だか知らないけれど、少し怖いなと思った。


ずずず。耳が音を拾い上げる。音が近付いてくる。次いで地面が激しく揺れ始めた。

目的の人物がやって来たようだ。


「敵は、倒す!!』


地鳴りに混じって聞こえた声。幼さを残しながらも、決意を秘めた強い声。


「退避!!!」


声を掛けつつその場から離れると、地面が突き上げられるように隆起し、すぐ上にいた魔物が飛ばされた。


近くで戦っていたネコやアウソも回避に間に合ったようだ。


土はまだまだ盛り上がり、辺り一面にひび割れを広げていく。それを落ちないように飛びながら避けていると、ようやく地鳴りが収まり、盛り上がった土の先端が人の形へと変わった。


コノンだ。だが、この前のものとは明らかに気配が違う。


「……こっちのが進行が進んでいるのか」


血の様に真っ赤な瞳が前髪の間から覗いている。額に一本。両耳の後ろの方から二本。真っ黒で歪な角のようなものが伸びている。

口からも牙が覗き、気配は悪魔そのものである。


シンゴのような悪魔の気配が混ざっているのではない。

悪魔そのものの気配であった。


「コノン!!」


ユイがやってくる。そして、オレと同じくコノンの姿をみて絶句した。


「コノン……」


ギリリと音がした。ユイが血が滲むほどに拳を握り締めていた。


「………済まない、まさかここまで変えられていようとは…」


ユイは前からコノンを置いていったことを後悔していた。

だからこそ、人間でありながら全てを悪魔と同じに“造り変えられてしまった”コノンを見て絶望をしていた。


同時に戦慄もしているのだろう。


ユイはあの時逃げられたから人間のままであるが、もし、あのまま逃げられていなかったら、今頃ユイも同じように“造り変えられてしまった”のだろう。


ユイの刀が震えでガチガチと音を鳴らす。


それを見ていたコノンが口を開いた。


「人間の裏切り者。私は貴方達を決して許さない。悪魔め、信じていたのに』


コノンの下半身が変化する。土と同化し、土も不快な音を立てて、蛇の形へと変化する。ずるりと大きな手が伸び、完成した姿は、女性の胴体をもった蛇の姿であった。コノンの上半身は蛇女の頭、ちょうど角が生えているように鎮座し、こちらを見下ろしている。





「信じてたのに信じてたのに信じてたのに信じてたのに信じてたのに信じてたのに信じてたのに信じてたから信じられない信じられない信じられない信じられない信じられない赦せない赦せない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない赦さない!!!!!!!!』







バチンと蛇の瞳が開かれた。



瞳孔が二つ並ぶ、見るものを不快にさせる目が、射殺すかのように此方を睨み付けた。




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──ライハ!!男が危ない!!


エルファラの声が聞こえた瞬間、オレはユイの前に飛び出し視界を遮った。


体に何かの魔法がぶつかって反転される気配。


ぞわりと鳥肌がたつ。これは、とんでもない強敵だ。


コノンが、いや、蛇女の腕が振り上げられる。掌が組まれ、次に来るであろう攻撃を予感した。


「ユイさん走って!!!」


腕を掴み、身体強化を施した脚で地を蹴った。先程まで居た所に組んだ掌がめり込み、犠牲になった魔物の欠片が潰れて飛び散った。


脳裏に浮かぶのはとあるモンスター。その名もメデューサ。

目が合った者を石へと変える恐ろしい呪いをもった魔物だ。


「かはっ!!はぁー!すまない助かった!!」


「お礼はあとで!!」


反転した魔法、それを解析したエルファラが詳細に情報を寄越した。ざっくりとした感覚で何となくで予感した情報が的中した。


あの目に睨まれたら体を石の様に固められる。


くそ、オレが間に割って入っても呼吸困難にさせるのか。キツいな。再び見ると、蛇の瞳は閉じられていた。インターバルがあるのか。


「(ネコ!!!)」


『(分かってるよ!!)』


ネコがすぐさま魔力を繋げて伝達。案の定瞳を見てしまってたアレックスがユイと同じ呼吸困難になってたが、ニックかすぐさま解除していた。同じ瞳を見ても“標的認定”してないと効きが薄いのか?


とにかく、あの瞳を何とかしないと。


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