第503話 決戦前.1
時間は遡り、ライハが愛剣を取り戻した翌日。
ニックの魔力が戻り、宿へと戻ると、懐かしい顔が並んでいた。
「アレックス!!」
「ライハ!!久しぶりなんだぞ!!」
アレックスと思わず抱き合い笑い合う。
だが、アレックスの表情が変わった。
「……ラビは、その。未だに信じられないが、本当なのかい?」
「……………ああ。……ごめん、オレの力が足りなかったばかりに」
「いや、責めてるわけじゃない。ジョウジョの時に思い知ったけど、相手が悪魔なら“こうなる場合があった”って、理解はしてたけど、実際身内がそうなってしまったら、実感が無いんだなって。特に、あの逃げ回ってたラビが、ってね」
思い返せば、アレックスは弱い頃のラビを知っていた。
小さい魔物でも、遭遇するやすぐさま姿を隠して逃げる。初めて会ったときも、命令があったから向かっては来たが、元々ラビは戦うのが好きではなかった。
…………、いや、オレも元々はそうか。
変われば変わるもんだ。
「遺体は?火葬?」
「戦利品として、持っていかれた」
「…………、そうか」
「?」
アレックスが考え込む。
「どうした?」
「……、何でもない。もし、遺体がきちんと残ってれば、って、ちょっとね。待って待つんだぞ!!ニック!!何も企んでなんかいない!!」
急にアレックスの顔色が悪くなったので見てみれば、アレックスの視線の先でニックが真顔で杖をバシーンバシーンと掌に打ち付けていた。これは怖い。
「なにはともあれ、ライハさんが無事で良かったです」
「シラギクさん」
何でだろう。この人見るとほわっと暖かい気持ちになる。
「キャー!!キリコー!!!久しぶりー!!!会いたかったわ!!」
すぐ横を女性が駆け抜け、キリコに抱き付く。デアである。
その様子を吃驚した顔で見るグレイダンに、やれやれと呆れた顔でシェルムが引き剥がしに来た。
パンとニックが手を打つ。
「さて、それじゃあこれから作戦会議を開こうと思う。各々、準備が出来次第此処に集まってくれ」
それぞれ宿の手続きや買い出しを済ませて集まり、情報を共有するために簡潔に悪魔の情報、協力体制の情報、戦況、出てきた悪魔の戦力諸々を話した。
驚いたのは一般人の被害の拡大だ。毒肉から始まり、牛乳、野菜の一部にまで拡がっているらしい。
「それにしても、お前のくれる情報は確かで助かる。軍はこんなにも情報をかき集めていたんだな」
「エドワードさんが情報を出し惜しみせずに全部流してくれてましたから。今思えば、良い上司だったなと思います」
部下の使い方は荒かったがな。生き残るための情報や物資はガンガンくれた。
「実はフリーダンから連絡があって、近々北の巨人と東の煌和国で総攻撃を仕掛けるらしい。竜はまだ了承を得られていないが、手回しをするから、そのタイミングを見計らって突撃してくれ、と」
「城までの安全な経路は?そのままではいくら混乱真っ只中だとしても見付かれば終わりよ」
カリアの言葉に頷く。
「そこは心配要らない。その時になれば、案内人を寄越すからって」
案内人。誰だろう。
「……ただ、もしかすると厄介な邪魔が入るかもしれないから、その時は何とか対処をしなければいけない」
「邪魔が?」
「向こうには、大地を作り替えるほどの能力を持った奴がいる。確か、名前はコノンとか」
心臓がどきりとした。そうだ。あそこにいるのはシンゴだけじゃない。コノンもいるのだ。
此処に来たばかりで馴染めなかったオレに飲み物をくれた優しい少女。次にあったときには少しは面影があったが、力は増大し、ゴーレムを自在に操っていた。
オレはコノンと戦えるだろうか。
シンゴとは因縁があるから戦えるが、コノンには無い。どうしても躊躇ってしまう気がする。
「それまでは十分に体を癒し、道具を整えておけ。決戦はもうすぐだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます