第455話 虚空を見る.5
所変わってイリオナの国境付近の野営地。
「なんかさ、俺誤解してたわ。
「それ私の事ナチュラルにバカにしてル?」
長い白い尾が不機嫌そうに揺れた。
「ビキン、バカにしてるのは元々じゃない? 実際バカなのに」
ボヨンと大きな胸が揺れ、バカにした顔が尻尾を持った子を見下ろしていた。
「ばっっ!失礼ヨ!!ナリータ!!」
「あー、はいはいはいはい。喧嘩は止めてくれめんどくさい」
「元はと言えばお前の所為ヨ!!!ノルベルト!!!」
怒りで跳び跳ねる真っ白な尻尾を持ち、露出した浅黒い肌の女の子、ビキンの拳を受け流しながらノルベルトが眼前に繰り広げられている
隣で怒り狂ってる子猿もそういえば猿の
そんなビキンを相変わらず見下ろしながら笑っているのはナリータ。フリルをふんだんに使った服を身に纏い、水色の髪をしっかりと編み込んでいる。見おろしているが、ナリータの靴は超厚底の靴だ。ウォルタリカ出身なのに背が低いのを誤魔化しているが、言えばきっと大変なことになる。
「はぁぁぁ」
こんな子守りをするはめになるんだったら、暇なの我慢してニコラスの所にでも残っておけばよかったかなと思いもしたが、後の祭りである。
ノルベルトは一ヶ所に長く留まるというのが堪えられない。それも近くで争いの気配があるのにじっとしていないといけないというのが、死ぬほどストレスなのだ。
なので、同じくソワソワとうるさいレーニォと、合流した残りの仲間のビキンとナリータ、そして暇そうにしているカミーユを連れて先に出発した。
本当ならカミーユもシラギク達と同じように病院に潜入して情報を集める役をしていたのだが、シラギクやデアと比べて体格の良いカミーユが現場の配置にされそうになった時に、カミーユが『力仕事無理!!!』と逃げ出してきた。
根性の無い奴め。
本当ならガルネットとアレックス、そして弟のシェルムも連れていきたかったのだが、館の持ち主であるガルネットの彼女、ローラに捕まり半分監禁状態。
そりゃ一年近く会ってなかったらそうなるわな。
もうしばらくしたら出てこれるだろう。
アレックスはニコラスの護衛。何だかんだでお互いに気に掛けてるのは義理でも兄弟だからだろう。ついでに言えばシェルムもデアの護衛だ。あいつらは……、うん。何も言うまい。
というわけで、フリーな奴等しか連れてこれなかったから、わりとトラブルも多くて大変だ。
転移装置のゲートの予約でさえ、レーニォが居なかったらどうなっていたか。
「あーー、早く再会してお互いの戦果を讃えてぇ」
きっとライハなら俺の話を聞いてくれるはずだ。
そして盛り上がれるはずだ。あいつはちゃんと話を聞いてくれるから。
「愛しのライハくんに?」
そこにキモい茶々入れ。
「キモいわ死ね」
「ひっどいわぁー!せーっかく私たちが頑張って整理券確保してきたのにぃ」
顔を上げれば、カミーユとレーニォが。手には人数分の整理券と弁当。
「ひょおおお!!!お弁当!!!」
子猿が喜ばしいのか跳び跳ねているのをクスクスと笑いながら見下ろすナリータ。早速ビキンが弁当を食べ始める。
「ただなぁ、どうも西側が大変になっているみたいでなぁ、一般の奴だとちょっと時間が掛かるんやて。空いた時間どないする?」
「あー、マジか」
どうしても軍関係が優先されるのは仕方がない。むしろ良く一般枠が取れたなと思うが、空いた時間を無下に過ごすのもどうかと思われる。
どうせなら体を動かしたい。
ちらりとノルベルトの視線が戦場を向き。
「ん?」
あるものを見つけた。
深い紺色の髪の長身の女性、燃えるような真っ赤な髪の女性、そして、褐色の肌の青年だ。本来なら、そこに黒髪の青年がいるはずだが、その青年は西の戦場で剣を奮っている筈だ。
ノルベルトは思わず立ち上がり、それを見たレーニォも視線を追って彼女らに気が付いて顔を明るくした。
そこでようやく褐色の青年がこちらに気が付いた。
「あ!いつぞやの、ノー、…ルベルト!!さん!!……てか、もしかして其処にいるのレーニォさん!??なんで!?」
ノーまで思い出して、ちょっと考えたのか名前の発音がおかしかったが、覚えていてくれたことが嬉しい。
彼女達もこちらに気が付いて、駿馬の進路をこちらへと変えた。
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