第417話 しばしの.2

恐ろしいくらい動きがなかった。てっきりすぐにでも猛攻が始まるのかと思ったのだが、いや、動きはあるのだろうがあまりにも静かすぎて不気味な程だ。


むしろ、ルキオの方の攻撃もギリギリで押し返し、未だに緊張状態は続いているものの、あの大百足の襲撃以来大規模なのは無いらしく、全力で復旧作業に入りつつあるという。


動きと言えば、ノーブル国で武器開発が盛んになっているという噂を聞いた。アレックスとかが持っている銃の会社、タナカ。タナカ?タナカ。

初めて聞いた時は思わず聞き直してしまったが、こんなにも聞き馴染みのある名前は初めてだった。親近感持てそうだ。


そのタナカ銃会社と対悪魔戦用武器開発組織ヘキサグランとの共同開発された武器が届いた。それが──


「…盾?」


──盾である。


「盾か?これ」


「いやでも盾って説明されましたし」


「…………盾ぇは付いてるっちゃ付いてるけど」


車輪付の盾。

これを、押しつつ前進するらしい。

盾自体が笑うくらい分厚くて持ち運びが難儀なのは分かるが、成る程。車輪が付きましたか。

あれ?でもなんとなく見たことある気がするぞこれ?


隊員達とまじまじと眺める。あちこちからデザインが強そうでいいだの、重そうだが押せるのか?だのワイワイ楽しそうだ。ちなみにここにいるのは遊撃隊のみである。

理由として、他の隊は半分以上の負傷者がいるためにまだ復帰が出来ていないそうで。

そう考えるとオレの部隊頑丈だなと思う。


「これは?」


ラビが盾から伸びる棒を指差す。


「ギリスの変態技術が詰め込まれた、いわば魔法補助の杖的な役割を持つもの。マジク・スティクというらしいです」


「ほ、ほぉ。どうやって使うの?」


訊ねれば、これを持ってきた人が説明書を読み始めた。


「盾の中に円形の模様かあるのを確認してください。その真ん中に攻撃用の魔方陣を設置すると、その情報を読み込みマジク・スティクから発車いたします。とあります」


「思った以上に高性能だな」


ここまで高性能なら、いっそのこと車とか作って取り付けれもらいたかった。あ、それじゃあ戦車か。戦車でもいいな。


「隊長、これ思ったよりも軽いです」


「え、ほんと?」


振り替えると、隊員が一人で移動させていた。

何だろう、テコの原理とか良く分かんないけどそう言うのが使われているのかもしれない。


「盾の下のは?」


用途不明の突起がついている。


「それが、急な衝撃でも押し戻されないためのつっかえになっているんですよこれ」


「スゲーな、これもしかしたら連結させてやればリオンスシャーレ北部の襟巻き角竜みたいな感じに出来るんじゃないか?」


ラビの言葉で、思い出した。確かに、用途的には出来るかもしれない。知れないが、残念ながらまだ二機しか出来ていない。しかも試作品。


「後で試し撃ちでもしてみるかな」


「ご心配には及びません。既にノーブルで数え切れないほど試し撃ちをしてきています。と」


「そんなことも書いてあるんかい」


説明書を覗き見したら、既に悪魔の武器で散々撃って耐久を確かめてあります。とあった。

仕事が早い。


「あと、試作品が色々あるのでどうぞ御試しくださいと大量に届いております」


と、後ろの布を指差す。壁際に山みたいになってるあれ、全部試作品なのか。この短期間でどんだけ作ったんだと突っ込みをいれたくなる。もしかして戦争が始まる前から構想だけはあって、戦争が始まって資金とか人が集まったから作れるようになったのかと勝手に推測したが、案外間違っていないのかもしれない。


「これが説明書です。番号と合致させて良くお読みになってからお試しください。では」


そう言い残し、運んできた人は行ってしまった。

机においてある説明書の量だけでどれだけ送られてきたのかを理解できて嬉しさ半分、また書類かというゲンナリ感半分。

実は昨日まで、エドワードに送る書類を作ってたので正直書類はもう見るのは嫌だったが、武器とか防具関係はやはり危険なので、ちゃんと説明書を読んでからのほうが良いだろう。せっかく今遊撃隊が倉庫と武器を独り占めできているのだから文句は言えない。


「さーて、さっさと説明書読んで使えるもんは試しにいくぞー」


「イエッサー」

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