第408話 押し込め!!.6

悪魔に捕らえられていた女性の意識が戻り、大変な情報が入ってきたと言うことで、この場に留まっている隊長達が集められた。

此処にいるメンバーは五人。割りと前半から戦ってきた隊長達である。だがトビアスは昨日足を折ってドクターストップが掛かったので来てない。


ギルド職員のエリオットが顔色悪く、魚のように何度も口を開いたり閉じたりしていたが、唾を飲み込み覚悟を決めると口を開いた。


「魔法の使えない雑兵の正体がわかりました。あれは、拐われた女性達が強制的に産まされた悪魔と人間のハーフです」


「!!?」


「はぁ!!?なんだよそれ!!」


どよめくどころか思わず立ち上がり椅子を倒すものまでいる。

しかし、その表情は皆そろって信じられないと書かれていた。悪魔は人を食う。だが、人を襲い子供を産ませるなどと。


「だいたい人と悪魔の間に子が出来るわけないだろ!!」


「いや、まて……たしか、なんかの本で見たことある…、悪魔との子を授かってしまった女性の話……」


「それってスーテンワーグの悪夢だろ?だがあれは作り話だし、子供は拐われたやつじゃないか」


「ああ、だが、それが本当の話だったとすれば、ハーフというのは嘘ではない…」


「…………」


スーテンワーグの悪夢の話ならオレも知っている。サキュバスだったかインキュバスだっか、そんな悪魔に襲われて子を宿してしまったが、そのうち宿した子に情を寄せ初め、何とか周りに悪魔の子だと悟られないように産み落としたが、最後は子供を拐われてしまい、女性は悲しみのあまりコナキの木になってしまったという話だ。


ちなみに実際にコナキの木は存在し、風で揺らされて啜り泣く音を立て、とても良い臭いで美味い木の実をつけるが、それは猛毒で、知らずに食べて死んでしまう子供が多い。


だけど、人に子を宿す種族がいるのは知ってるが、それは婬魔とかで、他に希に吸血鬼なんかが種族を増やしたり、食料を確保するだけでごく少量のはず。


脳裏に使い捨てにされた、多くの雑兵の姿が浮かぶ。


あれが皆そうだとしたら、どれだけ多くの女性が犠牲になっているのか。いや、それともずっと昔からなのか。


「女性は心身の傷が深く、少しずつしか情報を話してくれませんでしたが、多くは奴隷として売られた女性や、拐われた女性で、時たま男性も来るが、そちらは別の部屋で何か実験のようなものをされていたそうです」


「……それは、ここでか?」


「それが…、どうも違うようなのです」


「え?」


どう言うことか?

倒れた椅子を直し、座ってたワサビナ隊長が閃いたように顔をあげた。


「それはまさか混沌か!?」


「だと思ったのですが、それも違いまして、彼女が言うには海を航ってきたと」


「海?」


そこでオレはハッとした。そう言えば地図に南の方にも大陸があったはず。


「それって、サウスラーン大陸とか、ですか?」


「ばかいえ、彼処に行くのは出来ない。間には赤い海竜の巣、上空は大嵐で、ルキオの連中でさえ躊躇うっていう話だぞ。あいつらが行けんなら無理だ」


「ちょっとまてよ、もしそれが正しいのなら混沌というのは南の大陸の事なのか?」


「お前勇者書記見てないのか?混沌は大地の隙間を抜けた先にあり、空気は猛毒で、常人がうっかり足を踏み入れようなら数分で終わるってあるだろう」


「俺は神言書教ゴディアスでも勇者信仰者でもねーから見てねーよ」


「教本じゃねーよ!普通の本だよ!」


「まぁまぁまぁ、落ち着いて」


間に入って止めようとしていれば、気まずそうにエリオットが手を上げる。


「あの、続きよろしいでしょうか?」


「どうぞ」


ようやく熱くなっていた二人が座った。


「それで、これは推測ですが、戦力を作るために雑を産ませるというおぞましい事をしていた悪魔なんですが、人間から裏切り者がおりまして、聞いたことはあるでしょうが鷲ノ爪が積極的に拐っては悪魔に売っていたと思われます。現在総力を上げて鷲ノ爪を追っていますが、捕まるのは何も知らされてない下っぱばかりで今のところ有益な情報はありません」


鷲ノ爪か。

まさか悪魔と繋がっていたとはな。


まさに悪魔に魂を売った奴らだ。


机の下で爪が食い込むほど拳を握りしめる。ネコは悪魔だ。そしてオレも半分以上悪魔となっている。だけども、絶対にオレ達は同じようにはならない。


「あと、もうひとつなんですが。こっちもちょっと信じられないんですがね」


書類を捲りながらエリオットは頭を抱える。


「とある国が、悪魔側に寝返りました」

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