第375話 『対話』.2
連れてこられたのはノノハラの連れであるナナハチだった。魔力が激しくはぜているせいで直視できない。微妙に眼をそらした。
「あれ?貴方の気配はなんだか親近感を覚えますね?何ででしょう?」
しかし、逸らした側からナナハチが自ら近付いてくる。やめて眩しい。
「……このバチバチなんとかならんか?」
ニックも出来るだけ眼を細めていた。
魔力が見える人に対しての全身凶器だなこの人。
「無理ね。止めたらこの人死ぬわ」
「! あー、なるほどそういう…」
「どういうことですか?」
ニックは納得したがオレは納得できない。
「人にしては黒いのが多い気が…」
しかも首をかしげながらナナハチがめっちゃ見てきて気まずい。
「彼こそ、禁術によって辛うじて生きている存在ってこと。元々はそれに通じる組織だったらしいから知識は豊富」
「だからって協力してくれるんですか?その組織に流されたりとかは?」
「それは大丈夫。彼、自我芽生えた上で、彼女に付いていくと決めたから。それに…」
フリーダンがちらりとナナハチを見る。
「『対話』の魔法の経験者だから」
「それなら納得ですけど」
顔を逸らしすぎてそろそろ首が痛い。
「心配しないでください。既に組織を裏切っているようなものなので勝手にしてます。そもそもボクの存在事態が違反らしいので、好き勝手に生きさせてもらっています」
なんて返せば良いかわからなかった。
さて、フリーダンとニック、そしてナナハチ付き添いで禁術を行うことになった。
「ここで良いですか?」
「ええ、あとこっちのを少し右に寄せてくれるかしら」
「了解です」
「おーい、これはどうすれば良いんだい?」
「──で、この現象が出たらこうして」
「……うーん…、どういう効果なんだ?これ」
「なぁ、これらはどこに設置すれば良い?」
「えっと、ちょっと待って!」
オレとアレックスがフリーダンの指示によって転移のための岩を運び、ラビとノノハラが意識逸らしの魔方陣(上級バージョン)を図面を見ながら設置、ニックが初めての禁術を教えてもらっている。
草原の、昨日ノノハラに有った岩場の側で黙々と作業するオレ達だが、フリーダンがあらかじめ強い意識逸らしの結界を張ってくれていたので今のところは警戒の必要はない。
問題はフリーダンが飛んだ後だ。発動している術者が居なくなれば当然魔法は魔方陣じゃない限り消える。その為に魔方陣が描けるラビと、肉体労働得意な二人の内多様な魔法弾が撃てるアレックスを採用。ナナハチの暴走抑止の為にノノハラが付いている。
何でもナナハチは今自我を持ったばかりの子供に近いため、ノノハラを身内として捉え、精神安定剤代わりに生っているらしい。
曰く、ノノハラの気配が感じられる距離から居なくなると機能停止するとか。恐ろしい。ロボットかよ。
「よし、出来たわ」
アレックスと二人係で運んだ岩を基点に魔方陣を描き上げたラビとフリーダン。その魔方陣はシンプルかつ、
「ネコ、おいで」
ピートン、レン、歪な精霊、新たな名イナリと遊んでたネコが戻ってくる。
「行き先は人が絶対にこられない所を選んだわ。帰ってくるまで此処を頼んだわよ」
フリーダンがそう言うと、居残り組みのアレックス、ラビに気を付けてなと言われる。
今回の禁術はどうなるかわからない。もしかしたら失敗する可能性もあるが、それでも成功を信じて頑張るのみだ。
「いってきます」
「それでは、始めるわよ」
フリーダンの体から魔力が溢れだし、みるみる内に魔方陣を満たした。
次の瞬間。
「 彼の地へ 飛べ 」
視界が真っ白に染まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます