第308話 ジャスティスとネコと.4

スルリスルリと紙一重で避ける。時にはフェイントを掛け、アレックスの電撃弾を受けたスパイクスネークモドキの意識が他へと向こうとしたらすかさず目の前を横切って煽る。


苛つきが高まってきたのかスパイクスネークモドキの攻撃は大胆になってきた。


「!」


ところ構わず尾を振り上げ、叩き付ける。

木はへし折れ、地面が大きく抉れて視界を遮る、だが、次の攻撃が来る前にアレックスが爆発効果の銃弾が炸裂し、尾が爆風に揉まれて吹っ飛んだ。


「すっげぇ威力!」


威力だけならダイナマイトに匹敵するんじゃないか?

だが、その衝撃のせいで折れた刺が大量に降ってくるが、それはすかさずネコが尾で全て凪ぎ払ってくれる。


それにしても、ルツァってこんなもんだったっけ?


動きはそこまで早くはないし、かといって魔法がえげつないわけでもない。


アレックスの腕を見ると同時に、討伐隊が全滅したというから、一体どんな魔物だろうと思っていたんだけど。


「本当にルツァか?これ」


油断はしないが疑ってしまう。

ルツァはこんなもんじゃないと思うが、比較対象が悪魔だからなのかと頭を捻った。


クグッと再びスパイクスネークモドキがとぐろを巻く。また突撃が来るかと身構えたが、それにしては様子がおかしい。首の付け根から大量の触手を生えさせ、全ての触手から麻痺毒を吐き出しながら首を激しく回転させ、麻痺毒が雨のように降ってくるのを見た瞬間。


「そうだよ!!これがルツァだよ!!」


と訳のわからない安心感に包まれた。状況は大変よろしくないのに。


「何一人で盛り上がってるんだい!!来るよ!!」


アレックスが焦った声をあげた。


「ネコ!アレックスを守れ!」


『ライハは!?』


「平気だ!多分!」


ちょうど実験したいこともあったし!

手首に巻いていた“暴食の主”をほどき、端を掴むと全身を使って麻痺毒の雨を避けながら思いきり振り回した。


もうもうと麻痺毒の靄が立つ。


そんな中、オレは口元に襟で直接吸い込まないようにしながらも自力で立っていた。しかも無傷。


呪いがわからない作用をして飛んでくる魔法を、紐の届く範囲で吸い込んでくれるもんだから、こういう範囲攻撃に今まで手も足も出なかったのに今じゃ全然怖くない。神具万歳。


「フゥーウ!!なに今の動き!?ファンタスティック!!」


いぇーい!!とアレックスが万歳の姿勢でネコにくわえられて空から降りてきた。


「こうしちゃいられない!!俺も本気を出すんだぞ!! ジャスティス!!!」


魔力がアレックスの銃、ジャスティスへと集まっていく。元々魔力が必要ない銃なのに、アレックスはそんなの関係無いとばかりに注ぎ込んでいく。そのせいか、銃が輝き始めた。


「正義の鉄槌を下す!!! ショット!!!」


「は?」


銃、だよな。


視界一杯の光が銃から発射され、みるみる内に膨張する。え、これ逃げられなくない?なんで撃ったのこれ、オレが近くにいるのに。


『ばかああああーー!!!!』


「ぎゃああああああーーー!!!!」


そっから先は覚えていない。











気付いたら、ギリギリ避けられていた。


転がった足元には黒く焦げた草。そして刺が折れまくってかわいそうになったスパイクスネークモドキ。


それでもまだ動こうとするのは流石ルツァというべきか。


「俺、もうガス切れ…、後はまかせた…」


そしてアレックスは魔力が尽きて、今は糸が切れた人形のようにネコにぶら下がっている。それをネコが不機嫌な顔で支えていた。


『こいつ落としていい?』


「だめ」


どうやらオレがいるのに撃ったので、友好度が下がったようだ。


『………ゥゥ…グ……』


アレックスの最大攻撃で動けなくなっているスパイクスネークモドキに雷の矢をつがえ、電圧を最大に上げる。

さらば、ルツァ。

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