第300話 神具ホイホイ

「いやぁ、助かったよ!ありがとう!君がいなかったらどうなっていたことか。あ、俺アレキサンダー・J・グッドマンだ。アレックスと呼んでくれ」


と、オレの干し肉三日分をぺろりと平らげたアレックスが言う。どうやら怪我や睡眠不足よりも空腹でふらついていたらしい。


怪我は本人は大したことないと言うが、一応診てみたら既に血は止まっていた。


何かの魔法か?


「ライハです、こっちはネコ。話します」


『よろしく』


「ふーん、使い魔かい?」


肉球タッチしながら、ネコを不思議そうに眺めているが、それよりもまだお腹が減っているのか無意識に手が干し肉へと迫っている。放っておいたら1週間分を食べられるかも。


「そんな感じです」


なので、一日分を置いて、後は仕舞った。


「そうかそうか。あ、敬語とかいらないよ。多分…歳近いし。そっちのが話しやすいしね」


「そうですか?じゃあ遠慮なく。突然だけどなんで捕まってたの?」


予想外の質問だったのか一瞬キョトンとし、すぐさま苦笑に変わる。


「あー、それ聞くんだ」


「聞くよ」


神の依頼ともなればきっと何かしら関係があるだろうから。しかも緊急。じゃなかったらオレはまだ仲間と一緒にいたはずだ。


『ネコも知りたい』


興味津々の目を向けられ、残りの干し肉を平らげると、水を飲んで咳払いをひとつ。


「うーん、じゃあ自己紹介しつつ説明をするよ。俺はアレキサンダー・J・グッドマン。ノーブル出身の19歳で、トレジャーハンターだ!といってもほぼ冒険者みたいなことしてて、遺跡とか迷宮潜りをメインで活動しているんだけどね。今回は怪しいと噂の遺跡に潜り込んだら、奴等の罠に見事嵌まっちゃってね!アハハハハ!」


その時の事を思い出したのか爆笑するアレックス。何がそんなに面白いのか。


「いやー、反撃しようとしたら弾が切れてたの忘れててさ!仕方がないから逃げてたんだけど、仲間とはぐれてしまって、しかも運悪く捕まって餓死する寸前って所に君が現れたってわけ!」


「弾切れって、武器は銃とか?」


「そうそう、これ……やっべぇ鞄の中だ」


懐に手を入れて目的のものがない事に気付き顔色を悪くするが、そういえば探ってた鞄の中にソレらしきものがあったなと、鞄を差し出す。


「これ?」


「そう!それだよ!よく俺のだって分かったね!」


鞄から銃を取り出す。見るからに魔力が込められているのがわかった。これが本物の魔銃ってやつか。


コアを入れる所がない。なのに魔力があるってことは、元々魔力を込められながら作られたのか、それとも魔力が宿る鉱石から造り出されたのか。


どちらにしても、レアものなのは確かだ。


「なんで鞄の中に入れてたの」


「ホルダーが壊れちゃってて。うん、良かったこれはどこも壊れてないみたいだ」


『それにしてもその鞄の中ガラクタばっか』


「え?中見たのかい?」


「証明証探してて」


「なるほど、てかガラクタなんて酷いな。これは宝の山なんだぞ!特にこれとか!」


アレックスは鞄の中から楕円型のカプセルを取り出した。そこには何かの魔方陣がお洒落なイラストに紛れて描かれている。


中には木の人の形を模した人形で、手足が折れたりもげたり、穴が開いてたりしていた。特に片面が細かく裂いたような感じで酷く荒れていて、どう見ても宝には見えない。呪いの人形た。


「これは引き受けの人形で、対象の髪を巻き付けた人形をこの中に入れておけば、ある程度の傷を引き受けてくれるんだ。例えばこの細かいのは鞭でやられた傷だね。これのお陰で無事なのさ」


身代わり人形か。


「これは遺跡で拾った。こんな感じで使い方がわかるのもあるし、分からないのもあるんだけど、助けてくれたお礼として幾つかライハにあげるよ」


「いや、多分オレが貰っても宝の持ち腐れな気が………、もしや」


ふと思い付いたことがあってスマホで神具のリストを見ると、なんと凄い数ヒットしていた。


オレは思わずアレックスを見た。


「神具ホイホイかよ」


「なんて?」










こんな森の中で広げていたんじゃ、あいつらが戻ってきたときにすぐに逃げられないと言うことで一旦街に移動することにした。


上着がボロボロなので着替えを貸してやり、疲労で足にキていると言うので、灰馬に乗っけて引いていった。灰馬はめちゃくちゃ嫌がったが、餌で釣った。


流石は剣士と職人の国というだけあり、宿や道具屋には事欠かない。すぐさま宿を取った。


「……戦争が始まってもあまり変わらない感じだな」


攻められたのが南だからか、山脈越しのここには影響がほぼない。精々魔物の数が増えてハンターがピリピリしているくらいか。


「さて!君が本当にこれらの使い方が分かるか調べさせてもらうよ!」


目を輝かせながら、アレックスは神具を並べ始めた。


オレが神具リストを持っていて、ある程度の判別が出来ると言ったら興奮しまくりで、寝てからにしろと言うのに聞かないので大きさ別に並べている。


「といっても、分かるのは名前と使い方くらいだから。どうやったら使いこなせるのかは知らないぞ」


「何言ってるんだい!名前と使い方が分かれば十分だよ!」


「そう?じゃあ」


そんな感じで、オレとアレックスは黙々と神具の判別をしていったのだった。ネコ?途中で飽きて寝てたよ。

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