第273話 山之都.4

亀裂が塞がっているなら、ここに長くいる必要もない。でもせっかく来たし、1日ゆっくりしてから明日出発するということになった。


三人は早速出掛けていき、オレはクウカクの家でニックの手紙を読むことにした。


ーー まず、最初に、本物の勇者になったと聞いたので、おめでとうと言おう。


まさかあんな気配させときながら勇者になるってのは本気でフリィダン(元リベルター)に聞き返した程の衝撃だった。お前が勇者になった以上、遣いのオレもお前の手助けをしないといけなくなったわけだが、一つ、勘違いしないでほしい事がある。


遣いはあくまでも“観測者”の遣いであって、勇者の使用人じゃねぇ。


これな、勘違いする奴がいるから事前に言っておくからな。手助けはするが、使用人じゃないから、なんでもかんでも言うこと聞くと思ったら大違いだからな!


もう一つ、遣いは観測者の目や耳だが、これも使用人という訳ではない。


ここ大事だからな!立場は対等だ!!わかったな!!





「お、おう」



どんだけ念押ししてくるんだ。

昔なにか勇者絡みで嫌なことでもあったのかな。




ーー で、だ。勇者についての話だが、別に勇者らしくあろうとしなくて良い。初代も二代目もそんなことあんまり気にしてねぇ。気にするのはいつも世間からの目が気になるやつだ。そうやって壊れる召喚勇者を何人も見ている。


ちなみに目を気にしなくていいとは言ったが、犯罪に走ったり、道徳心から外れるような輩は正直死ねと思ってるから、もしそんな話がお前から上がったらすぐさま駆け付けて消すつもりでいるので気を付けろ。遣いはそういう役目もあるから。勇者の役割を嵩にふんぞり返る輩はオレは容赦しない。


そして、これは推測の話なんだが、お前オレがが言った呪われた装備あつめろって話、覚えてはいるが実行はしてねぇだろ。





「何故バレてる」


何処かで見てるわけじゃないだろうが、怖いな。






ーー そんなお前に朗報だ。

裂目を塞いだ所から半径約12m内にとある魔方陣を張ってある。それを解除できれば、良いものが手に入るぞ。

じゃ、そろそろ時間もないから、精々死なないように強くなっておいてくれ。じゃあな。








そうして手紙は終わった。


勢い良く立ち上がると、机の上で形状変化の練習をしていたネコがこちらを見上げる。


『どうしたん?』


「ネコ、宝探しに行くぞ!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る