第261話 素材を集めよ!.14

薬屋から戻るとまだ気絶した奴が立ったままだったので、このまま倒れると危険だと思って横にしておいた。ついでに剣も横にしたのだが、あまりにも動かないので心配して脈をとったが生きていた。良かった。


『写真とれば良かったのに。なかなか無いだろ、あんなの』


「いや、オレのフォルダにあんなの入れたくない」


せっかくネコと風景と仲間の癒し画像で賑わってるのに、珍気絶画像なんか入れたら一瞬で癒し効果が消えそうで嫌だ。


それに気絶画像とか、入れておいてもオレは多分見ないので容量の邪魔。


「さて、用も済んだし行きますか」


『レッツゴー!レッツゴー!』













足早に門へとやって来ると、既に準備満タンなカリア達が待ってくれていた。


「ちゃんとうまくやった?」


「やりましたよ!多分これで当分は絡んでこないと思います」


魔力解放させて気絶させたやつはいたけど、許容範囲内だと思う。思いたい。


「そこまで自信があるなら上出来。じゃあ行くよ!」


灰馬に跨がりいざ出発。


ようやくちゃんと走れると灰馬達が飛ばしに飛ばす。秋の風が心地よい。空は秋晴れで何処までも高く、澄み渡っている。


『んはぁー!!やっとお喋りできるぜー!!』


今まで満足に喋れなかった分声量割り増しで伸びをしながら喋るネコ。


「あんた初めは喋らなかったんだから平気じゃないの?」


『喋れるようになったら喋りたいじゃん』


「確かに、喋れんとなかなか辛いさ」


「そんなことあった?」


「子供の時に風邪拗らせて、声出なくなった」


「わかるわー。オレも急性声帯炎になって二週間声出なくなったもん」


「キュウ……なにそれ」


「風邪菌が声出す器官を腫れさせるらしい」


『うげー』


「風邪怖いね」


そんな事を話しつつタキオトシの森へと着くと、確かになんだか異様な雰囲気に包まれていた。


近くの村へと駿馬を預けつつ事情を話すと、依頼を出した村だったらしく情報を全て渡してくれた。森の中へと行ったハンターは総勢23人。うち、ちゃんと戻ってこれたのは2人。


だからなのか、事前にやめといておいた方が良いと止める人もいた。


だが、ここで止めたら素材を手に入れることは出来ない。


「見えない壁って何なんだろうな」


「情報だと、行きと帰りで壁の場所が変わってるって言ってたから、この紐を道標に行っても多分意味はないわよね」


キリコが手に持つ紐複数を木々に結びながら行くという案があったが、場所が変わるなら意味がない。


「見えない壁………………、あ」


腕を組み、考え事をしていたカリアが何かを思い出したように声を漏らした。


「マテラの、チクセ村で会ったシラギクってパーティーリーダーいたじゃない?」


「え、はい。いましたね」


ニックの所属していたパーティーのリーダー。シラギク。黒髪の背の低い少年のような見た目で、オレと同じお辞儀をするコーワ国の静かな人。


「彼、結界師っていう珍しい職業で、戦いかたもほとんど目に見えない壁を作り出して攻撃や防御をしてたんよ」


「結界って、攻撃に使えるんですか?」


「思いもよらない使い方してたよ。多分頭が良いんだろうね。で、その壁って確か魔法属性では『凍結』で、その気になれば目に見えないほどの透明度を作り出せるって聞いたことあるんよ。確か、パルジューナか、リオンスシャーレにそれ系の訓練所があるって」


考えた。

ほとんど見えない壁って、そんなのガラスじゃないか。

遠い昔、何かのイベントで走り回っていて新品のガラスが見えず、そのまま突っ込んで弾き返された思い出が甦る。あれは痛かった。


思わずおでこを擦った。


「対策を考えないとね。反射とか、後は上を行くとかどう?問題はどのくらいの高さがあるか、だけど」


「一応その結界っていうのは、目に見えないけど存在はしてるんですよね?」


「? してると思うけど」


キリコがなんで?とこちらを見る。


「多分、ですけど、オレその結界見えるかもしれません」











森の前でたくさん繋いで長くした縄を持ちながら、偵察という感じに一人と一匹で森へと足を踏み入れた。そして、目を粒子モードへと切り替える。すると、砂嵐が飛び交う視界の奥、丁度、森の前方少し行った所に壁に似た物体があるのが見えた。


通常の目では見えなかった壁だ。


そして風を見るモードでは風の帯が壁を避けているのが見えたし、魔力のモードではこれは魔法の一種であることが確認できた。


高さはおよそ2m半。横は不明だが、右の方に切れ目を発見した。


「後は上か。ネコ、上げてくれ」


『はいよ』


フードからネコが降りて、少し大きくなると、尻尾の先を広くヘラ状にする。そこに乗ると、ネコは尻尾を使ってオレを高く放り上げた。

木々の境目を塗って森の上へと飛び上がり、粒子モードと風の帯モードで全体の壁の高さとおおよその位置を確認すると、身を捻りながら落下し、枝をクッションにしながら降りると、ネコが下で尻尾の網を作ってくれていた。


そこに着地。


少し落下にも慣れてきたな。


「さて、一旦戻ろう」

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