第251話 素材を集めよ!.4
ルパ用の罠が完成した。もうほんと、簡単なやつ。
侵入経路と生態を生かして、自然に誘導できるようにまでした。
ルパは小動物だが頭が良い。
特に、侵入経路発見の勘も見事なもんである。
なので、それを利用する。
まず、畑を板で覆った。棘でもダメなら壁をつくった。と、見せ掛ける。
しかしルパは結構な跳躍力を持っているからそれだけではいけない。
板の上に篝火を小さいながらも一定距離に設置し、視覚を眩ませる。ルパは夜行性の為、こういう光があると見えにくくなる。すると、壁を跳び越えるだけの距離を測れなくなるので、ルパは隙間を探し始める。
何度も何度も窃盗が成功した畑だ、大胆になるから警戒心も薄くなる。
ルパは壁をぐるりと回り、壁の下に僅かな隙間を見付けた。
掘ればすぐに潜り込めるような隙間をだ。
ルパはそこから漏れる美味しそうな食べ物の臭いを嗅ぎ取り掘り始める。何とか通れる程の隙間を作ると潜り込んだ。
中に入るとなんとも居心地の良い薄暗さで、ルパは臭いを頼りに奥へと進んでいく。
途中何回か狭いところを通過したが関係ない。
そしてようやく食べ物にありつけもさぼり食う。そのうち仲間も便乗して入ってきて同じくもさぼり食べた。いつもの野菜とは違うが、こっちの方が美味いから関係ない。
そうしているうちにお腹がふくれて戻ろうとすると、何と隙間が無くなっていた。
どこを探してもない。引っ掻いても噛み付いても無い。
やがてパニックを起こし暴れていると、四方八方から大きな音が絶え間なく鳴り響き、恐怖のあまり気絶するものが続出。その内この空間一杯に煙が充満し意識が無くなった。
というシナリオらしい。
「ほんとにこれでルパが捕まるのか?」
と、村人のサプは疑惑の目を寄越していたが、大量に捕まえるのはこっちのが楽なんですよ。
「後は夜になるのを待つだけよ」
夜、のんびりと食事をしてから罠を設置した畑を見に来たら、計画通りに弁付きの通路の先にある大きめな木箱の中でルパがドッタンバッタンと暴れまわっていた。
ちょろい。
「じゃあ、これからこの板で箱をガンガン殴って音を立てて下さい。サプさんは今まで荒らされた恨みを込めてで良いですよ」
サプに音が出やすいが壊れにくく加工をした棒を渡すと、そうとうストレスがあったのか、滅多殴りしていた。
そうしていると箱から音が消え、アウソが誘眠効果の薬草を乾燥させたものに火を着けて燻らせた物を小さく開けた穴から投入する。
半刻ほどそのままにしてから、蓋を開けると、なんと17匹も掛かっていた。
大量過ぎる。
その内の一匹だけを掴まえると、カリアが全力で森へと放り投げた。
これで、よし。
「さて、これでもう森から来なくなる。ルパは頭が良いから、この畑でたくさん恐怖を味わった事を、他の仲間に伝えて近寄らなくなるからね」
「ほんとですか!」
嬉しそうなサプ。
「それにそうとう恨み込めて殴ってたみたいだから、更にかな。獣はそういうのに
それを聞いて更に笑顔になった。
「ほんと、こっちが見てても怖かったもんな、サプさん」
「目が座ってたしな」
「あの気迫があったら良い
「勧誘はしないで下さいね」
それにしても本当にこれで合格できるのかなと不安である。何せ、本当に必要最低限の苦労しかしてないから。
「その箱の中のはどうしますか?」
手元の紙にメモをしていたアーリャが首を傾けながら訊いてきた。
カリアはサプの方を向く。
「サプさんはどうしたいですか?」
「え!えー…と。どうするって…」
「逃がすか、ここで仕留めるか」
サプはしばらく考え、一つ頷く。
「殺してください。出来るだけ、綺麗な状態で」
「分かりました。ライハ、頼むよ」
「了解です」
これも試験内容なのかな。
しかしカリアがオレを呼んだということは、一撃でやった方が良いだろう。
傷を付けずにやるにはあれが一番苦しめずに済むし。
「危ないので、サプさんは少し下がってて下さいね」
「?」
よく分かってなさそうなサプだったが、言われた通りに下がると、オレは指先に魔力を集めた。出来るだけ細く、出来るだけ電圧を高めて。
ゆっくり箱のなかに手を入れ、指先から細い雷を放った。
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