第232話 イヴァンはみた.6

ライハとアウソが天井の隙間から顔を覗かしている。


たしか外はほぼ垂直な壁だったが、あれを登ったのか。従者はそれなりの身体能力が必要なんだな。


アウソがライハに指示を出し、何か長方形の板をあちこちに向けている。時々とても眩い光を放つから、何かの魔法具かもしれない。


そしてそれが終わると、ライハが矢をつがえた。

さっき矢を貸してくれとは言わなかったから自前のか。それにしてもやけにゴツい矢だな。本当に射てるのか?


しかし予想に反して、ライハは矢を軽く射っていく。


計10箇所。


全て壁の凹凸部に正確に突き刺さった。


従者は矢を射てないといけないのか。


イヴァンの中で従者はただ主人にペコペコする存在から、何でも出来る使用人にレベルアップしつつあった。








ライハだけ戻ってきた。


「お待たせしました」


「準備は良い?」


「大丈夫です!」


「よーし!」


よーし!と言いながらレディー・キリコが後ろの部分に縄を付けた槍を持って張り切る。


何をするつもりだと、そう思っていると、なんとキリコ嬢、上にいるアウソに向かって槍をぶん投げた!


「ちょっと危ない!!」


だが、アウソは難なく槍を掴み取り、外側の壁に突き刺した。


「なにが?」


「いえ、何でもありません」


キョトンとしているところをみると、彼女達には問題な行動ではないらしい。


「あーあ、こっちがアレやりたかった」


「カリアさんが投げたら、アウソが取れないじゃないですか」


「加減はするよ」


そして後ろの二人も能天気だ。


振り替えれば、ライハは長方形の板と、木の板を見比べながら何かを描いていた。

覗き込んでみて驚く。

長方形の板にはこの泉だろう精巧な絵が。


「は??なにこれ!?絵?」


「いえ、写真といって、えーと…何て言うか風景をそのまま絵?として記録したものです」


「何いってんのか全く分からん。どういうことだ」


「……一瞬で描き上げた本物そっくりの絵です」


分からん、本当に言っている意味が分からん。


一瞬で描き上げるなんて出来るわけがない。


「まぁ、それをこの木の板に大まかに描いてですね。キリコさん!アウソ!準備は良いですか?」


「おーけー!!」


「いつでも行けるわ!」


ライハに返答する二人だが、よく見ると、キリコ嬢が天井から吊るされた縄を軽く引っ張っていた。


「?」


次の瞬間。


キリコ嬢が飛んだ。

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